62.涙
とても僕には大丈夫には見えなかった。だけど、きっと緋和ちゃんは僕の前で泣こうとなんて絶対にしないだろう。
「大丈夫……です。」
「そっか……。僕はもう行くけれど、呼んでくれたらいつでも来るよ。」
「はい」
「今日は本当に呼んだら何度でも来るよ。」
いつもだったらそう何度もここには来られないが、今日は今日だけは緋和ちゃんが心配だった。
「……はい。ありがとう、ございます。」
「じゃあとりあえずもどるよ。またね」
部屋を出る前に僕は百萌ちゃんのベッドに近寄った。
「分かってますよ。ひよりんがヤバかったら呼べばいいんですよね?」
「……! ありがとう。本当は君に頼むようなことではないのだけど。ごめんね」
「いいえ、大丈夫ですよ。わたしもひよりんが心配ですし」
百萌ちゃんもこの歳でよくここまで空気を読んで、こんな提案を当たり前のように提示してくる。
「じゃあ僕はもう行くよ。よろしくね」
それから僕が呼ばれたのはつい一時間後。看護師のみんなには緋和ちゃんが呼んだらまず自分をよんでくれと言っておいた。
「百萌ちゃん」
「しーッ。」
緋和ちゃんのベッドにはカーテンがかかったまま、百萌ちゃんは自分のベッドに腰かけていた。
「どうしたの?」
「ひよりん、泣いてるっぽいです」
百萌ちゃんのベッドへ寄り、耳をすませた。
「……本当だ。」
確かに小さい声ではあるが嗚咽が聴こえる。百萌ちゃんは本当によく気付いてくれた。
「緋和ちゃーん」
緋和ちゃんにも聞こえる程の声でベッドへ向かった。
「緋和ちゃん、大丈夫?」
カーテンは完全に閉まっており、中は何も見えない。
ゆっくりと少しだけカーテンを開けた。




