↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生した第二王女はグルメで文明発展を目指す  作者: 月森香苗


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
6/6

救援要請と災害級魔獣

※討伐シーンはあっさりです。

 13歳の私は成人していないけれど、王女なのでいくつかの役目がある。

 国王が決まるまでの間、防衛の魔道具に魔力を込めること。慈善活動として教会と孤児院を巡ること。そして各領地で手に負えない魔獣の討伐である。

 ボボバードを飼育している関係で飛行による移動が可能な私は、割と便利に扱われている。

 王位継承権放棄の際に協力すると言ったからそれは構わない。

 ただね、淡い水色の髪の毛に紫の目という、寒色系美少女を積極的に前線に出す宰相はどうかと思う。

 まあ、狩った魔獣は貰ってるけどね。

 この世界の魔獣は瘴気に満たされている訳ではなく、魔素を過剰に体に蓄積して動物の範囲を越えた状態の獣を言う。

 なので、割と安全に食べることが出来る。

 ちなみに、ゴブリンやオークは魔物なのでこちらは食べない。嫌だよ。人型だもん。


「メルルーナ殿下。申し訳ないのですが、ハーヴェック領に急いで救援に向かっていただきたい」

「……壊滅寸前なの?」

「ルチャブでの赤紙連絡です」

「すぐに行くわ」


 いつもなら呼び出されるのだけど、顔色を悪くした宰相が紅華宮に来た時点で緊急性が高いことが分かった。何せ日が昇る直前の朝一番のことで、起こされた私はそれだけで嫌な予感がしていたのだ。

 ルチャブとは小型魔鳥で、人間が飼い慣らせる中では最速を誇る。

 王都から離れれば離れるほどその地の領主はルチャブを飼っている。

 赤紙は領地壊滅の可能性が高い時にしか使えない特別な紙で、それだけで緊急性の高さがよくわかる。

 頭の中にハーヴェック領を思い浮かべて舌打ちをしたくなった。

 ハーヴェック領は伯爵家が治めているが、その隣には先王の寵愛した側室だった方が暮らしている男爵領がある。

 魔法契約で彼女が亡くなるまで必ず守るというものがあったはずだ。


 侯爵家が隣接していれば大きな騎士団が駆け付けることも出来ただろうけれど、ハーヴェック領の周りは子爵領や男爵領ばかり。軍事力が無さすぎる。騎士団と言ってもそこまでの大きさを持つとは思えない。

 急いで部屋に戻ると、ユナが服を用意していた。

 女性騎士の服を少し豪華にしたもので、王族が身につけるものが貧相であってはならないという考えからだ。


「ドレスをよろしく」


 私のドレスは一人で着るようには出来ていない。

 背中のリボンを緩めたりして脱がしてもらうと、シャツやトラウザーズは自分で履く。靴下も履いたら脹脛を覆うブーツをユナが用意していた。


レノ(ボボバード)は?」

「カインさんが鞍をつけに走りました」

「了解」


 長い髪の毛を一つに括って貰いながら私は亜空間に手を差し込む。

 そこから取り出したのは銀色に光る腕輪で、魔石がぐるりと埋め込まれている。手首に装着する頃には髪の毛も結ばれていた。


「必ずお怪我なくお戻りください」

「うん。ありがとう。行ってくるね」


 私が空を飛んでいく以上、ユナやカインは着いて来れない。泣きそうな顔をするユナに出来るだけ笑顔を浮かべて私はボボバード飼育場へと向かおうと部屋を出た。


「メル」

「お母様」

「行くのね」

「はい。壊滅寸前のようです」

「そう……メル。あなたには力があるわ。その力が人を救うために使われることを母は誇らしく思います」

「これからもそうあり続けます」

「ええ。気を付けてね」

「はい」


 私の力は使い方を間違えれば国を簡単に滅ぼしてしまうほどに強い。神様から与えられた力はそれだけ恐ろしいものだ。

 お母様はそんな私を正しく導こうとしてくれる。だから、それに応えたい。

 恐ろしい化け物のような力を持っている私を愛してくれるお母様だから、私は間違えない。


「殿下、準備は出来ております」

「ありがとう」


 鞍をつけたボボバードのレノは私を見てクルクルと鳴く。大きさ嘴に手を伸ばすと、嬉しそうに顔を近付けてきた。


「レノ。守るべき民の命が今この瞬間も失われようとしているの。お願い、全速力で飛んでくれる?」


 クルルル、そう鳴いたレノを抱き締めると、その背中にある鞍に跨った。宰相とその後ろにカインが立ち、胸に手を当てて頭を下げている。


「ご武運を」

「ええ。さあ、行こう」


 首辺りを軽く叩くと、レノは私の重さなど気にしないように空へと飛んだ。

 風の壁を体の正面に展開させ、出来るだけ上半身を前に倒す。風の抵抗を少しでも和らげてレノの飛行を邪魔しないようにする。


「『加速』『空気抵抗軽減』『スタミナ回復速度上昇』」


 片っ端からバフをレノに掛けていく。無茶をさせるからには出来るだけサポートをするのが私の役割りだ。

 馬車ならば三日以上かかる距離も、空を飛ぶ魔鳥には関係ない。

 冒険者が居てくれるならばいいのだけど。どんな魔獣かも聞いていない。ただ、一つの領を壊滅させるからには単体で大きいか、集団なのか。

 魔物氾濫(スタンピード)なら洒落にもならない。

 単体の場合は建物の被害は大きいけれど生存者はそれなりにある。しかし、集団の場合は被害者数が膨大になる。

 赤紙に文字は基本的に無いことが多い。書く余裕がないからだ、あれば宰相は何かしら言っていたはずだろう。

 転移魔法というのは存在する。やろうと思えば出来る。しかしそれは『一度行ったことがある』という条件が必要だ。

 やはり一度、国内の主要な領都を巡るべきだな。これは帰還後宰相や王妃様と話し合わないと。


 どれだけ飛んだのか。

 レノがクルルと鳴いたので地上を見ると、頭が痛くなった。


「蛇かぁ」


 上から見るだけでわかる大きさと這った形跡のわかる壊された建物。

 蛇は蛇でも大きさが尋常ではない。更に見ただけで特徴がありすぎる。


「胴径が7メートルから8メートル、全長は100から120ってところかな。双頭は厄介だね」


 魔獣は魔法が使える。双頭を持つ魔獣の大半は別々の属性が得意なことが多い。

 進行を止めようと蛇の下で騎士が剣や槍、弓を振るっているけれど効果はない。

 私の倒し方は基本的に派手なパフォーマンスはない。火や水、雷の魔法は使えるけれど、食材を台無しにしたくないと思っている。

 これは、科学が当たり前にあった世界では思いつくかもしれないけれど、科学の無い世界では想像出来ない倒し方。


「レノ、出来るだけ正面に近付いて」


 言葉を理解するレノは悠々と蛇の前に私を連れて行く。

 二つ同時に展開しないと意味がないから大変だけど、まあやれない事はない。

 的が大きければ大きいほど楽だからね。

 申し訳ないけれど今いる付近の建物は諦めてもらおう。本当は移動させた方がいいのだろうけれど、結界を展開しながら浮遊魔法はさすがにキツイ。

 亜空間から杖を取り出すと私はレノの背中に立った。


 やることは簡単。

 結界を二つ蛇の頭の周りに覆います。この結界は気体すら通しません。普通の結界は呼吸の関係で気体は通り抜け出来る。

 だけどこれは出来ない。ガラスイメージだから。

 そして空気を結界内から抜きます。


 魔獣だろうがなんだろうが、死霊系以外は大体呼吸をしている。つまり、真空状態は死と同じなんだよ。

 蛇は初めこそ気付いていなかったけれど、呼吸が出来ないことに慌てて身を捩り始める。けれどもう結界は張られたので死を待つだけだ。

 巨躯を震わせるのを見ながら私は拡声の魔法を使って地上に声を掛けた。


「第二王女メルルーナです。暫くすると死んで頭が地面に落ちるので避難しておいて下さい」


 空を見あげた騎士達は呆然としていたけれど、我に返った者からその場を離れていく。

 蛇が酸欠になり体をぐらぐらと揺らしているからね。そうだね。最後の最後まで気を抜くつもりはない。

 一応鑑定もしてるけれど、まだ生きてるんだよなぁ。体が大きいと時間が掛かるよね。

 それでもやはり、酸素がなければ呼吸をする生物は生きていられない。

 苦しさのあまり体を捻り動かすせいで尾が建物を破壊していくけれど、避難してくれているよね?

 誰だって生きるために足掻く。人間も魔獣も変わらない。生きるためにこの蛇は領都を襲ったのだろう。だから、私は民を守る王族として蛇を殺す。

 この世界は残酷で、強者と弱者に分けられ、私が強者で勝者となり蛇は弱者で敗者となった。ただそれだけ。

 やがて大きな音を立てて地面に頭が落下した双頭の蛇は、建物を壊しながら土煙を立てて地に伏した。

 これが一番綺麗な仕留め方なんだよね。

 鑑定で確認したけれど間違いなく死亡している。うん。蘇りのスキルとか無さそうだね。


 レノが地上に降りてくれたので背中から降りると、避難していた騎士達が私の前に素早くやってきて片膝をついた。


「王女殿下におかれましては、ご助力並びに討伐していただいたこと、深く感謝申し上げます」

「もう少し早く着くことができれば、被害を抑えられたかもしれません。間に合わなくて、ごめんなさい」

「この大蛇の通って来たと思われる経路ではいくつもの村が壊滅しました。領都も後少し遅ければ同じようになっていたはずです。魔法を発動する前に倒せました。それだけで奇跡なのです」


 私に声を掛けられるのだから、団長がなにかなのだろう。

 そう言って貰えただけ良かったけれど、通り道の村はダメだったのか。恐らくは大森林から出てきたのだろう。

 国が頭を悩ませる場所が魔獣が多く生息している大森林で、この中で大形魔獣が育つとも言われている。危険度が高いので定期的に冒険者協会に間引きを依頼しているけれど、絶滅できるはずもない。

 一度あの大森林は調査したいなぁ。噂によるとダンジョンがあるとかなんとか。国内のダンジョンは確認しているけれど、大森林は奥まで行けないからねぇ。

 それはさておき、蛇をどうするか話していると、馬に乗った誰かが物凄い勢いで来た。


「メ、メルルーナ王女殿下にご挨拶申し上げます。この地を治めておりますゲーニッツ・シュベックにございます」

「ハーヴェック伯爵ゲーニッツ卿ですね。この度は災害にも等しい魔獣の襲来をいち早く伝達して下さったこと、感謝するわ」


 緊急の救援を送る以外は対処に当たっていたのか、髪は乱れ顔にも疲労が浮かんでいた。しかしそれが私には「この人は民のために動ける人」と感じられた。

 屋敷でふんぞり返るだけの領主とているだろうが、汚れることも構わず動けることは決して悪くない。

 三十を越えたように見える。妻子がいてもおかしくない年齢だ。


「ゲーニッツ卿。この蛇を移動させてもよろしくて?」

「え、あ、はい。ですが、この大きさをどのようにして」


 通常ならば細切れにするか焼くかしなければならないだろうけれど、そこは私の膨大な魔力が唸りますよ。

 真空にする結界は特殊なので同時展開は出来なかったけれど、それさえなければ簡単なのだ。


「城壁の外の平地に移動させますわ」


 『浮遊』の魔法はその名の通り物を浮かせられるのだけど、対象が大きければ大きいほど消費魔力は大きくなる。

 計測不能な私の魔力量は負担にもならない。


「私はレノ――ボボバードで先に行きますので皆様はゆっくりお越しになってね」


 レノの背中にある鞍に跨ると下半身を固定させ、双頭の蛇に『浮遊』の魔法を掛けた後、魔力の鎖で繋ぐ。これで引っ張っていくのだ。


「レノ、飛んで。これを運ぶからゆっくりね」


 クルルと鳴いたレノが飛び上がる。そして双頭の蛇も持ち上がる。

 空を飛ぶ地獄をもたらした蛇を民はどう思うかは分からないけれど、まあほら。血をここで流すわけにはいかないし。

 レノの協力のおかげで無事に外に運んだ私はじっと巨躯を見る。

 蛇って美味しいのかしらね。

 ササミに似ているとか聞いたことがあるようなないような。でも食べられるなら一部はこちらが貰った上で残りは食料としてハーヴェック領に提供しようと思う。

 復興にも時間はかかるし。国としても対策を練らないといけないわね。


 蒲焼にしたいけれど醤油がないのよね……じゃない。真面目に考えようと思っているのに調理の仕方がカットインしてくるのはやめて。

 みりんと酒をひと煮立ちさせてアルコールを煮切った後、砂糖と醤油を加えてとろみが出るまで煮詰めたタレ。それを切り身に塗ってじっくりと炭火で焼いたら美味しいと思うの。

 いや、醤油がないから無理か。みりんも酒もないわね。

 醤油を自作、と思ったこともあるけれど私は知っている。麹菌が必要なことを。麹菌の入手方法を知らない。

 どこかで作ってないかなー。テンプレなら東方の島国とか出てきそうだけどさ。お酒も私が欲しいのは米から作る日本酒ベースだから。

 求む、醤油、みりん、酒。

 輸入するからどこかの国で作ってないかなー。


 それはさておき、双頭蛇の魔石は持って帰らないといけないので、解体しないといけないんだよね。

 私がうーんと悩んでいる間に馬を用意し終わったのかゲーニッツが騎士団長らしき人と数名を率いてやってきた。

 取り敢えずこの双頭蛇の処理を済ませた後、被害に遭った村などを確認し生存者を見舞う予定も立てる。

 ゲーニッツとも今後の話をしないとならない。

 暫くは城に戻れないんだろうなぁ。

真空による窒息死は書きたかった。生き物ならば呼吸出来なくて死ぬ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。