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一人一人に物語を  作者: 総督琉
第一章4『魔法十家と黒い薔薇』編
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物語No.69『奈落魔宵救出作戦/弐』

 薄暗い工場の中にネクロは潜む。

 様々な機械が置かれた工場には、槍が幾つもの風穴をつくっている。


「そろそろ出てきたらどうだ」


 五蝶は槍を構えながらそう叫ぶ。

 だが一向にネクロは出てこない。


 工場は三階建ての高さがあり、広さは百畳は余裕である。

 工場の二階三階に当たる場には階段があり、吹き抜けになっている。

 五蝶は身を潜めているであろう一階に槍を放ち続けていた。


(愛六と夏恋は既に迎撃の体勢ができている。あとは俺が誘き寄せるだけだが……)


 五蝶は焦っていた。


 建物を破壊することで視界が広くなるのは良い。だがこのまま槍を投げ続ければ魔力がどんどん減っていく。


(仕方ない。大技で決める)


 五蝶は今まで以上に槍に魔力を込め、暴風を風に纏わせた。

 その魔力の大きさにネクロは気づいた。


(ようやく来たか)


 ネクロは闇の中に笑みを置く。


「風よ。

 疾走する風よ。

 この一撃に思いを乗せて。

 今こそ敵を撃て。

『風花』」


 爆発的な風を纏い、槍が放たれる。

 五蝶が槍を放った次の瞬間、槍の真横を通ったネクロが飛び上がり、五蝶に迫る。


 ネクロは風を纏っていた。


(お前ら、どうせ一国からの薄い情報しか持っていないんだろ。だったら俺が洗脳魔法しか使えないと思い込んでいる。だが違うんだな。魔法家には横の繋がりも重要。そもそも戦闘系じゃない魔法家は魔法十家には選ばれにくい。だからこそ、歴代魔法十家はそういった魔法家とも関わりを持ち、その家の魔法を伝授してもらうことで友好関係を持った)


「残念ながら、お前らの負けだ」


 ホスチョウ家の天衣魔法(コロモホスチョウ)

 それは自分が受けた魔法を纏うことができる受け身の魔法。


 ネクロは五蝶の風圧を纏い、風のままに空中を飛行し、五蝶のすぐそばまで接近する。


 五蝶は槍を投てきしたため、手もとに槍はなく、無防備だった。

 そこをネクロは狙っていた。

 完全な隙。

 間もなくネクロの手が届く。


 ──が、突如ネクロの周囲に小さな水玉が幾つも生成される。


「な……っ!?」


 直後、水玉は勢いよく膨れ上がり、ネクロを四方八方から水圧が襲う。

 咄嗟に全身を魔力で覆ったが、ネクロは体勢を崩し、五蝶に触れる前に落下する。

 落下した五蝶へ、頭を包み込めるほどの水玉が落下する。


 即座に風に乗って撤退し、物陰に隠れるネクロ。


(こいつら、この暗い中で俺の位置を正確に捉えやがった。魔力感知……いや、これはヒーリング家の……)


 思考する間にも、槍は五蝶の手もとに戻っていた。


「貫け。

嵐槍(ランス)』」


 風を纏った槍が短い詠唱とともに放たれる。


(急いだな。詠唱が短い分威力はお粗末)


 槍はネクロの居た場所を破壊するが、ネクロは全身を魔力で覆い、浅い傷で済ませた。


「ちっ。仕留め損なった」


「この風は貰うぜ」


 ネクロは口角を上げ、槍の風を全身に纏う。


「スピード勝負だ。ノロマども」


 ネクロは魔力感知により、常時三人の位置を感知していた。

 ネクロの魔力感知は一定範囲内の魔力を感じ取る。

 また、人によって魔力には特有の振動があり、それを感知して人を識別していた。

 つまり一定範囲内にいればネクロには感知される。


「さあ、まずは邪魔なヒーリング家からだ」


 ネクロは魔力感知で、夏恋が常時三階に当たる階段にいたことは把握している。

 風を纏って飛び上がり、夏恋がいる場所へ向かう。


「やっぱり居場所がバレてる。魔力感知って言うんだっけ」


 夏恋はすぐそばにネクロが迫っても一切動じない。

 ネクロは夏恋の戦意喪失と受け取り、すぐさま彼女の頭へ手を伸ばす。


 その時の夏恋は、薄暗い中はっきりとは見えなかったが、笑っているように見えた。


「終わりだぜ」


「残念だけど、恋する乙女は最強なんだぞ♡」


 夏恋の背後、そこから手が伸びる。


(三本腕……!? いや、違う!)


 ネクロは魔力で敵を捉える。

 目で見ているわけではない。

 だからこそ、夏恋の背後にいる愛六に気付かなかった。


(おかしい。もう一つ魔力感知に引っ掛かっているのは一体……)


 愛六は水玉を常時工場内に浮かせており、その魔力をネクロは愛六と誤認していた。


「良かったよ。一国が魔力感知について教えてくれなかったら、欺けなかった」


 愛六は右手をネクロに伸ばす。

 愛六の手はネクロに触れる。


(銀ちゃんが全身に流れる魔力を感じさせてくれたから、私は一段階強くなれた。穂琉三が強くなっていくように、私も一段階進化しているんだ)


 愛六は自身の全身を流れる魔力を感じた。

 だからこそ、大まかに全身を流れる水のイメージも湧いた。

 これはそんな彼女の編み出した技。


「『青薔薇』」


 ネクロの全身の水が外部へ放出される。


(ぐっ……これは……)


 ネクロから放出された水は、ネクロの背中で薔薇を描く。


「これが私の新境地」


 ネクロの全身を纏う風は霧散し、喉の渇きに苦しみながらネクロは落下した。


「この勝負、私たちの勝ちだ」

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