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案件79「幽幻貴族の放蕩1」

 やや引き締まった体躯を、4つの人形の間に置いている男性。


 高貴そうな雰囲気こそあっても、砂埃やらで汚れている上にガラクタの影から顔を出す姿はどこかみっともない。


 とりあえず、心証が最も悪い人物なので今の今まで存在を忘れていた。そもそも、こんな戦場に乗り込んできているとは思っていなかった。


「これは、これは、国王様」


 俺は呆れたように言った。


「ふふふ、元勇者よ。ここで逆賊としての人生も終わりであるぞ」


 ほう、言ってくれる。勝手に襲いかかって来ておいて人を反逆者呼ばわりとは、本当に腐った国王様だぜ。


 若干キャラが変わってる? 気にするな。


 それにしても、ずいぶんな自信だ。


 この人型をしたお人形さん達がガーデンロード王国の隠し玉か?


 見た感じ、各所は角ばっているもののロボットとでも呼ぶような蒸気機関を積んだ装置である。サムズアップしながら溶鉱炉に沈んでいく近未来のヒト型殺戮兵器の中身だけのアレ、って言えばなんとなくわかって貰えるかな。


 軽量化のためかボディーの板金を除けばスカスカなので、そんなに苦労せず倒せると思った。


 一番前に佇むロボットに向かって肉迫し、挨拶程度の蹴りをお見舞いしてやる。が、意外に機敏な動きで腕を動かし受け止めてくる。ついでに足を掴まれてしまった。


「うおっ?」


 体がフワッと浮いたと思ったら、振り回されているのに気づいた。


 “風呼びのポンチョ”がめくれないようには死守したぜ。


 しかし、どうしてくれるんだろうね、この状況!?


 なにせ勢いよく振り回されて、どこへ飛ばされるかもわかったもんじゃない。壁に向かって投げてくれるならマシだが、地面にでも叩きつけられたら辛い。


「えっ、ま!?」


 マジか。そう言い切るよりも早く、二体目のロボットが俺に向かって拳を向けてきた。


 振り回す勢いプラス振り抜く勢いイコール死!


 あっさりと負けを認めそうになった瞬間、俺の体は壁に向かって飛んでいた。少し遅れて、ドンッドンッと言う鈍い音が響く。


 ロボット二体の腕が破壊された音が、俺に漸く追いついてきたのだ。


 しかし、そんな速度で壁に叩きつけられれば全身の骨が粉々になる。人間には200以上の骨があるんだ、全身骨折ぐらいなんだ。


 とか言いたいけど、そんな覚悟俺にはねぇ!


「っと!」


 そんな声と同時に軽い衝撃を受けた。


 気がつくと、ダンに逆さまで抱きかかえられるという状態だった。単衣(チュニック)の鉄壁の裾はこんな状態になってもめくれない! それ、ポンチョの方にもあって欲しかったんですけど?


「た、助かったわ……。リーサもね」


 眼の前に男の股間があるって状況は酷いが、とりあえずお礼は言っておいた。十数発の“黒陽のパラソル”でロボットの腕を破壊してくれたリーサにも、だ。


 それにしても、なんなんだあの鉄屑野郎は?


「く、くそっ! だが、『鉄気兵』はまだ戦える、二体は万全であるぞ」


 国王は、ダンジョンマスター二人と勇者ちゃんを相手にまだ戦うつもりのようだ。ブロスはリーサに意識を刈り取られているし、他に戦えそうな仲間はいない。


「もう直、軍勢が大挙として押し寄せる! もう終わりであるぞ!」


 まさかの、まだ兵士達が無事にダンジョン内にいると思っているようだった。


 ダンジョン各所に仕掛けたセキュリティは、中腹までは解除されているとしてもまだまだ残っている。ほとんどは乗り越えられず、魔族達に見つかって蹂躙されていることだろう。


「えっと、それは無理だと思うわよ? ダンジョンの入り口もふさがっちゃったし……」


「何、であるか? 馬鹿を言うでない」


 真実を伝えてやると、疑った様子で言い返してきた。コソコソと“スクロール”を取り出してやがる。


 たぶん『ターン・ホーム』だ。


「『ターン・ホーム』!」


 “マジック・チャーム”で“魔エネルギー”を通して、閃光と同時にダンジョンの外へと逃げ出した。


 とりあえず、こちらがすべきは四体の鉄気兵とやらを倒すことだ。見た目の割に機動力は高く、あまつさえ足からの蒸気噴射までやりだす始末。


 ロマンはここにあったんだ!


「王様が操作していたわけじゃないのね。しかし、壊すのがもったいないわね」


「手のひら返し早いな、おい。まぁ、あの腕無しは私に任せてくれ」


 戦わなければならないことに残念さを感じたが、リーサの怒りが手加減を許してくれそうになかった。


 勇者を傷つけそうになった罪を、どうのこうのとぶつぶつ呟いてトリップを始めている。腕一本を破壊するのに“黒陽のパラソル”を十本以上も使う相手だが、二体くらい相手にできるだろうか?


 正直、蹴り技だけで戦ったら勝てる見込みはないとわかっている。たった一合のぶつかり合いで、相手の実力はほぼ把握できた。


「重量、速度、火力、どれをとってもダンジョンマスターに格闘戦挑んでるのと同じ……」

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