表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/81

案件52「別に強くない1」

 ガラムさんからの報告を聞いて、俺達は急ぎガーデンロードへと向かった。


 入り口は以前と同じ、下層民側の壁である。


 アサガオに変装させてもらっていなければ、関所の時点で足止めを食らっていたかもしれない。


「なんとか入れたわね……」


「そうですね。見張りも、かなりピリピリしている様子ですし」


 刺すような視線は、勇者だと疑われているからではないと信じたい。


 目立たないよう人混みに紛れて進み、目的地である勇者ちゃんの家にたどり着く。


 当然、その間にも戦争云々の情報を集めることも忘れない。


「そろそろ、こっちくるのやめようかね」


「姿は見えないけど、スノードロップの奴らが囲んでるって話だぜ」


「いつ攻めて来るのか、怖くて仕方がないな。ガーデンロードはどうするって?」


「さてね。いろいろと、腕の立つ探索者達を呼び集めてるって話は聞くけど」


「噂の勇者とやらはどうなんだい? 魔王にこそ負けたって話だけど、実力は確かなんだろ?」


「王国も血眼になって探してるみたいだな。もし見つかったら、百人力なんだけどな」


「おい、変な女がニヤニヤこっちを見てるから行こうぜ……」


 探索者の男達がそんなことを話しているのを聞くことができた。


 あの国王様が慌てふためいてると思うと、少し愉快だった。もし反省して頭を下げに来るのなら、手伝ってやらなくもない。


 しかし、その気は、状況を知って一気に消え失せる。


「……いませんね。お父様とお母様」


「えぇ、もう先に避難しちゃったのかしら?」


 いつもなら寂れた扉から入っていくのだが、今回は客という体で店側から入ろうとした。


 けれども、お店は開いておらず、さらに家側の扉も施錠されていた。


 父親が行商に出ており、母親がただ家を開けているという可能性もあった。少し家の周りを回っていたら、近所の人に話しかけられる。


「あんた達、アルピナムさんとこの知り合いかい? 二人とも、大変な状況みたいだよ」


 “蒸気輪”屋のオジサンでした。


 どうやら勇者ちゃんやその仲間達だって気づいていないみたいだ。アサガオ様様だな。


「王様んとこの兵士が、保護するってやってきたんだよ。でも、それを黒装束の奴が連れ去っちまったって」


「……」「……」「……」


 俺とエントラとアサガオは、それを聞いて顔を手で覆った。


 ユウガオが戻ってきていないため、こっちへ来ているかと思った。それは間違いではなかったみたいだ。


 王国に楯突いているとは思わなかったが。


「そ、そう。留守なんですね。ありがとうございます」


 声音を変えつつお礼を言ったら、俺達はその場を離れた。


 まず、俺としては国王の考えがわからず混乱してしまっている。


 一度は捨てた勇者ちゃんの家族を、いまさら保護しようなんてどういう風の吹き回しだ?


 いや、もはや心変わりと言っても良い。


「国王の兵士を退けて、間者の兄さんが逃げたのは確かでしょう。後の影響を顧みずに、ということは相当切羽詰まっていたはずです」


 ここで、思考を整理するのを手伝ってくれるのはエントラ。


「どうしてユウガオがガーデンロード兵に敵対するのよ? 私の敵を増やすことなんて、わざわざするような性格じゃないでしょうし」


 まさかな想像が脳裏をよぎってしまう。


 当然、アサガオがフォローを入れてくれる。


 気持ちと声を抑えようとしつつも、俺の肩に置かれた手から感情が溢れ出てくる。


「『保護』自体が嘘だったんじゃないッスか? 私同様、勇者様に仇なすつもりはないッス……ッ」


「い……!」


 手で振り払えない俺にとって、かなりきつい攻撃だ。


「姐さん!」


「……」


 エントラが止めてくれなければ、ガラスの肩が出来上がるところだったかもしれない。


 少し周囲の気を引いてしまったものの、路地裏なので喧嘩とでも思ってくれたみたいだ。


「本当にそんなこと思ってるわけないじゃない。落ち着いて」


「悪かったッス……」


 アサガオが落ち着いたところで、俺達は町を去ることにした。


 長居しても見つかる可能性が大きいだけだ。特に、王国兵が何をやろうとしているのかわからない以上は余計に。


 それなのに、奴はそこにいた。


 町を囲う壁を抜けたところになんと、ブロスが佇んでいたのである。


 ポインセティスの時とは違い、フードで姿を隠しているだけマシかもしれない。


 だが、俺はそれを無視して『レビテーション』で移動する。当然だるぉ?


 ブロスも少し戸惑った様子だが、直ぐに『ニトロブースト』で追いかけてきた。


 人目につかなくなったところで降り立つと、漸くブロスに怒鳴る時間ができる。


「なぁーにやってんのっ!」


 戦争まで一触即発ってときに、迂闊に姿を晒すダンジョンマスターがいるか!


「お、おう……落ち着けよ勇者。あの神官野郎に乗せられて飛び出しちまったのはお前だろ?」


「へ?」


 一瞬何のことやらと思ったら、そういうことか……。


 ガラムさんのことを安易に信用して、こんなところへ来たことを心配してくれたのだ。


 それを聞いて、他の二人も迂闊だったと言いたげな顔をする。


「そ、そっかぁ……ごめん。私は一度手合わせしてるから、人を騙したりしないってわかったのよね」


 一応、油断していたことは謝っておく。


 お礼を言うのは何か違う気がした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ