零度 〜優等生は劣等生〜
テンが消滅した後、生徒会室には優と真央の本来の世界へと続くゲートが現れた。
「優、戻るぞ。俺たちの元居た世界に」
「うん」
ゲートを通り元の世界に帰ろうとする真央を冷利は引き留めた。
「何か一言あっても良いんじゃないの?」
「確かに、冷利と博がいなければここまで来ることは出来なかった。その事はとても感謝している。感謝ついでに一つだけお願いしたいことがある」
「図々しいな。言ってみろよ」
真央はゆっくりと正確に自分が元の世界に戻った後、この世界に残る本当の零度真央に対する謝罪の行動を告げた。
「なるほど、難しいとは思うけどやってみるわ」
「冷利、俺が帰った後の俺の事は頼んだぞ。博は優の事を頼む」
「お、俺で良ければ」
「お前じゃなきゃダメだ」
「任せろ」
真央はそう言うとこの世界でたった二人の仲間と抱き合った。
「真央、早くしないとゲートが消えちゃうよ」
「お前は少し待つことを覚えろ。それじゃあ、後の事は頼んだ」
この世界を救った勇者と魔王は元の世界へと帰って行った。あとに残ったのは、数日の記憶と意識を失った本当の零度姉弟だった。
元々平穏だった世界に平穏が戻ってから数日が経った。
「あの」
天風楓という架空の人物が在籍していた生徒会長の座には生徒会副会長の推薦で零度真央が就いていた。その陰にはちゃっかり会長補佐の座に就いた吉良冷利の影があり、そのさらに影にはこの世界に存在するはずの無かったレイド・マオの存在があった。
「今まで人と関わりを持っていなかった僕が何故生徒会長に?」
「真央の記憶にない記憶の間に色々とあったのよ」
冷利は意味深にそう言い微笑んだ。そんな二人の視線の先には、
「零度先輩、付き合ってください。俺、先輩の事絶対に守りますから。たとえ、天使や魔王が襲ってきても」
「わたし、自分よりバカな人はちょっと」
「こう見えても俺、学年三位の成績ですよ。バカじゃないですよ」
「それなら」
博は真央からのお願いをどう勘違いしたのか、優を心の底から好むようになり本日遂に告白した。そんな二人を見て学年一位の成績を誇る優の弟とその弟に次いで二位の会長補佐は大きなため息を吐いた。
「そうだ、会長お茶にしませんか?」
「それなら僕、お菓子持っているから一緒にどう?」
真央が出したのはねじり鉢巻きデスソースアンドマシュマロ味だった。
「会長、私が好きな味だって知っていました?」
「全然知らなかった。僕たち好み合うみたいだね」
「そうみたいですね」
今はまだあの時のような距離感は無いが、この二人ももうしばらくした未来で付き合う事になるとこの時はまだ誰も知らない。
本来、物語のタイトルというのは第1話か最終回につけられるものだと思います。ですが、私は敢えて今回の話に使わせてもらいました。
ぶっちゃけ、使うかどうかは作者である私次第ですが。
今回の後日談ですが、これは前回の話を書いていた時に突然思いつき短いながらも書きました。なので本来は前回の話に今回のサブタイトルが使われる予定でした。だから何だ?と言われたらそれまでですが。
次回ですが、この物語の最終回です。変な終わり方をした共鳴編も次回で完結します。
次回の更新は『優等生は劣等生』第1話の更新日と同じ1月28日を予定しております。
それでは次回の最終回でお会いしましょう。
東堂燈




