物語No.81『影』
二月らの頭上を泳ぐ黒いサメ。
「『王雷』」
百がサメへ稲妻を浴びせる。
しかしサメは軽快な身のこなしで稲妻を回避し、百の懐へ忍び込んだ。
そのままサメの突進を受けるかと思われた矢先、
「『反射鏡』」
百とサメの間に円形の鏡が出現し、サメの突進は鏡へ防がれ、その反動のままに吹き飛ばされた。
「貫け。
『嵐槍』」
五蝶が風を纏った槍をサメへ投擲する。
サメは槍が当たる寸前で影に飛び込み、姿をくらませた。
「影に身を潜めることもできるんだ……」
夏目が脅える。
「みんな、ちょっと眩しいけど我慢してね」
夏恋がそう言い、両手を花の形にして掲げる。
「『発光』」
夏恋の手からまばゆい光が放たれ、影が失われた部屋にサメが飛び出る。
「へえ、影がなきゃそりゃ潜れないか」
電気を纏った二月の拳がサメのすぐそばに迫っていた。
サメの頭部へ電気の拳が炸裂し、サメの肉体は消滅した。
「厄介な能力は持っていたけど、光に弱いのなら意外と対処は簡単だね」
二月は消えていくサメを見ながら呟く。
「既に私は夏恋の魔法をコピーした。だから二手に分かれる際は私と夏恋が別々になって、光の魔法で敵を弱体化させる。それで良いね」
「だな。それが最も妥当な策だ」
二月、五蝶、八神、竜胆
一国、四葉、周防、夏目
という2グループに分かれた。
それぞれ学校内を散策しつつ、体育館を目指す。
しかし彼女らは気づいていなかった。
既に自分達の影が喰われていることを。
一国グループの最後尾を歩いていた夏目。
彼女の視線は三人の足下へ向けられていた。
「夏目ちゃん、どうしたの?」
周防が夏目の挙動に気づき、問いかける。
「ねえ、なんか皆さ──」
夏目が皆の足下を見ながら何かを言い欠けた時、四人の行く手に黒い影が道を塞ぐ。
「……は!?」
全身は黒く染まり、まるで影のようだが、人の姿をしている。
その容姿はまるで……
「『開国』」
靄がかかったような声で影が言った。
「嘘だろ……!?」
影のそばから感じる魔力反応。
「『王雷』」
突如現れた黒い影は、自身の背後から稲妻を放った。
全員が突然のことに反応しきれず、稲妻が廊下を飛び交う。
奇跡的に全員が稲妻を回避したが、瓦礫が廊下に転がり落ちていた。
「ねえ、あれって……」
夏恋が驚きに満ちた目で影を見る。
「ああ、まるであの見た目は……」
影の目はじっと百らを凝視する。
「あれは……二月……」
百たちの前に現れた影。
その容姿は二月銀そっくりだった。
二月そっくりの影は一国百の魔法を使った。
「既に王家魔法はコピー済み。そんな二月のコピーってことか。どんだけ万能な影だよ」
百は冷や汗をかき、影と対面する。
「全員、魔法の使用は極力避けろ。二月は見た魔法は全てコピーできる。四対一なんだ。魔力操作だけで影を倒すぞ」
二月銀の影VS一国百、四葉夏恋、周防雛守、夏目揺。
魔法使いの戦いが幕を開ける。




