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鬼と竜と策謀。時々ライオン 3

「うん、俺が悪かったから結構な牙で頭を甘噛みするの止めてくれる?」


私はルークにお願いをする。いきなり台詞から入ったので『あれ、途中から読んじゃった?』と、お思いのあなた。ここ『鬼と竜と策謀。時々ライオン 3』の文頭であってますよ。実は今、後から頭をルークにガブリとやられてます。先程置いていかれたのがよほど気に食わなかったらしいく、一応、甘噛みとは言ってはいますが、私の強靭な肉体がなければ頭蓋骨が砕けている程度で噛まれてます。


「ルナ、悪かったな。豪華な寝床と美味しい食事がお預けになってしまって。」


ルナにも謝りを入れておく。


「いえ、わたくしはゼロ様と一緒にいられれば寝床や食事など気にしません。」


うん。可愛いやつめ。これをさっき見た『弥生』の姿で言われたらおじさん死んでもいいかも・・・。痛っ、あれ、ルークさん? さっきより強めに噛み始めてません? ルークさん? あれ? ちょっと? ねぇ? 嫉妬? 痛ああああって、


「いい加減にしろっ!!」


ライオンの首根っこを捕まえて、背負い投げをかます。ルークは床にたたきつけられる直前にすっと体制を整え、ルナの横にちょこんと座る。


「いい加減にするのは貴様の方じゃないのか?」


いやみったらしい声が聞こえた。


「あれだけ啖呵をきっていてこの有様とは・・・。正直、失望しました。」


冷静に侮辱する声も聞こえる。


「・・・。」


一人に至っては何も言わない。


「すまないな。俺も一生懸命やったんだが、力が及ばなくて。」


弥生の部屋で見た3人の若い鬼に対して返答する。


「貴様なんぞに始めから期待しておらなかったからワシは失望などしなかったがな。」


単細胞の若い鬼が言う。


「どうでもいいよ。それより飯を持ってきてくれたんだろ? 早くくれ。」


「なっ・・・まさか、それが目的で牢屋に入りに鬼族の里まで来たんじゃないだろうな。」


「いずれにせよ、貴方たちの処分が数日中には出るでしょう。それまで楽しい余生をお過ごしください。


物騒な連中だ。もう少し優しい言葉をかけることは出来ないのかね?


「では、食事はここに置かせていただきます。」


2人の鬼はそのまま立ち去ろうとするが、黄鬼と呼ばれた鬼は振り返り、


「貴様は何者だ。」


冷たいトーンでつぶやく。


「ガウっ。」


それまで静かだったルークが吼える。その声に黄鬼が怯む。


「ルーク、いい子だ。もう静かにしていいぞ。そうだな何者って聞かれたら、俺はゼロって答えるしかないかな。 で、こちらはルナ。 本名は『弥生』だそうで、鬼族のお姫様。ちなみに今吼えたこいつはルーク。鼻がよく効くルーク君だ。宜しくね。」


「黄鬼、そんなの相手にするな。時間の無駄だ。それより戦の事を真剣に考えねばならんと頭領様が仰っていた。ワシらも気合をいれんとな。」


「ちっ。」


黄鬼はそのまま踵を返す。


それから数日間、代わる代わる屋敷のものが食事を運んできた。やることがないと本当に暇だ。そろそろ脱獄を本気で考えている。すると、また誰かが食事を運んできた。


「頭領様から伝言でございます。これで最後とのことです。」


弥生の部屋に駆け込んできた女中が食事を私達に渡す。


「ガウっ。」


ルークが食事を見て吼える。


「ルーク、いい子だ。食事が気に入らないのはわかったから。これで最後ってあの人も言ってくれてるし、明日には美味しい食事を食べような。」


「残念ながら明日は食事を食べられないと思いますが・・・なにせ処刑の日にちが明日に決まったそうですから。」


「それはそれは、ご丁寧に教えてくれてありがとう。でも、まだ死ぬわけにはいかないんだ。弥生さんを助けるって決めてるから。」


「そうですか。それでは頑張って下さいね。」


嫌味ったらしい言葉を残して女中は去っていく。


さて、これで最後らしいから食事を堪能するつもりだったのに、そうはいかなくなったようだ。バタバタと走り回る足音が聞こえる。


「では、いよいよ。」

「向こうからの書状が届いただとっ?」

「腕がなる。」

「姫は絶対にお助けする。」


思い思いの言葉を発し、自らを鼓舞する鬼族の猛者たち。どうやら竜人族との戦いが現実のものになったようだ。


思ってたより早かったな。これでは時間が間に合うかわからない。でも、約束は守る。


「ルナ、ルーク準備はいいか? わかってると思うけど、ここからは時間との勝負だ。いくぞ。」

「はい。」

「ガウっ。」


私は木で出来た壁を蹴破った。


「牢を破ったぞ。」

「くそっ、こんな時に。」


戦の準備と相まって、屋敷中が混乱に陥る。私たちが向かうのは弥生の部屋。


「よし、まずは第一関門だ。」


私たちが部屋の前にたどり着いた時、そこにはすでに3人の先約がいた。例の黄鬼たちだ。


「この部屋には行かせねえよ。」

「まさか、このタイミングで牢破りとは、竜人族の手下なんじゃないでしょうね?」

「・・・。」


「いや、手先じゃないけど、先を急ぐのでぶっ飛ばしていくわ。怪我しても俺の所為にするなよ。自分の力不足と思って、精進したまえ。」


私は3人に向かって駆け出した。3本のこん棒が振るわれる。私はそれをかわし、2人の腕をとり、空高く庭の池目掛け放り投げた。残りの一人はリバーブロー。黄鬼はそのまま膝をつき悶絶している。やっぱり一撃が決まると気持ちがいい。


「じゃあ、そういうことで。」


私たちは何事もなかったかのように弥生の部屋に入り、


彼女を『誘拐』した。



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