第18話 三年越しの計画
かくしてその計画とはどういった内容か勿論それは誰にも内緒である。
が、とてもシンプルで単純明快、誰でも思いつくようなことだ。
しかしいくら単純でも実際にやるとなると話は違ってくる。
緊張で吐きそうになりながら必死に演技をする。
この計画を悟られないために。
「誠このお皿お願いね。」
そう優しい声音で俺にお願いしてくる。
「お、誠。母さんの手伝いか、偉いな」
ごく普通にほめてくる父親。
これが普通なんだと実感させられる。
そう本当に普通の家族。
何処にでもいるようなごく普通の家族。
だからこそ今の俺には本当に吐き気しかしない。
「今日はなんとねぇ誠がお料理を手伝ってくれたのよ。」
「ホントかついに誠も料理デビューか」
そんな感じで嬉しそうにやり取りをする二人を俺は張りぼての笑顔で唯々静かに見守った。
「さっ、いただきましょうか」
母の言葉と共に家族三人テーブルに着く。
「じゃあ誠の中学卒業おめでとうパーティーをはじめようか」
父が言う。
「そうね、誠ももう高校生かなんだか感慨深いものね」
母が言う。
『誠中学卒業おめでとう』
父と母が声をそろえて言う。
『かんぱーい』
父と母そして俺が言う。
三人のグラスがカチンと音を立てる。
「さよなら」
最後に一言俺が静かにそう言った。
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「ふわぁー夜の風は冷たくて気持ちいいな」
俺は誰もいない歩道橋の上で独り言ちる。
俺は今いろんな電車やタクシーなどを乗り継いでかなり遠い場所まで来ていた。
あの後強力な睡眠薬を入れたワインを父と母に飲ました後家の中にある金庫から両親の通帳と全財産ついでに財布から現金を抜き取りしこたま家じゅうの金を俺の財布にinした後足がつかないように近くのコンビニで金を下ろした。
今俺の懐はとても温かい。
ワインを飲んだ後の両親の顔と言ったら、思い出しただけで笑えてくる。
超強力な睡眠薬さすがに無味とはいかなくても極力味がしないようにいろいろ工夫したのに二人とも飲んだ後すぐに気づきやがった。
まぁーでも一口飲んだら確実に意識を持っていかれるぐらいの効き目だ。
飲んだ後じゃ遅すぎる。
これで俺も自由だ。
とりあえず寝るとこの確保はしてあるから後は食い扶持とかを探さないとな。
中卒で雇ってくれる所なんてないよな。
どうしよう、マジで。
「ハァ~」
そんなため息が俺の口から出てくる。
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それから一か月俺はホテルやネカフェなんかを寝床代わりに日々仕事を探していた。
一人で生きていくためには何かと金が要る。
今は両親からうばっ、じゃなかった拝借してきた金があるからいいがいつそこを尽きるかわからないからな。
働き口は必要だ。
賃金は少ないが手伝い程度に雇ってくれるところも少なからずあった。
雇ってくれると言っても荷物運びや家事の手伝いなど本当に手伝い程度。
それでも何も聞かずに手伝いをさせてくれた上に晩御飯までごちそうしてくれた親切な人もいた。
生活に関しては本当にぎりぎりだ。
でも今は本当に充実してると思う。
あの日に比べたら本当に。
実質一人暮らしだもんなこれ。
夢にまで見たひとり暮らし。
大変だけど日々楽しくやっている。
しかしそんな日々も長く続くはずもなく家出から半年もたたないうちに俺は連れ戻されてしまう。
両親が警察に捜索願を出した。
そのせいで俺は警察に保護されあっという間に連れ戻された。
しかしそこからが俺の考えてる予想より斜め上にことは進んでいった。
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「決まりですね」
「これから誠君は私たちの元で暮らしていきます」
そう俺の両親に言い放ったのは見た目は28歳くらいのとてもきれいなお姉さんだった。
今俺はこの綺麗なお姉さんの横に座っている。
そして目の前に俺の両親。
今俺がいるところは彼女が虐待を受けている子供や身寄りのない子供たちを育てる為に彼女が一人で作り上げた教会の一室にいた。
あの後警察に連れ戻された俺は色んな事情聴取を受けた末に実の両親から虐待を受けていることが明らかになりこうして警察の配慮の元この孤児院に入ることとなった。今日はそのことについて俺の両親を交えて話し合いをすることになっていた。
そして現在に至る。
最初こそぎゃぁぎゃぁと言っていた俺の両親だが彼女の完璧な理論武装により今では借りてきた猫のようにおとなしくなっている。
程なくして手続きが終わり、俺の両親が車で帰っていったのを見送った後改めて孤児院のみんなに紹介したいとのことで俺はこの綺麗なお姉さんことこの教会(孤児院)のシスターであるサキさんに連れられほかの子供たちのところに向かった。
「今日からここがあなたの家、そして私たちみんながあなたの家族よ」
そう優しく俺の頭を撫でてくるサキさんの手はとても華奢で細くて綺麗だった。
俺の新しい生活がここから始まる期待に胸を膨らませみんなが待っているであろう部屋にサキさんと一緒に向かった。




