四〇一号室
緋和ちゃんの入院当日。受付の三十分前にはいつもいる緋和ちゃん。今回も例外でなく、特に緊張も不安も読み取れない表情をして受付をしているお父さんを見ている緋和ちゃん。だけど、本当に強い子なのだろうか。
緋和ちゃんはこちらに気づいたので手を振ってみた。さり気なく小さく返してくれた。その様子だけを見れば、ただの六歳の女の子だ。
いいや、緋和ちゃんは今でもただの、あくまで普通の女の子だ。
「これに乗ってね~」
受付が終わったお父さんと一緒にこちらに歩いて来た緋和ちゃんに車いすに乗るよう指示を出した。ここから緋和ちゃんの病室までは少し距離があった。無理に緋和ちゃんを歩かせる必要はない。だからこれを用意したのだ。
少し戸惑うような様子を見せた緋和ちゃんだったが、素直に乗ってくれた。
そして僕が緋和ちゃんをおし、お父さんは緋和ちゃんの荷物を持った。車いすに乗っている緋和ちゃんは何だかとても弱弱しく見えた。
「今日から入院の神原緋和さんです」
入院病棟の受付の看護師さんに緋和ちゃんの入院に必須な書類や手続きをお父さんにしてもらい、緋和ちゃんはそのまま病室まで連れて行った。
受付から一〇〇メートルほど離れたところにある四〇一号室が今回の入院で緋和ちゃんが使う部屋だ。
「今日からしばらくここ、四〇一号室が緋和ちゃんの部屋だよ~」
四人部屋の端っこが緋和ちゃんのベッド。緋和ちゃんを抜いてこの部屋の子は二人。どちらも年上のようだ。
緋和ちゃんならきっと立て隔てなく接することはできるのだろうけど、仲良くできるかと言ったら少し心配なところでもある。
「よろしくお願いします、神原緋和です」
車いすから立ち上がり、ドアの前で挨拶をする緋和ちゃん。本当に礼儀正しい子だ。
「わ~新入りちゃんだね~よろしく」




