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20話


 翌日。

 俺はリリィに連れられるまま、冒険者ギルドにやってきていた。


 扉を開けると、見慣れた光景。

 冒険者たちが依頼の話をしている。受付嬢が笑顔で対応している。


 カウンターに向かうと、受付嬢が顔を上げた。


「こんにちは、リリィさん」


 にっこり笑う。

「こちらに来られるのは珍しいですね」


 そして、俺を見た。


「お隣の方は…鬼塚さん!」


 少し驚いた表情。

「おう」


「色々と大変だったみたいですね…」


 同情するような目。俺は手を振って遮った。


「ああ、いいんだ。元気にやってっから」


 それ以上は聞かれたくねぇ。


「んで、リリィ。ここで何すんだ?」

「冒険者ギルドには訓練施設が併設されてるの」


 リリィが説明する。

「そこで実験しましょ!」


 ポケットから冒険者カードを取り出す。

「受付さん、これあたしの冒険者カードね」


 カウンターに置く。

「剛くんも出して!」

「おう」


 俺もカードを出した。受付嬢がカードを確認する。


「はい、確かに確認いたしました」


 にっこり笑って返す。

「どうぞご利用ください」


 (研究者のリリィさんと、異例の魔力0の鬼塚さん…)

 受付嬢が二人を交互に見る。

 (素敵な出会いがあったんですね)

 微笑ましそうな表情だ。


 俺はリリィのカードをちらりと見た。


「リリィ、お前Cランクじゃねえか」

「うん、ちょっとだけね」


 リリィが軽く答える。

「冒険者やってたのか?」

「研究メインだったから、全然冒険者してなかったんだけどね!」


 明るく笑う。訓練施設に入った。


 広い空間。天井が高い。壁際には武器が並んでいる。

 各々が鍛錬に励んでいた。剣を振るう者。魔法を唱える者。かかし相手に技を繰り出している。


「あれは強化が施されてる人形よ!」

 リリィが指差す。

「魔法や剣の鍛錬にちょうどいいのよ」


 なるほど、だから壊れないのか。

 奥に進むと、少し開けた空間があった。

 そこで二人の冒険者が手合わせをしていた。


 両者とも素早い。剣が交差する音。魔法が飛び交う。炎、氷、風。


「へー、これが魔法使える同士の戦いかー」

 俺は足を止めた。

「迫力あるな」


 なかなか興味深い光景だ。ボーッと眺めていた。


 その時──。


「おい、あいつ勇者パーティ追放された奴じゃね?」

 横から声が聞こえた。


「うわ、ほんとだ。魔力0なんだろ?何しに来たんだよ」

 別の声。


「ガチ無能が勇者パーティ入れるってのがおかしいしな」

「金積んだとか?」


 三人組の冒険者がゲラゲラ笑っていた。

 壁際で腕を組んで、こっちを見ている。


 俺は思わずニヤついた


「はっ、なるほど。そういうことか」

「リリィ、ほんと冴えてるぜ」


「剛くん、あんなの無視で…ってえ!?」

 リリィが慌てた声を上げる。


 俺は既に陰口を放っていた冒険者の前に立ちはだかっていた。


「おい!!!!!!!」

 怒声を浴びせる。顔が数センチの距離。冒険者がビクッと体を震わせた。


「何ボソボソしゃべってんだよ」

 睨みつける。

「よく聞こえねえなあ?」


 一歩前に出る。

「もっぺん言ってみろよ、コラ」


 怯んでた冒険者たちも、すぐに落ち着きを取り戻した。仲間がいるからか。


「はははは!!」

「はぁ?何、雑魚がイキってんだよ」

 鼻で笑う。

 

「お前の噂、みんな知ってんぞ?」

「魔力0の無能らしいじゃねえか」

 指を突きつける。


「場違いなんだよ。死にたくなけりゃ消えとけって〜!」

 ゲラゲラ笑う。


 その瞬間──。


 ドスッ!!


 俺の拳が男のみぞおちにめり込んだ。


「がっ…!」

 男が膝を折る。苦しそうにうずくまった。


「て、てめぇ…!」

 他の二人が声を上げる。

「何しやがんだ、てめぇ!!!」

 武器に手をかける。


 俺は手合わせ用の開けた空間に移動した。


「来いよ」

「どっちが雑魚か、教えてやるよ」

 ニヤリと笑う。


 うずくまっていた冒険者が立ち上がった。


「くそ…」

 顔を上げる。目が血走っている。

「ぶっ殺してやる!」


「おう、いい感じにキレてんじゃねえか」

 ニヤリと笑う。

「さて、俺の能力だとここから多分──」


「ファイアボール!!」


 冒険者Aが叫んだ。手を突き出す。

 ……?

 あれ?

 何も起こらなかった。戸惑っている。


(こうなるわけだ)

 俺は心の中で頷いた。


「はっ、俺のスピードについてこれるか、無能?」


 冒険者Bが走り出した。剣を構えている。

 ……?


(おせえ…)

(身体強化も消えてるな)


 完全に素の動き。


「おらぁ!!」

 バギィッ!


 突っ込んできた勢いのまま、顔面にストレートを叩き込んだ。

 鼻の骨が砕ける感触。


 こいつは終わったな。


 背後から気配を感じた。

 振り向くと──。


 冒険者Cが思い切り槌を振りかぶっていた。

 デカい槌。


(お、おせえ……)

 槌のサイズに筋力が圧倒的に足りてねぇ。

 バランスが崩れてる。隙だらけだ。


 振り下ろす前に、ローキックをぶちかました。

 バキッ!


 男の膝が砕ける音。

「ぐあっ!」

 デカい槌と一緒にぶっ潰れた。


「なんで魔法出ねえんだよ!!!」

 冒険者Aが叫ぶ。

「わああああぁぁ!!」

 パニックになっている。


 なんか……弱いものイジメみたいで気が引けてきたな。

 多分こいつら、ランクも高くはなさそうだ。


「おい」

 肩を掴む。

「謝れ。それで勘弁してやるよ」


「はぁ!?」

 冒険者Aが顔を歪める。

「今なんか魔法打てねえだけだ!」

「まだこっちには強化魔法があんだよ!!」


 みぞおちに一発入れた。


 ドスッ。


「がっ…!」

 冒険者Aがうずくまる。呼吸が止まる。


「謝れ」

 低い声で言った。


「す、すいませんでした……」

 震える声。

「もう勘弁してください……」

 地面に額をこすりつける。


「よし」


 三人とも地面に倒れていた。動かない。

 周りの冒険者たちが固まっている。


 リリィが駆け寄ってきた。


「剛くん!」

 心配そうな顔。

「大丈夫?」


「ああ」

 リリィの言ってた通りだ。


 魔法なしのガチンコ勝負。

 俺の土俵に引きずり込める。


 最高の能力じゃねえか!!


 力が漲る。

 久しぶりに笑えた。


「リリィ」

 振り返る。

「お前のおかげだ」


 リリィがにっこり笑った。

「うん!」


 その時、訓練施設の入口から声がした。


「おい、何があった!」

 ギルドの職員が走ってくる。

「喧嘩か!」


 ヤバい。


「剛くん、逃げるわよ!」

 リリィが俺の手を掴んだ。


 二人で駆け出した。

 訓練施設を飛び出す。ギルドを抜ける。

 街路に出る。


 角を曲がったところで、足を止めた。


「はぁ、はぁ……」

 息を整える。


 リリィは笑っていた。

「やっちゃったわね」


「悪ぃな、巻き込んで」

「ううん」


 リリィが首を振る。

「実験、大成功よ」

 目が輝いている。


「能力の実証、完璧だった」

「そっか」


 俺も笑った。

 久しぶりに、晴れやかな気分だった。

 

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