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一人一人に物語を  作者: 総督琉
第一章4『魔法十家と黒い薔薇』編
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物語No.55『約束』

 奈落の魔力の使い方に、穂琉三はただただ驚愕した。


「僕にも……できるのかな」


 奈落は圧倒的な威力の一撃をモンスターに浴びせた。

 その一撃は火を纏った穂琉三の一撃を凌駕する。


「私は黒廻家と契約した時から、魔力の使い方を教わっていた。でも花園での神妹さんと日向くんの様子だと、いろんなことを教わっていなかったんでしょ。だったらやっていなかっただけで、やれないわけじゃないと思うよ。私は、日向くんならやればできるって信じてる」


「うん。頑張るよ」


 気づけば奈落と日向は互いの信頼を深めていた。

 お互いにそのことを感じつつも、少し恥ずかしさがあった。


「お前ら、イチャついている間にも扉が見えたぞ」


 ヒルコの声に二人が視点を上げる。

 初等部区画の校舎の屋上に扉があった。


「屋上か。ならあの悪魔かな」


 奈落はそう呟くと、両手を合わせて握り締め、祈るようなポーズをとった。


「お願い。『蜂の悪魔(ビー・デビル)』」


 奈落の背後から五メートルサイズの蜂が出現した。

 蜂は奈落と穂琉三を掴み、そのまま屋上へと飛んだ。


「うっ!?」


 不意の出来事に穂琉三は驚く。


「大丈夫だよ。この子は私が召喚した悪魔だから、私の指示通りに動いてくれる」


 奈落は優しく蜂を撫でる。

 穂琉三は怖くて振り向けなかった。


「もうすぐ屋上だよ」


 屋上には扉があったが、その周囲を十体ほどのモンスターが囲んでいた。


「魔弾で倒すのも良いけど、せっかくだしさっき見せた技を使ってみよっか」


 屋上につくと、蜂は奈落と穂琉三を離す。

 奈落が抱きつくと、蜂は消えた。

 そうしている間にも無数のモンスターが穂琉三と奈落に向けて集まっている。


「ヒルコさん、日向くんに火を纏わせるのは一旦なしでお願いします」


「分かった」


「じゃあ日向くん、魔拳をやってみよっか」


 奈落は穂琉三の後ろに立ち、静観の構えを見せる。

 穂琉三は拳に魔力が集まっている感覚に浸り、それにともない魔力が拳に集まる。


「うん、いいね」


 奈落は穂琉三が拳に纏った魔力を見ている。

 穂琉三には見えていないが、奈落には見えている。


 モンスターが穂琉三に迫る。


「『魔拳』」


 魔力を纏った拳が力強くモンスターの胴体を殴る。

 モンスターは軽く吹き飛び、転がった。


「これが……っ!」


 今までの殴りとは威力が違う。

 奈落の魔拳ほどではないにしても、今までの自分の一撃に比べ遥かに強い一撃だった。


 穂琉三は自分の拳を眺めた。


「いける。これなら」


 穂琉三は次々とモンスターへ魔拳を浴びせた。

 モンスターはまるで車にぶつかったように吹き飛ばされる。

 気づけば屋上にいたモンスターは全て倒れていた。


「スゴいね。穂琉三」


「ああ。まさか魔力の使い方を知るだけで、こんなにも……」


 その成長の度合いは目に見えて分かるほどだった。

 一ヶ月以上そばにいたヒルコも成長を感じ取っていた。


「じゃあ鍵を閉めよっか」


 ヒルコは鍵になり、穂琉三の手もとに落ちた。

 そして穂琉三が鍵穴に鍵を差し込み、


「──接続(コネクト)オフ。」


 扉は鍵穴を中心に渦を巻いて消失した。


 やがて学園を覆っていた結界は消え、零時を刻み始める。


「一国くんも終えたみたいだね」


「もう終えてたんだな。一人にしては結構早いな」


「さすがは王家魔法だね。でも本当は協力プレイがしたいよね」


「うん。それが神妹の指示でもあるし……」


 モンスターは倒したが、課題は残っている。

 その後、学園中を探したが既に一国の姿はなかった。


「もう帰っちゃったんだね」


 深夜の学園で、日向と奈落は吐息を漏らす。


「ねえ日向くん、明日の放課後、時間ある?」


「うん。あるよ」


「じゃあその時に魔力の使い方をもっと教えてあげる」


「いいの!」


「もちろんだよ。一緒に強くなろうね」


 日向と奈落は小指を重ね合わせた。


「「約束だよ」」

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