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劣化コピーの召喚者ー追放から、積み重ねで最強になるー  作者: クロミ
第一章 召喚と追放

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1

足が痛かった。


 今の瀬名 煌(せな こう)にとって、確かなものはそれだけだった。


 空は、紫と金を溶かし合わせたような奇妙な色をしていた。雲ひとつない。風もない。どこまでも続く荒野だけが、ただ静かに広がっている。


 枯れた草が足首に絡みつき、乾いた土が靴底にまとわりつく。歩くたびに、擦れた足の裏がじくじくと痛んだ。


 どこへ向かっているのか。


 なぜ歩いているのか。


 煌自身にも、はっきりとはわからなかった。


 ただ、立ち止まったところで何かが変わるわけではない。だから歩いていた。


 頭の中は、空っぽだった。


 怒りも、悲しみも、恐怖も、どこか遠くへ置き去りにしてきたようだった。胸の奥にあるのは、薄い霧のような感覚だけ。自分が本当にここにいるのかさえ、少し怪しい。


 煌はふと、自分の手を見下ろした。


 十七年間ずっとそこにあった、見慣れた手。


 特別な力が宿っているわけでもない。何かを成し遂げた手でもない。ただの高校生の、普通の手だった。


 そのとき。


 視界の端で、白い光が弾けた。


 ――タイヤの軋む音。


 ――誰かの叫び声。


 ――青い信号。


 記憶が、断片となって脳裏をかすめる。


 横断歩道。飛び出した小さな影。迫ってくる車。考えるより先に、体が動いていた。


 怖くなかったわけじゃない。


 間に合わないかもしれないと思った。


 それでも、止まれなかった。


 ただ、そうするしかなかった。


 それだけのことだった。


 煌は目を細め、荒野の向こうを見た。


 記憶の続きを追うのをやめた。今はまだ、それでいいと思った。


 遠くに、橙色の灯りが滲んでいる。


 街かもしれない。


 そこまで行けば、少なくとも何かはある。水か、食べ物か、人か。あるいは、また別の絶望か。


 それでも、何もない荒野よりはましだった。


 煌は痛む足を引きずりながら、灯りの方へ歩き続けた。

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