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After 自由の代償と束縛

ケンタウロス族の里編、遂に完結です。

昨日も書きましたが、ブックマークを外さず3ヶ月以上待っていてくださった皆様、本当に有り難うございました。

ケンタウロス族の里での大立ち回りから数日。


私は昼は里の武術指南という大役を押し付けられ、無理やり宴会に連れて行かれるという日々が続いていた。残念な事に里の女性や子ども達からは未だに敬遠はされているが、戦士を自負する男性達からはそれなりの評価を得ているようだった。


「婿殿は本当に戦い方を教えるのが上手い、旅に出るのなんて止めてこのままこの里で骨を埋めんか?」


ファーネスはどんな心変わりをしたかしらないが、ここ数日こんな調子で私のことを『婿殿』と呼ぶようになった。


「ですから、婿殿はやめてくださいと何度も言っているではないですか。」


「何、では貴様は人の娘をひん剥いておいて、責任は取らないと言うんだな!!」


責任はこの際おいて置いて、こんなやり取りが数日続くと、流石に本気でイラついてくる。なので、このせりふになった時は話題を変えることにしている。


「そういえば、今日の編隊の時、弓隊と盾隊を混ぜて編成してたみたいですけど、あれは上手くいきそうなんですか?」


正直、軍師の才能はないが、弓隊の機動力という長所を消しそうで見ていて心配になったので話を帰るついでに聞いてみる。


「いや、なかなか難しいだろう。機動力と防御力を両方兼ねそろえればいいんだが、これからも改良が必要だろう。」


私との戦いを経て、今までの戦略上で幾つかの問題点に気が付いたらしい。そこに自分達で改良を加えようとしているだけでも、伝統を重んじ守ってきたケンタウロス族にしては物凄い進歩だろう。実際この飲みの場ですら戦略や技の考察が多数行われている。


その光景をそれとなく眺めていたのがファーネスにばれたらしい。彼はニヤッと笑って、


「どうだ、一つの里の伝統をぶっ壊した気持ちは? まぁ、こっちからしたら感謝しかないが、婿殿からしたら爽快なのか、不快なのかどっちなんだ?」


遠慮なしに質問が飛んでくる。


「壊したのは私じゃありませんよ。守ってきたのも壊したのも、ケンタウロス族の里の人々でしょう。私がしたのは自分の目的の為にファウナと話をしただけです。」


大きな笑い声とともにファーネスが言葉を続ける。


「はっはっは、まぁ、そう思うならそれでもいいさ。捉え方は人それぞれだ。何にせよ、これから先の結果次第で婿殿はケンタウロス族の変革のきっかけを与えた英雄になるか、たぶらかした極悪人になるかだ。頑張って『邪竜退治』に励んでくれ。」


そういうと彼はまた豪快に笑った。


ここで、ふと疑問に思ったことをファーネスに聞いてみる。


「ファーネスさんは、『邪竜』の存在を信じますか?」


「・・・そうだな。つい数日前までは信じていた。だが、今は・・・。」


「信じていないのですか?」


「いや、どうでもよくなった。」


そう言って彼はまた笑う。


「あるかわからない未来より、今の積み重ねが未来になる。そうだろ? ワシも今はそれでいいと思う。邪竜に立ち向かう為に訓練するのではなく、自分たちを磨き上げるための訓練を繰り返す。それが正しいあり方だと、今は思える。邪竜以外の脅威に対抗するためにもこの変革は必要だったんだろう・・・とな。」


そこにファーストがやってくる。


「ゼロ様、今しがたお連れの方が里の門の方に到着したようですので、今、客間にお通しさせていただいてます。一緒に参られますか?」


「ええ、是非お願いします。」


私はファーストと一緒に客間へ向かう。


ドアを開けようとすると客間の中から異様な殺気を感じる。


きっと私の安否を心配している仲間たちが押さえきれずに殺気を表に出してしまっているのだろう。


ガラっ。


ドアを開けた瞬間、それが思い違いだったことに気付く。殺気は私に向かって放たれている。


「えっと、見ての通り無事なんだけど・・・。」


殺気の原因がわからないので相手の出方を伺うように話し掛ける。


「ええ、存じ上げています。ゼロ様がケンタウロス族の里をほぼ無傷で制圧されたことも、ケンタウロス族の皆さんに手ほどきを行ってることも、毎日お酒を飲んで遊び呆けていることも。まったく、心配していたこっちがバカみたいでございますね。」


弥生が笑顔で淡々と事実を述べる。


「い、いや、丸く収まったんだから、それはいいんじゃない? あ、遊びって言っても、それも接待的な役割もあるわけだし・・・。」


しどろもどろになりながらも反論する。


「接待って言っても、ゼロは連合の使者の立場を失ってるんだよ。一体なんの立場で接待を受けてるの?」


まぁ、言われてみればその通りだが・・・。サラサの目も冷たい。


「難しく考えることはないんじゃなか? 昨日の敵は今日の友っていうだろ? 戦いを通じて友情が芽生えてってあれだろ?」


こっちの世界でこの格言があるかは知らないけど、まぁ、考え方はあっているだろ。


「お館様、僕が調べた情報だと、ケンタウロス族の人たちは巫女様の伴侶としてもてなしてるってことなんだけど・・・。」


ん? 雲行きが怪しくなって来たぞ。しのぶは一体なんの諜報活動を行っているんだ。余計なことを!!


「いやいや、それは勝手にみんなが言っているだけじゃないのか? そんな見に覚えのないことで言い掛かりをつけられてもなぁ。」


正直、あの場にいた人々がそう思う気持ちはわからなくはないが、ここで認めるわけにはいかない。嘘はついていないし、何よりお仕置きだけは絶対に避けないといけない!!


「そうですか、では『ファウナを守って生きていく』と、皆さんの前で宣言されたことも、言い掛かりですから?」


あ、俺、死んだ。


チラッと出入り口を見る。もちろん逃走経路の確認だ。だが、そこにはいつの間にかルークが立ちふさがっている。おい、ルーク。いつの間にそっちの見方になった?


「まさかゼロ、今、逃げようとした?」


背中に冷たいものを感じる。サラサの視線が痛い。


「ば、馬鹿だなぁ。逃げようとするわけないじゃないか? みんなだって、ファウナと一緒に旅をする方がいいだろう? あの場ではそう言うしか選択肢がなかったんだよ。」


「では、お館様の本意ではない・・・と?」


「いや、本意だよ。でも、それは伴侶とかじゃなくて・・・。」


そう言いかけて気が付いたが、年頃の自分に好意を持ってくれている相手と旅をして、守るって約束までしてるのに、伴侶じゃないとかって、わめき散らす方があり得ない言い訳だ。


「すまん。今のはなし。伴侶ってのは否定させてもらうが、大切な存在って言うのは間違いない。」


それを聞いたファーストが、


「では、婚約と言う形で預けます。」


と、爆弾投下してきた。これは断ることは出来ないだろう。


「わかりました。ただ、ファウナの意思を聞いてからにしてください。それと、私には既に2人の婚約者がいることも理解した上でのお話と受け取ってよろしいでしょうか?」


「もちろんです。ファウナ、聞いていたでしょ。」


奥の部屋から、ファウナが正装をして現れる。


「ふつつかものですが宜しくお願いします。」


普段、ど変態に目がいってしまって気が付きにくいが、こうやっておしとやかにしていると超美人だ。いかん、まさか、ファウナにドキドキさせられるとは。


「ああ、こちらこそ宜しく頼む。」


「ファウナ様、ご理解いただいていると思ういますが、第一夫人の座はわたくしでございますから、ゆめゆめお忘れなきように、これからも宜しくお願い致します。」


弥生が恭しく頭を下げる。


「弥生が寝ぼけてるけど、第一夫人はあたしで、第二夫人が弥生だから、ファウナは第三夫人ね。それと、先に言っておくけど、しのぶがその気があるなら第四夫人だから。」



さらっと、しのぶの案件も突っ込んでくるサラサ。まぁ、否定できないのが悔しいところだが。


「僕は愛人の関係でいいよ。立場も巫女様って言うみんなと違って高い訳じゃないし。」


しのぶも何言い出してるの?


「立場は関係ありません。弥生様、サラサ様、しのぶ様、これからも協力してご主人様をお守りしましょう。」


頷く仲間たち。

ちょっと、感動的だ。


いや、ハーレムフラグがたったことにはでなくて、種族を越えた友情にだ。


「でも、私は夫人じゃなくて性奴隷でもいいんですけどね。」


ボソッとファウナが付け足す。


みんなその言葉を無視しているけど、


『台無しだ』と思っているのは私だけではないはずだ。


「で、それはそれとして・・・。」


弥生とサラサの目がの色が変わる。


「「お仕置きの時間です。」」


えええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!


この流れは完全に不問になる流れでしょ!?


「え、え、え、え、えっっとーーー、お仕置きいらなくないですか? みんな仲良し、これからも一緒に頑張ろうって話でお仕舞いでいいんじゃないですか????」


「駄目でございます。ゼロ様は見境がないからお仕置きをきちんとしないと里から里へ移動するたびに婚約者を作りそうな勢いなので。」


「ぐ・・・。これ以上、婚約者を増やさないことを約束・・・。」


「出来ないでしょ? だから増えることは覚悟してるよ。でも、けじめはつけないと駄目だと思うんだよね。」


否定できない・・・が、お仕置きだけは、


「嫌だーーーーーーーーーーー!!」


全力で逃げようとした私の首根っこを意外な人が捕まえる。


ファーストだ。


「お仕置きは甘んじて受けるものですよゼロ様。」


そこで見た表情はまさに弥生とサラサの目が一切笑っていない笑顔だった。私は先の戦いの時にその力を発揮されたら負けていたんじゃないだろうかと言う馬鹿力で、女性陣の目の前の床に叩きつけられる。


「「「さぁ、お仕置きの時間です!!!」」」


薄れ行く意識の中で、入り口付近に佇むファーネスの羨ましそうな顔だけがやけにはっきりと見えた。

次回からはエルフ、ダークエルフの里に行けたらいいなぁっと漠然と考えています。

違ったらごめんなさい。

では、なるべく早く投稿出来るように頑張りますので、引き続きお付き合いください。

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