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共鳴 #4

「どうする? さっきの攻撃は魔界への宣戦布告とみなして魔王直々に魔界と人間界の戦争を宣言しようか? と言っても操られているなら答えられないだろうけど」


 答えられない僧侶の『キサキ・リョウ』と格闘家が答えられないなりに出した答えは、サキュバスの右手に抱えられた魔法使い『ナルミ・マホ』への攻撃だった。


「人間と争うつもりは無かったのに、残念だよ」


「サキュバス、二人は操られているだけなの。やめて!」


 マホの言葉に耳を貸すことなく、サキュバスは魔王として冷え切った声で告げた。


「『禁忌魔法デヴィル・ウィスプァー』」


 サキュバスが二人にそう唱えると、リョウと格闘家は重力に引き寄せられたかのように地面へと崩れ落ち頭を抱え悶えだした。


「魔法は火には水、水には草、草には火のように対になる存在がある。光属性の『禁忌魔法エンジェリー・ウィスプァー』には闇属性の『禁忌魔法デヴィル・ウィスプァー』が有効。まぁ、この魔法は魔界独自の魔法だから人間界の禁忌魔法使いは知らないだろうけど」


 地面で悶え続けている二人の声が声にならなくなると、二人の心臓が位置する部分から黒い天使が白い悪魔に引き抜かれた。


「燃えて。『禁忌魔法エンジェル・フレイム』」


 サキュバスの優しい声とは異なり、唱えられた禁忌魔法は人間界で神の使いと信じ、崇拝する者もいる天使と言う存在を容赦なく焼き消した。


「マホにも後で教えてあげる」


 丁重にお断りしたいと思ったマホだったが、サキュバスの小さな子供のような笑みが恐ろしくなり、つい、「ありがとう」と言ってしまった。


「サキュバス、二人は?」


 地に降りたマホはリョウと格闘家の二人から距離を置きつつサキュバスに尋ねた。


「大丈夫。操られていた時に魔力が暴走していたから、その暴走が収まった影響で気を失っているだけ」


 そう言うサキュバスは氷の矢を刺され戦闘不能となっている兵士に『禁忌魔法デヴィル・ウィスプァー』を唱えた。リョウと格闘家に比べ、軽い洗脳だった兵士たちは二人のように悶えることは無く黒い天使を抜き出された。


「さて、そこの二人が起きたら人間界に向かおうか」


「ちょっと、何を言っているの?」


「魔王として人間界との戦争を宣言しちゃった以上は魔界が優勢な間に人間界に攻め込むのは戦略として当たり前でしょ?」


 サキュバスは全く持って間違ったことは言っていなかったが、現在人間界の者として唯一魔界の者と対等に話すことが出来るマホとしては自分と仲間を助けてもらった恩はあるにせよ止めておく必要があった。


「助けてもらったことは感謝しているけど、これ以上戦いを続けるなら」


 マホはサキュバスを睨みつけながら聖なる剣の鞘を抜いた。


「人間には手出ししないから安心して」


 サキュバスは魔なる剣を鞘から抜くことなくマホに言葉という剣で対抗した。


「サキュバス、それってどういう意味?」


「命に限りのある人間に手を出したら人間との共存を望んでいた魔王に合わせる顔が無くなる」


「魔王に、ね」


「そうだ、約束通り禁忌魔法を教えないとね。基本的な魔法が使えるなら禁忌魔法の習得にはそんなに時間が掛からないと思うよ」


 人間界の女子高生のような口調でそう言ったサキュバスは困り果てた表情をするマホにお構いなしで本来は使用することも許されない禁忌魔法を次々に伝授していった。




「こ、ここは?」


「確か、兵士に取り囲まれて国王様のもとに連れて行かれたはず」


「二人とも、無事でよかった」


 マホはそう言いながらも目が覚めたリョウと格闘家のうち、リョウにだけ抱き付いた。


「マホさん? 何でわたしたちはこんな所に?」


「えっと」


 マホがどう説明して良いか悩んでいるとサキュバスがマホとリョウの間に割って入った。


「人間界の国王に会ってから現在までの記憶が無いの?」


「あなたは?」


 サキュバスとの面識がないリョウはそう聞いた。しかし、サキュバスはその問いには答えなかった。


「本当に最後に会ったのは国王?」


「はい、間違いありません」


「サキュバス、それってやっぱり」


「間違いない、禁忌魔法使いは人間界の国王」


 マホとサキュバスは禁忌魔法の習得の為に一時的に地面に置いていた聖なる剣と魔なる剣を手に取った。


 耳障りなほどうるさく響いていた金属音は互いが互いの音を包み合い心安らぐ音へと変わっていた。


「そう言えば、マホさん。王国で指名手配されていましたけどその理由って」


 リョウはマホが背負う聖なる剣をまじまじと見つめた。


「ユウちゃんの形見だから」


「そうだけど、すぐに返してきた方が良いよ」


「無駄だよ」


 マホはとても低い声で言った。その声に気の弱いリョウは恐怖した。


「あの王国に味方はいない。ユウちゃんが今の状況を知ったら絶対に同じことを言うと思う」


「魔王も勇者がそれを知って助けを求めに来たら快く仲間になった事でしょう」


「それって?」


 状況を掴めていないリョウと話に参加させてもらえない格闘家に二人は真剣な目をして言った。


「「この『魔法ちから』で創造主の支配から脱してみせる」」



記念すべき15話目となった今回は共鳴の第4話です。

前回、今回とこの物語限定の魔法が多く登場しております。

今後は零度姉弟が主役の本編とマホ、サキュバスが主役の共鳴共にこの物語限定の用語が多くなると思います。


次回の更新は11月中に行いたいと思います。

それではまた次回お会いしましょう。


東堂燈

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