物語No.68『奈落魔宵救出作戦/壱』
黒薔薇山廃墟地帯にて、魔法使いが激突する。
廃墟にて奈落を拘束していた十星騎士団所属の二人の男。
そこへ魔法による強襲を受け、奈落魔宵と穂琉三は再会した。
闇夜にて崩落する廃墟。
少年少女は離脱を試みようとしていた。
だが──
「ったく、まさかガキ共が徒党を組んで反乱を企てるとはな。今時のガキは力の差も理解できねえのか」
金髪の男は激昂する。
「『開国』」
金髪の男──シュヴァル・アルスはアルス家の生まれであり、そのため王家魔法を継承している。
シュヴァルの背後には電気が魔法陣を描いている。
「『王雷』」
シュヴァルの背後から稲妻が逆上がり、建物の上層を次々と破壊する。
「穂琉三、乗って」
上層にいた穂琉三と魔宵は、召喚した蜂に乗ってその場を離脱する。
間一髪でシュヴァルの攻撃を逃れる。
だがシュヴァルは逃げた二人を感知していた。
魔法を使う者は必然的に魔力を持つ。
シュヴァルはその魔力を感知できる。
「奇襲でもするつもりか。百」
当然、瓦礫に身を潜めていた一国百の存在も感知していた。
一国は隠れるのは無駄だと諦め、シュヴァルの前に姿を晒す。
「さすがですね。シュヴァルさん」
「どういうつもりだ。お前ごときじゃ俺に勝てないことは理解しているだろ」
「そうだね。でもさ、いつまでも逆らわないってのは嫌なんだよ」
「あ?」
「あの日、ボクはお姉ちゃんを失った。もしあの時ボクに力があれば、お姉ちゃんを救えた」
「救えるはずないだろ。相手は我々十星騎士団。歴代魔法十家の精鋭によって構成された組織であると理解しているのか」
「知っているよ。その上で、今のボクなら救えたと思ってる」
「本気か」
「いや、少し違ったかな。今のボクじゃなく、今のボクらなら──」
シュヴァルの背後から稲妻が降る。
しかし魔力感知は魔法の動きすらも感知する。
シュヴァルは背後に稲妻を放出し、相手の稲妻を押し返す威力を見せた。
「奇襲は無駄だぞ。アイズ家の女」
「だろうね」
シュヴァルの背後には二月が立っている。
彼女の瞳は金色に輝き、髪も金髪になっている。
「アイズ家の中でも稀有な体質。魔力が透き通るあまり、コピーした魔力によって髪色や目の色が変わる特殊な体質。確か、完璧模倣者と呼ばれていたか」
「らしいね」
「だが王家魔法など、血肉が鍵となる魔法の場合、完璧な模倣は不可能なんだろ。実際、お前の雷にそれほどの威力はない」
「どうかな」
「どうも何も、理論的に王家魔法の模倣は不可能だ」
「理論や理屈じゃないんだよ。私たちは思いでお前を倒すんだよ」
「思いに何の力もない」
「じゃあ証明してやる。思いの強さが、全てを覆すってことを」
シュヴァルVS一国&二月の戦いが始まろうとしている中、もう一方の人物も戦闘を始めようとしていた。
青髪の男は暴風を纏う槍を受けた後、即座に近くの建物に身を潜めていた。
「俺の槍を受けても無傷か。聞いていた通り、十星騎士団ってのは魔力操作にも卓越してるんだな」
青髪の男は槍を受けた腹部に魔力を集中させ、致命傷を防いでいた。
彼は今、電気も繋がらず、多くの工場廃棄物がある建物に身を潜め、あることを狙っていた。
当然その狙いに槍の持ち主、五蝶嵐槍も気付いている。
「あなたの魔法は洗脳魔法。だが相手に接触しなければ発動しない。だからこそ、近づく機会をうかがっているんでしょ」
青髪の男──ネクロ・ファントムペインはファントムペイン家の出身であり、ファントムペイン家は洗脳魔法を専門とする。
「でもそんなことはさせない。だって──」
支援魔法の使い手、夏恋は五蝶と愛六、そして自分に暗視魔法を付与した。
それによって暗い場所でも視界ははっきりとしている。
だがこの場で魔力感知を行えるのはネクロだけ。
暗い場所で見えなくとも、魔力感知で居場所が分かる。
五蝶は槍を投てきの姿勢で構える。
槍は風を纏う。
「貫け。
万走の槍。
『伊吹虎の尾』」
投げられた槍は鉄の機械をも貫通し、建物に風穴を空けた。
(隠れているだけじゃいつか攻撃は当たる。となれば攻めなきゃいけないわけだけど……、誰から崩すか)
ネクロは闇の中、策を巡らす。




