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7. 明日は必ず

「乙葉?」

「…………」

「ごめん。悪かったって。もう意地悪しないからおいで」


 しゃがんで、こっちに手を差しのべる駈くん。私は猫ですか?

 それにあれは『意地悪』なんていうレベルではない。全力で逃げなければ食い尽くされそうだった。


「おーとーは」


 ぷいっと顔を背けると、


「それ、やばい。可愛い――今すぐしたい」

「……駈くん、最後の言葉が危ない人になってる」

「あっ……心の声がだだ漏れしてた?」

「思いっきり」

「悪い。でもね、野郎ってのは多かれ少なかれ危ない人種なわけ」


 小学生にしてお姉ちゃんに下心を持っていた大地のことを考えれば、あながち否定できない。


「機嫌直して。ね? 明日はサッカーを見に行ってもいいから」

「本当? 怒ったり、嫌み言ったりしない?」


 あと、いきなり襲いかからない?


「しない。約束する」


 私は差し出された手を取った。駈くんが優しく微笑む。


「明日、駈くんも一緒に行かない?」

「俺は止めておく。乙葉が田沢を応援してるの見たら、やっぱり焼きもち妬くかもしれないから」


 駈くんは、私の手のひらを親指でなぞりながら、思い付いたように言葉を継いだ。


「でも明日、乙葉からメッセージをたくさん貰えると嬉しいな」


 それは、あれか? 束縛系のメッセージ?


「乙葉に、俺のこと始終気にしていて欲しいんだ。だって、俺を好きだって証拠だろう?」


 あっ、そうなんだ。


 束縛願望の裏には、そんな可愛い男ゴコロが隠れてるんだね。


「分かった。明日は必ずメッセージを送るね」


 私は大好きな彼に約束をした。






◆*◇*◆*◇*◆*◇*◆*◇*◆*◇*◆*◇*◆




「お前さ、何で他校の応援席にいるわけ? お前の学校、あっちだろう」


 中学時代の友人の言葉に、白鳥駈はオペラグラスを下ろした。


「こっち側からの方がよく見える」

「たいして変わらんだろう」

「そんなことないよ。それに、サッカー部に嫌いな奴がいるんだ。負ければいいのに」

「相変わらず好き嫌いの激しい奴だな……って、またメッセージきたの?」

「うん。彼女から」

「お前、彼女いんの? マジで? お前、女に冷たいじゃん」

「俺だって好きな子には優しくするよ」

「想像つかない。空からカエルでも降ってくる方がまだ現実味がある――で? 彼女、何だって?」

「今、どこ? とか、何してる? とか」

「うわぁ。ストーカーかよ。お前、よくそんな重い女と付き合えるな」


 友人の言葉に、駈はクスッと笑った。


「なあ、相手に気付かれずに束縛する方法って分かるか?」

「なにそれ?」

「分からないならいいよ」



 そうして彼は、愛しい彼女のメッセージに返信する。


 『中学時代の友人と会っている。そっちは何してる?』





   ― 終 ―




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