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自由の代償と束縛 8

みなさん、3ヶ月もご無沙汰してすみません。待っていて下さった方、本当にありがとうございます。

これからは毎日とは言えませんが、自分のペースで投稿したいと思いますので、引き続き読んでいただけると幸いです。

「めでたしめでたし、と、言いたいようですが、まだ終わらせませんよ。」


冷たいファーストの言葉が投げつけられる。


「巫女様が何を言おうと、族長として巫女様のお言葉も戦士長の決断も断固拒否します。」


「娘の決断を拒否した俺を批判したファーストさんが、今度はその娘の決断を拒否するのかい? それは矛盾って言うんじゃないですか?」


「いいえ、母としては娘の決断を尊重したいし、妻として娘を思う夫の気持ちは痛いほど理解出来きます。しかし族長として、巫女様を旅に出すことを許可することは出来ません。そして、連合に加入することも拒否します。無論、戦士長を筆頭に巫女様を守るために己の腕を磨き、邪竜復活の際に力を振るうと言う決断を拒否することはしませんが・・・。」


「どうしてですか? 先程主張させていただいた通り、邪竜退治には他の部族との協力が不可欠な筈です。どうして、そこまで手を組むことを拒否するんですか?」


「巫女様と部族を守るためです。」


そういい放つと、ファーストは真っ直ぐな瞳で私を見つめる。


「ゼロ様、どうか勘違いなさらないでください。私は貴方様のお力も理解し、主張も理解し、それが正しいことだと認識した上で、この決断をさせていただいています。」


「正しいと思うなら・・・。」


「ええ、正しいと思います。連合の中、もしくは他部族の中に希望の民以外の民が混ざっていなければ'''と、言う前提のもとですが。」


「つまり、今の希望の民は信じられないと・・・。」


「ここからの話は族長のみに伝わっている言い伝えなので本当は公にするのは躊躇われるのですが、皆の気持ちが同盟参加に傾いている今、話さざるをえないでしょう。」


躊躇いながらファーストがその重い口を開く。


「聞きなさい我が民よ、これから族長に代々伝えられていた伝承を皆に伝えます。心して聞いて下さい。『漆黒の闇より生まれし悪魔の封印が数千年の永き時を得て破られし時、原初の12の民が再びその牙とまみえるだろう。偽りの仮面により希望が打ち砕かれ、世界は再び闇に沈む。しかし諦める事なかれ、約束が果たさられる限り、打ち砕かれた希望は一つに集まりより大きな光となって闇を照らすであろう。』」


伝承を聞いたケンタウロス族からざわめきが起こる。


邪竜復活を予言した竜の生き残りが希望の民に託したメッセージのようであった。


しかし、問題はその数字『12』だ。犬人族と猫人族を1つの部族と捉えてもその数は14。他の部族で同じ事がないとは言えないが、同時に「偽りの仮面」と言う言葉が引っかかる。つまり、ファーストは今の希望の民の中に邪竜に組し、世界を闇に沈めようとするものがいると言うのだ。それがどの部族かわからないうちはどの部族も信用出来ない、と、言っているのだ。


言葉を聞き心の中に疑念が産まれた私にファーストは続ける。


「ゼロ様、これでケンタウロス族が連合に参加できない理由はおわかりになって下さいましたか。」


同じ立場なら私も簡単に連合参加し、身内を危険に晒すことは避けたいだろう。しかし・・・。


「ファーストさんのお気持ちはわかりました。それでも私は連合参加を要請します。」


周囲のざわめきが大きくなる。


「まず第一にその伝承が正しいとは限らない。ケンタウロスの族長様たちによって伝えられてきたのでしょうが、その出所は不明でしょう。言い方は悪いかもしれないですが、いつかの時点で意図的に作成されたものかもしれないし、逆にそれが竜の力による予言とするなら避ける道はないでしょう。ならば、避けようとするのではなく、乗り越える道を選ぶべきなのではないでしょうか。」


「ゼロ様はそれが連合であると。」


「その通りです。先に言わせていただきますが、私は希望の民のうち、ある部族が不穏な動きをしている事を察知しています。先入観を避けるためあえてどの部族かはここでは控えさせていただきますが、それでも私はその部族にも連合に参加して欲しいと思ってます。」


「それは何故ですか。」


「私は邪竜と言うものを見た事がありません。いたとしても、数千年としか復活の時期に触れられておらず、そこから正確な時間を割り出すことは不可能でしょう。そんな予言を信じて大切なものを失うより、自分が見て、感じている、今、この時に起きている問題に向き合う事を優先したい。なので、行動が怪しい部族とも向き合ってその真意を見極めたいと思います。もし、予言が現実になるとしても、『大きな光が闇を照らす』という一文の『光』となるように仲間と協力して運命に立ち向かうだけです。」


「どこまで行っても、平行線のままですね。」


そう、お互いに大切なものが同じでも信じる『道』が違うならどこまで行ってもこの話は終わらない。


かといって、ここで引くわけには行かない。


「正しい選択であるとお互い証明できないので、どこまで行っても話し合いは終わらないでしょう。しかし、ファウナに選んでもらうと言ってもファーストさんは納得できないでしょう。なので、条件を変えましょう。私はファウナと仲間とともに、連合の使者として再び他の部族に勧誘を行います。と、同時に『竜』にまつわる伝承を集めましょう。その報告は逐一させて頂きます。もし、邪竜復活の兆候がこちらの『仮面』の謎を解く前に現れたなら、即座にファウナを里にお返しします。それと、連合参加に関してですが、ケンタウロス族には独自の『邪竜』と『偽りの仮面』の捜査権を与えられるか相談しましょう。もし、連合が否決して、ケンタウロス族が危険に陥る可能性があるなら、その時は参加を見送ればいい。ただし、初会合だけでも、参加していただきたいと思います。」


「結局、捜査権の相談だけでは保障にはならないし、実際否決される可能性が大きいでしょう。結果、それはゼロ様の当初の要望を全て飲むと言う事だと思いますが、違いますか?」


「違いませんね。なので、もう一つだけ、条件を加えます。ファウナが私に同行している間、ファウナは私がこの命に掛けて守り抜くことを誓いましょう。」


都合のいいことを言っているのはわかってはいるが、これ以上、私からの条件提示は出来ない。向こうからの条件を飲む事もできない。


暫く沈黙が続く。


「ファウナ。あなたが決めなさい。」


それは母親としての気持ちが族長としての気持ちを上回った瞬間だったのかもしれない。ファーストは非常に穏やかな笑顔でファウナに問いかけた。


ファウナがうなずき、ゆっくりと口を開く。


「私は・・・ゼロ様と。ご主人様とともに歩みたいです。もし、邪竜が復活したなら、仲間とともに立ち向かいます。先人たちから受け継いだ誇りも伝統も大切にしたい。でも、私は『未来』のために『今』を生きたいです。」


「わかりました。」


大きくうなずくファースト。


「聞いた通りです。これよりファウナはゼロ様と邪竜退治に向かいます。ケンタウロス族はこれをサポートするため己の腕を磨き上げ、連合という新たな『力』との共存の道を探す事になります。皆、この先には困難な道もあるでしょう、しかし、次の世代のためにも私たちが前に進みましょう。」


おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!


過去に縛られ、今を諦めていたケンタウロス族はそこにはいない。


未来を掴む為、ケンタウロス族は『今』その一歩を踏み出したのだ。

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