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案件23「ダンジョン・セキュリティの優位性1」

 その日、初心者ダンジョンと揶揄されていた()は変貌した。


 生まれ変わった土の“マテリアル”ダンジョンは、来る探索者達を容赦なく飲み込んでいく。


 このダンジョンに何が起こったのかと、噂が噂を呼ぶのである。その結果、二つのパターンが発生する。


 一つは、実力のある探索者達が集まってくる。これならばまだマシだ。


 二つ目、攻略を諦めて別のダンジョンに流れてしまう。


 要するに、一週間もしない内に停滞するわけだ。


「……今日で五日目だっけ?」


「勇者が来てから、という意味ならその通りだな」


 俺の訊いにダンは平坦な答えを返す。


「準備で一日使ったから、実質、探索者を相手にセキュリティが働いたのは四日ね。もう打ち止め?」


「そのようだな。しかし、ダンジョンのレベルは10にまでなったんだ。十分な成果だと思うぞ」


 ダンの言う通り、先の休日から7レベルも上昇している。


 内訳は独占アイテム1個、フロア数プラス5――現在15階、巡回魔族レベルプラス5――最大6レベル。もう少しで火の“マテリアル”ダンジョンにも追いつけそうだ。


「いやいや、打ち止めじゃダメなのよ。目標はもっと上なんだから……」


 目的のアイテムを独占するには100レベルくらいにならないといけない可能性さえあるのだ。


 その十分の1如きで止まっているわけにはいかない。


 ゆっくりでも探索者達がやってくる可能性はあるが、かなり冗長だ。


「そうは言っても、む?」【ピロリンッ! ピロリンッ!】


 ダンが呆れたように答えようとしたところで、ダンジョンのレベルアップを知らせてくれる。


 ここまで探索者が来なくて体力を持て余しているのだろう。


「良いじゃない、楽に稼げるならそうすべ、あ?」【ピロリンッ! ピロリンッ!】


 ダメ人間のそれを言いかけた矢先、続けざまにレベルが上がった。


 無謀な団体様でもいらっしゃったのだろうか?


「勇者はそれで評価も上がるから良いのかも知れないが、ぬ?」【ピロリンッ! ピロリンッ!】


「なぁに? 持て余してるなら私が夜のあい、え?」【ピロリンッ! ピロリンッ!】


「からかうのはよせ。そんな気などないくせ、ん?」【ピロリンッ! ピロリンッ!】


 心外である。


 ダンのことは評価しているし、ヘルやブロスに比べれば誠実だと思っている。


 あの二人はどちらかと言えば『勇者ちゃんを飼う』ってスタンスだからな。リーサはその逆で、さすがに倫理観が許さない。


【ピロリンッ! ピロリンッ!】


「これは、さすがに上がり方が異常ね……?」


 ダンをからかう間にまたしても、だ。儲けものだが、良い予感はしない。


 急いで様子を見に行くことにした。


 まさかと嫌な想像をしてしまった。が、状況はそれより厄介な様子。


「勇者様、これは?」


 道中、サンドウォール式の扉開閉セキュリティを作っていたエントラを拾う。


 俺とは違って、エントラは土の“マテリアル”がある。だから、ロッドを持たせて置くだけで済むのは助かるね。


「お仕事ありがとう。何かおかしいのが紛れ込んでるのかもしれないわね」


 実力もないのにダンジョンへ乗り込んでくる奴らなど居ないとは思いたかった。


 俺の目的に協力して、心を削りながら協力してくれる聖人がいらっしゃるわけでもない。


 ダンが巡回魔族を人払いしてくれている間に、出入り口へと向かう俺達。


「勇者殿のセキュリティは調子が良い様子でござるな。ここまで来るのに一苦労したでござるよ」


 ダンジョンの中腹ぐらいでユウガオとアサガオに合流できる。


「あの頃を思い出すッスね。私ら兄妹が、初めて捕まって敗北したのもセキュリティの所為だったッスから」


 昔を懐かしむのも悪くはない。が、とりあえず、二人が巡回魔族達に囲まれて嬲られてなくてよかった。


 ただ、セキュリティに引っかからないルートは教えてあるだろ。


 解除して進むのを楽しまないでくれ。


「仕掛けた先から解除していったら意味ないですよね?」


 そうだよ。エントラをあまり怒らせるなよ?


 最近、反抗期っぽくなってるから。


「ハハハ……そう怒らないで欲しいでござる」


「扉開閉式だけじゃなく、空間探知式もなかなか厄介ッスね。兄者が腕試ししたいと言い出したッスよ」


「なぜ拙者を売ったでござるぅ!?」


 おう、どうせアサガオが言い出したんだろうが。こいつ、兄貴を裏切りやがったぞ。


 本当にお前ら仲の良い兄妹なのかね?


「エントラ、今はユウガオを責めてる場合じゃないわ。セキュリティの修理は私も後で手伝うから、ね?」


「わかりましたぁ!」


 急ぎなので勇者ちゃん()が宥める。この喜び様である。


 そう言えば、勇者ちゃんがダンと居るのがとても不服な様子だったもんな。


 二人だけで一緒の部屋に寝泊まりしようとした時は、憎しみだけでダンジョンマスターを殺しそうな雰囲気だった。


 軽い嫉妬だけに留まってくれると助かるんだけど……。


「はいはい、良い子ね」


「フフンッ」


 頭を撫でてやると、ダンに向けてドヤ顔ですよ。あ、くっつかないで。


「……まぁ、良い」


 ダンもそうおっしゃっているので、出入り口へ急ぐことにした。


 少し時間を短縮できたのは、セキュリティを解除してくださいやがりました二人のおかげだと言えるだろう。


 そして、辿り着いた俺達を待っていたのは、十人くらいの身の程知らず共だった。


「貴方達……どうしてこんなところまで?」


 エントラが住んでいた村の奴らが、なぜかダンジョンまで出向いて来ていたのだ。

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