物語No.82『影➁』
「『王雷』」
稲妻が窓を破りながら校舎内へ飛び込む。
瞬時に二月が全員をしゃがませ、稲妻は四人の頭上を通りすぎる。
「一国……いや、ここで私たちを攻撃する意味が分からん……」
間もなく破壊された窓から黒い影が泳ぐ影魚に乗って侵入する。
「いや、まじか……」
目の前に現れた正体を見て、二月や五蝶は驚く。
「あの魚は影を媒介に出現したことはなんとなく予想がついていた。だが……」
二月は自分の足下を見て、自分の影がなくなっていることに気づく。
「他人の影を奪って魔法をコピーできるってことか。そんな能力を持ってるとか……どんだけ厄介な悪魔だよ」
目の前には一国を模した影があった。
二月はすぐさま一国へ稲妻を放とうとするが、
「まあ単体なら簡単に狩られることくらい分かっているよな」
壁の亀裂をくぐり抜け、影魚の群れが二月らを襲う。
「『王雷』」
影魚の群れへ稲妻を放ちつつ、その軌道を曲げて一国の影へ浴びせる。
だが一国の影も稲妻を放って相殺する。
「威力は一国ほどじゃない。だけど、まあまあの威力はあるみたいだね」
二月は冷静に戦況を観察する。
(竜胆さんと八神さんがどんな魔法を使えるか知らないけど、五蝶の一撃を浴びせるために私の稲妻で目眩ましすれば撃ち取れる)
二月は振り返り、
「五蝶、作戦を伝──」
背後にいたはずの五蝶がいなくなっていることに気づいた。
床を見ると、丁度五蝶の手らしきものが影の中へ吸い込まれていくところだった。
「影に吸い込めるのか!」
二月は咄嗟に発光の魔法を使おうとしたが、背後から放たれた稲妻を浴び、床を二転三転と転がる。
「さっきから何が起こってるんだよ」
一国の影は自身の周囲に影魚を泳がせている。
その上、徐々に影魚が集まり始めている。
「全員影に吸い込まれたか。多分発光すれば戻せるんだろうが、ご丁寧に瓦礫で壁をつくっているか」
影魚は瓦礫を運び、それを積み上げていた。
(今私が使える魔法は、一国の稲妻、周防の反射鏡、夏恋の発光、そして──)
二月は見た魔法は基本コピー可能。
ただし二時間という制限はある。
「私がこの二時間で見た魔法全てを使って、お前を倒してやるよ。一国」
窮地の中、二月の目は青く光る。




