昔話
「ちょっと昔話をしようか」
先生は唐突にそんなことを言いだした。
「緋和ちゃんの話」
「聞きたい」
即答した。市禾ちゃんも頷いている。緋和ちゃんは入院生活が長いと聞いた。そしたら緋和ちゃんと一緒にいる時間も短いだろう。
「緋和ちゃんはね、知っているかもしれないけど毎朝、採血……血を、採られているんだ。朝起きたら、とりあえず検温と採血。しかも、緋和ちゃん敏感だから、夜中の巡回とか毎回起きちゃってたんだ、前は。今は少し改善されたみたいだけどね。緋和ちゃんの病気は生まれつきのもの。しかもいろいろと問題もあるから、僕が緋和ちゃんの担当になる前から頻繁に病院に通ってたし、入院経験もあった。入院するときは基本、手術や検査をする場合が多いけど、あんまり熟睡できないから身体とかよくこわしてた。検査は検査でそれなりにキツイことしかしないから、寝たきりのときとかPICUって言って、制限の多い監視が必要な子供を入れる部屋に入っていたりしたんだ。「怖い」とか「嫌だ」って言えばきっと心的に楽になるはずなのに、僕ら医者や看護師さんたちに無駄な時間をとらせまいとして、絶対に弱音を言わなかった。」
わたしとは大違い。でもそれを聞いただけでは特に今の緋和ちゃんの印象と変わるところはない。そして、そのまま先生は淡々と昔の緋和ちゃんを語った




