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一人一人に物語を  作者: 総督琉
第一章5『憎しみの黒薔薇』編
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物語No.81『影』

 二月らの頭上を泳ぐ黒いサメ。


「『王雷(エクレシウス)』」


 百がサメへ稲妻を浴びせる。

 しかしサメは軽快な身のこなしで稲妻を回避し、百の懐へ忍び込んだ。

 そのままサメの突進を受けるかと思われた矢先、


「『反射鏡(ルミラー)』」


 百とサメの間に円形の鏡が出現し、サメの突進は鏡へ防がれ、その反動のままに吹き飛ばされた。


「貫け。

『嵐槍(ランス)』」


 五蝶が風を纏った槍をサメへ投擲する。

 サメは槍が当たる寸前で影に飛び込み、姿をくらませた。


「影に身を潜めることもできるんだ……」


 夏目が脅える。


「みんな、ちょっと眩しいけど我慢してね」


 夏恋がそう言い、両手を花の形にして掲げる。


「『発光(ルミナス)』」


 夏恋の手からまばゆい光が放たれ、影が失われた部屋にサメが飛び出る。


「へえ、影がなきゃそりゃ潜れないか」


 電気を纏った二月の拳がサメのすぐそばに迫っていた。

 サメの頭部へ電気の拳が炸裂し、サメの肉体は消滅した。


「厄介な能力は持っていたけど、光に弱いのなら意外と対処は簡単だね」


 二月は消えていくサメを見ながら呟く。


「既に私は夏恋の魔法をコピーした。だから二手に分かれる際は私と夏恋が別々になって、光の魔法で敵を弱体化させる。それで良いね」


「だな。それが最も妥当な策だ」


 二月、五蝶、八神、竜胆

 一国、四葉、周防、夏目

 という2グループに分かれた。


 それぞれ学校内を散策しつつ、体育館を目指す。

 しかし彼女らは気づいていなかった。

 既に自分達の影が喰われていることを。


 一国グループの最後尾を歩いていた夏目。

 彼女の視線は三人の足下へ向けられていた。


「夏目ちゃん、どうしたの?」


 周防が夏目の挙動に気づき、問いかける。


「ねえ、なんか皆さ──」


 夏目が皆の足下を見ながら何かを言い欠けた時、四人の行く手に黒い影が道を塞ぐ。


「……は!?」


 全身は黒く染まり、まるで影のようだが、人の姿をしている。

 その容姿はまるで……


「『開国』」


 靄がかかったような声で影が言った。


「嘘だろ……!?」


 影のそばから感じる魔力反応。


「『王雷(エクレシウス)』」


 突如現れた黒い影は、自身の背後から稲妻を放った。

 全員が突然のことに反応しきれず、稲妻が廊下を飛び交う。

 奇跡的に全員が稲妻を回避したが、瓦礫が廊下に転がり落ちていた。


「ねえ、あれって……」


 夏恋が驚きに満ちた目で影を見る。


「ああ、まるであの見た目は……」


 影の目はじっと百らを凝視する。


「あれは……二月……」


 百たちの前に現れた影。

 その容姿は二月銀そっくりだった。

 二月そっくりの影は一国百の魔法を使った。


「既に王家魔法はコピー済み。そんな二月のコピーってことか。どんだけ万能な影だよ」


 百は冷や汗をかき、影と対面する。


「全員、魔法の使用は極力避けろ。二月は見た魔法は全てコピーできる。四対一なんだ。魔力操作だけで影を倒すぞ」


 二月銀の影VS一国百、四葉夏恋、周防雛守、夏目揺。


 魔法使いの戦いが幕を開ける。

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