共鳴#2
聖なる剣は魔法使いの少女『ナルミマホ』の涙により空気を震わせる金属音を発した。
その音は遠く離れた魔王城にまで届いていた。
「何? この音」
魔王が勇者との戦いにより勇者共々姿を消してしまったことにより次期魔王の座に就いたサキュバスは何処からか聞こえてくる金属音を耳にした。
「魔なる剣が、共鳴している?」
魔王の墓として魔王城の床に突き刺さっている魔なる剣はその金属音に反応し、低い金属音を鳴らしていた。
「この音」
サキュバスは最近この二つの音を聞いた覚えがあった。同じころサキュバスと同じ事を考えている少女がいた。
「あの時の音だ」
ナルミマホはその音の正体をすぐに思い出した。
「ほう、勝利の音だな。いつ聴いても素晴らしい」
「国王様」
「素晴らしい音色だが、何故君がその剣を持っているのかな?」
人類に平和をもたらし人類の為に消えた勇者が持っていた剣『聖なる剣』は勇者を失くし三人となってしまった元勇者一行の王国帰還後に王国によって保管されているはずだった。それをマホは無断で持ち出して来ていた。
「勝手に持ち出したことに関しては謝罪いたします。しかし、この剣はユウちゃんの……勇者レイド・ユウが最後に所有していた物、王国の宝物庫で埃を被るよりも我々勇者の仲間が所持していた方が良いかと思い持ち出しました」
「筋は通っているが盗み出したことの言い訳にはならない。さぁ、その剣は返してもらおう」
国王は兵を呼び、兵はマホに剣を渡すよう命じた。
「国王様の命令でも従うことは出来ません」
「そうか、残念だ。皆に告ぐ、ナルミマホを捕らえよ」
マホに十数人もの兵が襲い掛かった。しかし、マホは余裕の表情で炎を呼び出し十数人もの兵を炎で包み夜の闇の中へ姿を消した。
「何をやっている。それは幻惑魔法だ」
幻惑魔法で作られた偽物の炎は発動から十秒で消えた。
「ナルミマホを手配し奴の仲間を即刻捕らえよ。王に逆らう者の末路を国民に見せてやれ」
国王の何かに憑りつかれたかのように豹変した姿を見て不信感を覚えながらも兵たちは行動を開始した。
「音が大きくなっている?」
サキュバスは直感的に嫌な気配を感じていた。
「どうしたんだいサキュバス。それにこの音は?」
「アークヴァンパイア君じゃないか、本来この部屋はわたし以外立入禁止のはずだが?」
「誰かが弱音を吐いている声が聞こえたのでね」
「私が弱音を? 冗談じゃない。私はサキュバス族でありながら魔王になった魔物だよ。弱音なんか吐いている暇があったら敵国との戦争について考えるよ」
サキュバスは魔王以外には弱音を見せないと心に誓いアークヴァンパイアに嘘を吐いた。
「敵国か、人類とは言わないのだね」
「人類と言って欲しかったのかい? 君の先祖だって元を辿れば人類なのに」
「僕に対する配慮だったのか、恐れ入るね」
「ねぇ、アーク折り入って君にお願いしたいことがある」
サキュバスのその口調は魔王とその部下ではなく昔馴染みとして物事を頼む口調だった。
「サキュの頼みなら何でもするよ」
「私は少しの間、城を留守にする。その間アークには魔王代理をして貰いたい。駄目かな?」
「今言ったばかりだろ。僕はサキュの頼みなら何でもするって。理由は魔王か『魔なる剣』関係だと思うけど、聞かない方が良いよね?」
「うん。ありがとう」
サキュバスは泣きそうな目でアークヴァンパイアに礼を告げると床に突き刺さって音を放っている『魔なる剣』を引き抜き、他の魔物にばれぬよう城を出て行った。
「全く、なぜ僕はサキュの為に頑張ってしまうのだろう。サキュは僕になんか興味ないだろうに」
サキュバスが『魔なる剣』を持って魔王城を出た頃、マホも『聖なる剣』を持って王国を飛び出していた。
おはようございます。こんにちは。こんばんは。
先ほど更新したばかりですが、最新話の更新です。
今回は『共鳴』の第2話です。
『共鳴』は本編の合間合間に挟むサイドストーリーとして展開していく予定ですが、そのうち本編と絡む話が出来たらと思っています。
次回は本編新章『零度優Ⅱ』が始まります。
タイトル通り零度優がメインとなりますが、新キャラの天風楓もメイン並に登場予定です。
不定期な更新が多いですがこれからもよろしくお願いします。
東堂燈




