珍しい
病院の体温計は基本的に速いからすぐに測定完了の音がなった。
「三十五度七分。緋和ちゃん平熱低いよね」
「はい、いつもそのくらいです。」
「まあならいいかな~次は採血ね」
「はい」
普通なら看護師の仕事だが、今日ばかりは緋和ちゃんを不安にさせないためにも僕が行うことにした。
素直に来ている服を肩の方まであげ、腕を差し出す緋和ちゃん。ここまで素直だと何か無理をしている気がして不安になる。
なぜならこの年で採血、というか注射系を嫌がらないのは珍しい。何度病院に通った子でも嫌がる子は嫌がるのに。
「じゃあ、ちょっとチクっとするけど、目はつぶってようね~」
正直、自分の手に針が刺さり、血を抜かれる様子なんて誰だって見たかないだろう。特に子供はそれを見て「気持ち悪い」と体調を崩したりもする。だから「目をつぶって」というのが子供に針を向けるときのこの病院でのルールだそうだ。
「はい、終わり!」
手早く量をとって注射器を抜き、絆創膏を貼った。駆血帯も外し、器具は全て看護師と他の先生に渡した。
「じゃあ最後、お胸の音聞かせてね~」
やっぱり雑音がする。でもいつもと変わった音はしていないので、いつも通りと言えるだろう。
「よし、じゃあまた何かあったらナースコール押してね~」
《用語》
採血などをする際に静脈をふくれあがらせるため、採血部上方に巻きつけるゴム紐。




