物語No.55『約束』
奈落の魔力の使い方に、穂琉三はただただ驚愕した。
「僕にも……できるのかな」
奈落は圧倒的な威力の一撃をモンスターに浴びせた。
その一撃は火を纏った穂琉三の一撃を凌駕する。
「私は黒廻家と契約した時から、魔力の使い方を教わっていた。でも花園での神妹さんと日向くんの様子だと、いろんなことを教わっていなかったんでしょ。だったらやっていなかっただけで、やれないわけじゃないと思うよ。私は、日向くんならやればできるって信じてる」
「うん。頑張るよ」
気づけば奈落と日向は互いの信頼を深めていた。
お互いにそのことを感じつつも、少し恥ずかしさがあった。
「お前ら、イチャついている間にも扉が見えたぞ」
ヒルコの声に二人が視点を上げる。
初等部区画の校舎の屋上に扉があった。
「屋上か。ならあの悪魔かな」
奈落はそう呟くと、両手を合わせて握り締め、祈るようなポーズをとった。
「お願い。『蜂の悪魔』」
奈落の背後から五メートルサイズの蜂が出現した。
蜂は奈落と穂琉三を掴み、そのまま屋上へと飛んだ。
「うっ!?」
不意の出来事に穂琉三は驚く。
「大丈夫だよ。この子は私が召喚した悪魔だから、私の指示通りに動いてくれる」
奈落は優しく蜂を撫でる。
穂琉三は怖くて振り向けなかった。
「もうすぐ屋上だよ」
屋上には扉があったが、その周囲を十体ほどのモンスターが囲んでいた。
「魔弾で倒すのも良いけど、せっかくだしさっき見せた技を使ってみよっか」
屋上につくと、蜂は奈落と穂琉三を離す。
奈落が抱きつくと、蜂は消えた。
そうしている間にも無数のモンスターが穂琉三と奈落に向けて集まっている。
「ヒルコさん、日向くんに火を纏わせるのは一旦なしでお願いします」
「分かった」
「じゃあ日向くん、魔拳をやってみよっか」
奈落は穂琉三の後ろに立ち、静観の構えを見せる。
穂琉三は拳に魔力が集まっている感覚に浸り、それにともない魔力が拳に集まる。
「うん、いいね」
奈落は穂琉三が拳に纏った魔力を見ている。
穂琉三には見えていないが、奈落には見えている。
モンスターが穂琉三に迫る。
「『魔拳』」
魔力を纏った拳が力強くモンスターの胴体を殴る。
モンスターは軽く吹き飛び、転がった。
「これが……っ!」
今までの殴りとは威力が違う。
奈落の魔拳ほどではないにしても、今までの自分の一撃に比べ遥かに強い一撃だった。
穂琉三は自分の拳を眺めた。
「いける。これなら」
穂琉三は次々とモンスターへ魔拳を浴びせた。
モンスターはまるで車にぶつかったように吹き飛ばされる。
気づけば屋上にいたモンスターは全て倒れていた。
「スゴいね。穂琉三」
「ああ。まさか魔力の使い方を知るだけで、こんなにも……」
その成長の度合いは目に見えて分かるほどだった。
一ヶ月以上そばにいたヒルコも成長を感じ取っていた。
「じゃあ鍵を閉めよっか」
ヒルコは鍵になり、穂琉三の手もとに落ちた。
そして穂琉三が鍵穴に鍵を差し込み、
「──接続オフ。」
扉は鍵穴を中心に渦を巻いて消失した。
やがて学園を覆っていた結界は消え、零時を刻み始める。
「一国くんも終えたみたいだね」
「もう終えてたんだな。一人にしては結構早いな」
「さすがは王家魔法だね。でも本当は協力プレイがしたいよね」
「うん。それが神妹の指示でもあるし……」
モンスターは倒したが、課題は残っている。
その後、学園中を探したが既に一国の姿はなかった。
「もう帰っちゃったんだね」
深夜の学園で、日向と奈落は吐息を漏らす。
「ねえ日向くん、明日の放課後、時間ある?」
「うん。あるよ」
「じゃあその時に魔力の使い方をもっと教えてあげる」
「いいの!」
「もちろんだよ。一緒に強くなろうね」
日向と奈落は小指を重ね合わせた。
「「約束だよ」」




