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案件25「ダンジョン・セキュリティの優位性3」

「こっちは向こうにおいといて。じゃあ、感度の説明に移るわ」


「あー、離すッスー」


 頭が煮えたアサガオはしまっちゃおうねー。


 こういうのは一周回った後が怖いんだよ。何を描き始めるかわかったもんじゃない。


「任せておくでござる」


 ユウガオに任せるのも心配だが。


「エントラ、まず質問しましょう」


「はい」


 良い返事と姿勢だ。生徒としては優秀だし、将来は有望な学者か為政者だろう。


「ユウガオのような間者が偵察をしているとしましょう。では、茂みが揺れる程度で逐一連絡をしてくる場合と、とりあえず人影が見えたら連絡してくる場合、どっちが良いと思う?」


「え? えっと……」


 質問としての意味は理解できるだろう。


 しかし、「どっちか」という問いに人は惑う。


「この質問に置いては、どっちも間違いではないですか? 細かいと判断が錯綜(さくそう)し、大雑把すぎれば穴が空きます」


「あら、こういう引掛け問題には弱いと思ってたけど、さすがね。ご褒美はナデナデ」


「ふふふっ」


 意外と頭でっかちではない。


 さて、話を戻そう。


 細かすぎても鈍すぎてもダメなんだ。過ぎたるは及ばざるが如し、とは良く言ったものだ。


「この空間感知式セキュリティも同じことが言えるわ。ダンジョン内にだって虫とか小さな生物が居るんだから、それに一々反応してたらキリがない」


「確かに。それで、大雑把な方は? 人間サイズなら反応して然るべきでは?」


 エントラの言う通り、探索者を感知するならそれで十分だ。


 ただ、感度という言葉は広く、大きい物に反応するだけじゃない。どれくらいの早さで変化に反応するかも含まれる。


 もう一つ、ここまでたどり着ける実力者なら少なからず手を打ってくる。


 要は、ちょっとだけ反応させて別のルートに行っちゃう作戦だ。


「コホン。細かくは後述するとして、あんまり早く反応し過ぎても逆手に取られるだけなのよ」


「何かを投げ込んだり、ちょっと入って引いたり、フェイントを入れられると翻弄される危険性があるんですね」


「そうよ。だったら、部屋に入って三秒くらいで反応するとベターって統計があるわ」


 当社比。


 エントラならばこれだけで上手く設定し直してくれると思う。


「説明が長くなっちゃったけど、大体はわかってもらえたと思うのよ。細かい調整のやり方はこれを見て頂戴」


「わかりました」


 解説書としての羊皮紙を手渡して、俺は別の必要事項に向けてダンジョン奥へと向かう。


 向かおうとしたところに、エントラの質問が飛んでくる。


「勇者様は、何者なんでございますか?」


 核心に至る言葉に、俺は内心で驚いた。


「これは、一目で素晴らしい“マテリアル”構築だとわかります。発想も今までにないものです。だからこそ、それらを考えつく勇者様が只者ではないことが伺えます」


 いつかはそこを突っ込まれると思っていた。


 別にエントラやユウガオにまで隠し続けるようなことでもないんだけど。


 話しても大丈夫なことと、納得してもらえることは違う。


 アサガオは……ほら、深く考えないタイプだし。


「特殊な訓練を受けた勇者ってことじゃダメかしら?」


 異世界の存在なんて、目標のアイテムを見つけるでもしないと証明などできない。


「僕には話せないというのですか? 毒の“マテリアル”も含めて、勇者様が――」


 エントラが食い下がり、ズズッと迫ってきた。


 そこに幼い天才としての顔はなく、一人の男が居た。本気で、勇者ちゃんのことを知ろうとしてくれているのだ。


 勘違いや幼心(おさなごころ)の暴走だと思っていたアプローチは、徐々に大人としての形へと変化しようとしている。


 頭がおかしいと思われても、あえて話してしまった方が良いのだろうか。


「――賢者エントラ。女はミステリアスな方が美しいんだよ。だから、そこまでにしておけ」


 さっき通ってきた側から、そんな助け舟がくる。


「リーサ? 貴女、どうしてここにっ?」


 声の正体は純白のダンジョンマスター、リリシアことリーサだった。


「むぅ……どうしてとは、つれないことを言う。も……っと、勇者がなかなか来ないからこっちで遊びにきてやったんじゃないか!」


 エントラに対する気遣いどうも。


 しかし、誰も遊びに行く約束なんてしていない。もしかして、今後は定期的に顔を見に行かないとダメなのか?


 助け舟の件は助かったし、膨れっ面が可愛いので、ちょっと考えてあげよう。


「風のダンジョンマスターまで……」


 少し引き気味に、俺の腰を掴んでくるエントラ。


 苦手なクラスメイトの女子から逃げる男子小学生みたいな、牧歌的光景を思い浮かべる。


 思考や幼い見た目が似ている所為か、同族嫌悪を発症している可能性がある。俺も、若い頃にお隣のお姉さんに振り回されたっけ。


「リーサがここに居る理由は仕方ないとして、貴女のところの休ダンジョン日は……間違いなく明日よね?」


「待ちきれなかったので、少し早く閉じてきた!」


 こいつ、堂々と職権乱用を宣言しやがった……。


「えぇっと……ダーン! おーい、ダン! 『マジック・センテンス』で魔王の連絡先ってわかるー?」


「やっ、やめろぉー!!」


 悪い子は上司に連絡だー!


 まぁ、嘘なんですけどね。

少し遅れてしまいました。

次回から、投稿間隔が少し早くなるかもしれませんがご容赦ください。

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