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一人一人に物語を  作者: 総督琉
第一章4『魔法十家と黒い薔薇』編
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物語No.54『魔力の使い方』

 五月十五日の夜がやって来た。

 花園での戦闘で疲労し、全身に負傷をしていたが、支援魔法の少女によって傷は治された。

 五蝶もまた、その少女によって傷を癒された。


 ようやく完全復帰での戦いが始まる。

 場所は今まで通り異境学園。

 そこに穂琉三、奈落、一国が集まっていた。


「でかい学園だな。この学園に三つも扉が湧くのか」


 一国が苛立ちながらも呟く。


「大丈夫なのだ。私がいるのだ」


 不機嫌な一国の前に、陽気な稲荷が現れた。


「なんだこいつ」


「なんだこいつとはなんだこいつ! 私はこの学園での戦闘を手助けする優秀な助っ人なのだ。扉の場所からモンスターの特徴まで、いろんなことを網羅しているのだ」


「そうかよ。だったら扉の場所だけ教えろ。後はそこの二人に助っ人でもしてやれ」


「ちょっと待って。単独行動するってこと?」


 穂琉三は臆しながらも問いかける。


「当たり前だろ。ボクはボクの好きなようにやる。それが王様として当然の権利だ」


 一国の圧に穂琉三は屈する。

 間もなく十二時になり、鐘が鳴り響く。

 稲荷は扉の出現場所を感知し、三つの方向を指差した。


「高等部区画に二つ、初等部区画に一つなのだ」


「じゃあボクは高等部区画に行く。お前らは初等部区画を片付けろ」


 そう言うと、一国は振り返らずに高等部区画に走った。


「仕方ない。僕たちは初等部区画に行こう」


「分かった」


「ってか随分と自己中な奴と組むことになっちまったんだな」


 ここでようやくヒルコが赤い光球として姿を見せた。


「もう、今までどこにいたの。来ないのかと思っちゃったよ」


「良いじゃねえか。好き嫌いは誰にだってあるだろ」


 穂琉三はヒルコ、奈落、稲荷とともに初等部区画へ向かう。


「そういえば魔力の感覚、掴めるようになった?」


 穂琉三は花園で奈落から教わったことを思い出していた。


「全身を魔力が流れるイメージをしろってやつだね。イメージをしただけで全身を流れる魔力を鮮明に感じれるようになったんだ」


 奈落は穂琉三に魔力を操るための方法を教えた。

 まず自分の全身を魔力が覆っているイメージをする。次にそのイメージを一部だけに適用させ、手だけに魔力を覆っているイメージ、足だけに魔力を覆っているイメージをした。

 その後、肉体を魔力が川のように動くイメージをした。脳から首を通り、右腕に行き、また戻って心臓に行き、次に左腕に行きまた心臓に戻り、次は下半身に魔力が移動するイメージをした。

 これを何時間も繰り返し、穂琉三は今まで以上に自分の体を流れる魔力を掴んでいた。


「イメージをするだけで魔力ってのはより鮮明に理解できる」


「でも魔力を操ってどうするの?」


「使い道は無限にあるけど──」


 初等部区画へ走っていた道中、建物の壁が壊れ、牛のようなモンスターの突進を受けた奈落。

 そのまま奈落は反対の壁に吹き飛んだ。

 すぐさまヒルコが穂琉三の拳に火を纏わせる。穂琉三がモンスターへ突撃しようとするが、


「魔力ってのはエネルギー。魔力を肉体に纏わせることで、肉体の強度を上げることができる」


 吹き飛ばされたはずの奈落だったが、肉体に傷はなかった。


「魔力に長く触れている者ほど、当然それによって身体機能は向上する」


 穂琉三は驚き、足を止めた。


「でも魔力ってのは防御以外にも使える。例えば拳に魔力を集中させることで、より高エネルギーの攻撃へと昇華できる」


 モンスターは穂琉三へ走っていた。穂琉三はかわしきれないと判断したが、


「『魔弾(まだん)』」


 奈落は指先に魔力を集中させ、その魔力を弾丸のように解き放った。

 牛の足を魔力の弾丸が貫き、その場で膝をつく。


 奈落はモンスターへ飛び込み、魔力を集中させた拳を振るった。


「『魔拳(まけん)』」


 モンスターの顔は歪み、地面に叩きつけられた。

 奈落の一撃の威力に、穂琉三はただただ驚愕した。


「これが魔力の使い方。でもこれは無数にある魔力の使い方の一つに過ぎない。もし魔力の使い方を極めれば、どんなことだってできるかもしれない。だってこの魔力を利用したのが、魔法なんだから」

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