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第18話 「暗影胎動」――死神と子魔族


キャラクター数が多くなってきたのでここで主要人物を4人まとめさせていただきます。


【孤誓隊】

・秋月アクラ

→憧れを殺された東幻出身の少年。殺し屋のゼグレと命を共有する呪いにかかる。魔族との戦いを経て成長するも、無属性が仇となり現在訓練中。


・霧雪ゼグレ

→詩丸を殺した張本人。アクラと命を共有中。妹の保護の代わり隊として全力を尽くすというセラフィナとの契約のため、戦力として君臨。


・セラフィナ

→魔界や魔族の研究をしている。とくに興味がある双呪の研究のため、アクラとゼグレを保護。


・黒刃エペ

→女尊男卑マスター。バリエ帝国出身の黒髪黒目の少女。フェンシングと刹那を愛し、遠い親戚のクレイとはなんとも奇妙な関係。アクラとともに城下街で訓練中。


――ここは魔界。


紅の空。赤黒い大地。淀んだ空気。

ゾラン王国から、はるか遠く――。


「ボルムが死んだ」

――ボルム。ついこの間、ゼグレがとどめをさした魔族のことだ。


真っ白いローブを纏った人影が、低く呟く。

灰色の肌。真紅の瞳。白目は黒く染まり、耳は鋭く尖っている。


「えっ……なにがあったの……?」

もう一方は、黒髪に毛先だけ青が混じる少年のような姿。

犯罪的に美しい白い肌。人の形をしていない耳。真っ青な瞳が無邪気に揺れる。


「わからん。だがヤツが死ぬ前、オレに向けて魔力信号を飛ばしていた」

「ご、ごくり……」

「――双呪を見つけた。と言っていたぜ」


一瞬の静寂。


「おぉ〜!すっごーい!やっとだね!」

「ああ」

黒髪はわかりやすく跳ね、二本の青い触覚をぴくぴくさせる。

「それでそれで? その人たちの名前は〜?」

「……チッ。あの野郎、そこまでは記録できてねぇみたいだ」

「え〜なにそれ〜。でもボルム、僕の名前すら覚えてくれなかったよね」

「やつの頭の悪さが仇となりやがったな……。まぁいい。場所と大体の犯人はわかってる。ゾラン王国の南でやつは死んだ。氷魔術で殺されたらしい。きっとそいつが双呪だ」

「さっすがリッパー!あったまいい〜!」

「……これから忙しくなるぞ。アクロー」

――二人の魔族が、動き出した。





そして場面は切り替わり、城下街。

「す、すっげぇ!!!」

アクラは目を輝かせながら歩く。

人の波。焼き立ての匂い。魔術書店。娯楽店。

すべてが揃っているかのような活気。

人々は皆、前を向き、目に希望を宿している。



「や、やめてください!恥ずかしい……田舎者だと思われたくないですよ我は」

「お、おう!お前の故郷のバリエ帝国もこんな感じなのか?」

「いいえ。建物は綺麗ですが、人々は最悪なので。どこかしらで汚職が行われていて……どんよりした空気です」


「そ、そんな国が隣で大丈夫なのかよ……」

「ええ。だから国境には人工的な谷がつくられてるじゃないですか」

「えっ!? そうなのか!?」

「ゾラン王国とバリエ帝国は仲がとても悪いので」

「そんな国出身で、よく孤誓隊に来れたな……」


アクラの毒によりエペは美麗な顔をしかめ、不機嫌を露わにする。


「我は別の国から志願したんです!一緒にしないでください!」

改めて、己の無知さを思い知るアクラ。

「わ、悪かったって…」

「ふん!」



「それにしても……お腹、すきましたね」

「そうだな……なんか買うか?」

「冗談じゃないです!今お金を使ったら残り一週間はどうするんですか!?」

ぐぅぅぅ……

エペのお腹が勢いよくなり始めた。

「……お前」

「……こほん。まぁ初日ですから。仕方ないですね。ほら、レストラン探しますよ」

「レストランは高いぞ……?」

「おっと……そ、そうでした! じゃあ……お持ち帰り……ですか?」

「……それも高いぞ」

「じゃあ一体どうしろって言うんですか!」

「フツーにそこらの市場で安いパンとか買えばいいんじゃないか?」

「はっ……! た、たしかに……」

黒刃エペ。 金銭感覚が狂っているのは、元々の性格なのかもしれない。



――30分後。

城下街、東の公園にて。


「パンって言ったけど、実はおれあんまり好きじゃないんだ……米が恋しいな……」

黒パンをかじるアクラ。 ぼそりと漏らした本音。


「我は好きですけどね」

バゲットを静かにちぎるエペ。

「そういや……エペはどんな武器を使うんだ?」

「我の名前通り、レイピアのエペですよ。我ら黒刃一族の名は、基本的に剣からもらうんです」

「なるほど……」


「かつて我らの先祖様たちは魔族と戦争を繰り広げていたので、その時から剣に対する熱意が広がったようですよ」

「魔族……? そんな昔から魔族はいたのか? てかそもそも、魔族ってなんなんだ?」


エペはわかりやすくため息をつく。

そして軽蔑と煽りの瞳をアクラへ向け、

「はぁ……? 本当に何も知らないんですね。まぁ、魔族はアクラさんもこの間見たと思いますけど、とにかく凶暴な化け物のことです」


約400年前。 ゾラン王国とバリエ帝国の国交がまだ正常だった頃。

時空の裂け目が発生し、魔界から魔族が大量に侵入した。

当時は、大量の隊員が魔族と正面衝突し、多くの犠牲が出た。


「な、なんでそんなことが……」

「当時の魔界の皇の命令、らしいです」

「皇……? てことは魔界にも文明が!?」

「はい。そして恐ろしいことに――その魔界帝皇は、我々と同じ人類、ヨムロ界人だったそうです」

「……は???」

背筋が、凍る。

なぜ?一体どうして人間が魔界の皇なんかに。


「ヨムロ界人って……この星に住んでる人間だろ? なんで人間が魔界なんかで……」

「ええ……闇が深いですよね」


初代魔界帝皇は完璧な中性的美貌をもち、 圧倒的な賢さと強さも兼ね備えていた。

だが性別すら不明。そして即位した後、何者かに暗殺され現在は明確な王はいない。


……らしい。


静かな風が、公園を抜ける。


「さて! 我らもこんな話をしているだけでは人生のムダ! お金も尽きそうですし、少しでも稼ぎましょう!」

「そ、そんなことできんのか!?」

「当たり前です! 我らは孤誓隊ですよ!? 手当たり次第、人々に伺ってみましょう!働きますよー!!」


――結果。

「ガキがァ! 帰れェーー!!!」

「あらあら、孤誓隊の真似事かしら?」

「生活保護申請所はあっちだぜ兄弟」

――全敗ッ!。


夕方。

「……だめだった」

アクラは地面にへたり込む。

「ど、どうしてでしょうか……我の努力不足でしょうか……」

「だ、だいたいこんなんで金稼げるってアイデアが……!」

「なんですか! 文句ですか!? 自分だって何も出来なかったくせに!」

「……うっ…………」

情けない。

コツ……コツ……。

足音。


「あァ?な、なんでお前らがこんなとこにいるんだァ!?」

顔を上げる。

そこに立っていたのは…。

「げっ!ミスターナルシスト…!」

「その風評被害極まりねェ呼び方どうにかならねェのかなァ!?」

――同期の清水光月。

水色の肩まで垂らしてあるサラサラヘアーを風になびかせながら、黄色い双眸で睨みながらアクラに突っ込む。


その隣。

「おうおうおう!ダチよ!元気そうでなによりだっ!!」

「ひっ…あ、汗臭い男塵がまた一人…!!」

「汗臭い!?ハハハ!こりゃ1本取られたな!」

腹の底から大声で笑う豪快な男・麗羽バロロ。

魔族戦の後遺症である片腕にもかかわらず、いつも通りのうるささで逆に安心する。


「どうしてこんなところにきたんだ?」

アクラが驚きと嬉しさの中間ほどの感情で2人に問う。

「オレは、ま、まぁなんつーか…まぁそういうことだ」

「…あ?」

190センチ後半もある筋肉の塊が赤面する姿に本能的な気持ち悪さを覚えながらも、質問を続ける。

「えーっと、どういうことだ?」

「だ、ダチよ。そこは察してくれよ」

「コイツがガールフレンドと喫茶店に行くらしいからなァ!その店探しだァ!」

「…ほぇ?」


――バロロのガールフレンド?えっ?つまり彼女ってこと?

……あ?


「ば、バカっ!繊細なオレの気持ちを理解しろ!それにオレたちはまだ付き合ってない!」

バロロがわかりやすく焦り、光月に早口で応戦する。

「あっ、お前もしかして、ジャックのこと?」

「え?ジャックちゃんですか?」

エペが即座に反応する。

「…うっ!」

「つ、つまりジャックちゃんと行くための喫茶店を探してるってことですか?」

「その通りだァ!そして恋愛マスターのオレ様はァ!バロロに恋のノウハウを教えてやってんのさァ!!」

光月が自信満々に返答する。目が妙にキラキラしていて正直キモイ。

「い、いやらしい…!」


「ところでお前らはこんなとこでなにしてんだ?」

バロロが本題に入った。

「じ、実はさ…」

アクラは筋肉とナルシストにこれまでの経緯を説明した。属性を見つけなければならないこと。1週間は城下街で生き延びなければならないこと。


――そして沈黙。


「そ、そうだったのかァ?そりゃお前たち…かなり危ないぜェ」

光月の声は低い。

「ツヴァイから聞いた話なんだがよォ…過去にクラグレア先生の訓練を受けて孤誓隊を追放されたヤツが何人もいるんだよォ…」

「え…?ど、どうしてですか?」

エペが胸に手を当てながら聞く。

「"無属性"ってのがまず危ういらしいんだァ。戦場じゃまるで役に立たねェからなァ…」

「ま、待ってください!我は無属性のまま今年で3年目ですが追放なんてされませんでしたよ!」

「でもアンタは決闘で無粋の強さを発揮するだろォ?それが免罪符だったんじゃねェのかァ」

――免罪符。つまり戦場でほとんど活躍できなかったアクラは別。ということを意味する。


「つまりだ。特にアクラァ。お前は1年目だろォ?――マジで、ホントにマジで属性はやく見つけた方がいいぜェ」

◇◇◇


次回:幽灯の双呪


突如現れたバロロと光月に属性発現のヒントをもらうアクラとエペ。

そして今話で新たに登場した2つの影。

アクラは属性を発現することができるのか?

――それとも……。


「九色属性」


◇◇◇

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