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赤マロと黄マロ

 光が人の形になっていく。突然の事に驚いたが、この光景少し前に見たことがある。既視感を感じながらその様子を見入っていると、不機嫌そうな顔の美女が現れた。火を司る赤マロと同じように丸い眉毛をしている。髪は金髪で巻いている。体の内部は薄く光っているようだ。


 恐る恐る話しかけてみる。


「あ、あなたは何者ですか??」

「・・・。」


 一瞬俺に反応したが、質問に答えることなく、つまらなさそうな顔をしてムニャムニャ眠り始めた。まったく相手にされていないようだ。


 仕方がないので(はな)(ちょう)(ちん)を指で突いて割ってみる。シャボン玉のようにパチンとはじける。



「んもうっさっきから何なの君?私は眠いの!邪魔しないでよ!」


 ムニャムニャ


 また眠り始めてしまった。どうしたものかとソフィアさんと目を合わす。


「あの・・・私は虹の国の女王の娘のソフィア・スカーレットと申します。この木の中で何が起こっているのか知りませんでしょうか?」


 姫様が話しかけたが、手でシッシと払いのけられてしまった。



 すると俺の体の中から何かがブワっと現れた。赤い髪に丸い眉毛。赤マロだ。その瞬間、今までグータラしていた光人間がシャキッとした。


「久しぶりじゃな。」

「お、お姉さま!なぜここにいるのですか!?」


「ふふふ。よだれを拭いたらどうじゃ?」

「は、はい。」

「童は今この男と一緒におるのじゃ。」

「・・・誰ですか?顔は確かにカッコいいですけど、お姉さまのタイプはもっとこう筋肉がムチムチっとした・・・」

「そうでもないぞ。こやつの中はなかなかのものじゃ。」

「中??ど、どういう関係ですか?ま、まさか2人で、へ、変なことをしているのですか!?」


 ・・・想像力の(たくま)しいことよ。


「ふふふふ。心臓をよく見てみるのじゃ。」


 そう言われた光人間は目をゴシゴシしてから俺の胸を凝視してきた。まるでレントゲンを撮られているようだ。


「・・・ただの心臓が見えます。」

「そうじゃ。ただの心臓じゃ。」

「あ!!」

「気が付いたか?」

「鎖が無い!!」

「ふふふふ。」


「すっごーい!なんで君は鎖が無いの?なになに??」


 近い、距離がとても近い。鼻と鼻がぶつかりそうなレベルだ。先程までとは打って変わって面白いものを見つけた子供のようにはしゃいでいる。


「こやつは面白いオリジナルスキルを持っておるんじゃ。」


 赤マロがそう言ってアイコンタクトをとってきた。マスターカードを出せということなのだろう。


 仕方がないので取り出して見せる。


 赤マロが黄マロを伴ってズズズズっと入って行ってしまったので仕方なく後を追う。








「ここは異世界なのですか!」

「そんなことよりまず自分の心臓を見てみるのじゃ。」

「えええ!無くなってる~!すごいよ~~!!これで巻き戻しされないんだよね!」

「その通りじゃ。」

「うわあああ。初めて見た時から君はやる男だと思ってたよ^^」


 ・・・嘘を吐け、嘘を!すぐ寝たじゃねーか・・・



 するとその時、頭の遥か上空にシュン、シュン、シュンと光が終結し始めた。何が起こっているのか分からずボーっと眺めていると、やがて丸い形に(ふち)どられていく。


「太陽じゃな。」

「太陽!?」

「そうじゃ。こやつは光を司る存在じゃからな。」


 黄マロはエッヘンっと胸を張りドヤ顔をしてくる。光そのものとは確かにすごい。その象徴が太陽というわけか。


 これでハッキリしたのは、この空間に世界ができつつあるということだ。火に光。他にどれだけ要素があるのか分からないがカードの世界がどんどん進化していく。




「君はこの世界の神なの?」

「・・・いや。正直よく分からない。俺はもともとグランネルの人間じゃなくて、地球という異世界からやってきたわけだし。」


 !?


 2人が目を見開き驚いた。しかし、赤マロは考える素振りを見せてから、すぐに納得したような表情を見せた。


「・・・なるほど。異世界からやって来たからそなたは時間の鎖に縛られておらぬというわけか。」

「どういうことですか??」

「グランネルの世界は、ありとあらゆる全てのものがおよそ100年ごとに時間を繰り返しておるのじゃ。童でさえ、最近まで時を繰り返しておることに気付きもしなかった。それゆえ一体何百年前から同じ時を繰り返しておるのか正確なことは分からぬ。」

「・・・・そんなことが本当に!?」

「そうじゃ。じゃがお主と出会いこの世界に来たことで時の呪縛から解放されたのじゃ。」


「君本当にすっごいよ~~~!!」


「それが本当なら、他のみんなもカード化しないとまずいんじゃないか?」

「確かにな。じゃが普通の人間は、時を繰り返しているなどとはもちろん認識していない。そんな話信じるどころか誘拐されたとでも思うじゃろう。それにこの世界はエネルギーに溢れているがまだまだ不完全じゃ。水も木も無ければ地面も無い。家も無い。いっきに何万人もカードにしたところで混乱が生まれるだけじゃろう。」

「だったらどうすれば・・・・」

「グランネルを救いたければ、まず童たち兄弟を仲間にすることじゃな。そしてこの世界を完成させることじゃ。」


「私も協力してあげるよー!お礼にここに住んであげる。てへっ」


「・・・まさかグランネルの将来が俺の肩に乗っかってるのか??」

「そうとも言うな。」


 そんな馬鹿な。俺にそんなことが出来るのか?いくらなんでも荷が重すぎる。


 ・・・世界を救う??まさか・・・


「俺は善人なんかじゃない。ただの高校生だ。グランネルに来たのもたまたまだし、帰る方法を探すために世界を旅すると決めたんだ。話が大きすぎてついていけない。」


「・・・そうじゃな。それでいいんじゃないか別に。」


 まさか肯定されるとは思っていなかったので赤マロの返事に戸惑ってしまう。


「え?」


「この世界で何もしたくなければしなくていいんじゃないか。まあこの呪いが解けた後にこの世界がどうなるのかは知らぬがどうせみんな時を繰り返すんじゃ。今日無惨に死んだ者も、時間が経てばいつか蘇る。」


「・・・しかしそれではまた無惨に死ぬということか・・・」

「そうじゃな、死ぬな。だがそんなことそなたには関係ないんじゃろう?」


「・・・。」


 そうやって言われてしまうと・・・


 !?


 ・・・ちょっと待てよ


「もし今10歳の人間なら・・・時を繰り返したらどうなるんだ?」

「もちろんループした瞬間に生まれた子なら再びループした瞬間に生まれるが、ループして50年後に生まれた子なら50年後に赤子として生まれるじゃろうな。」

「今は新しくループして何年経つんだ?」

「正確ではないが90年ぐらいじゃろうな。」


 !?


「というこはクレアさん、バニラちゃん、リリィは、あとおよそ10年生きてからループして、80年以上経たなければ生まれないということか!それじゃあもう一生会えないじゃないか!!」


「そなたがカードの世界に引き込まなければそうなるな。」


 俺の大切な人だけカードにするか??しかしそれでは・・・・


 俺の大切な人には家族がいる、さらにその家族にはそれぞれ大切な人がいる・・・・



「・・・分かったよ。出来るか分からないけどやってみるよ。どうせ世界中を見て回る予定だったんだ。このカードの世界を完成させるよ。」


「ふふふふ。」


 まるで俺がその答えを導き出すことが分かっていたかのように赤マロが笑う。なんだか居心地が悪い。


「と、とりあえずエルフの国を救います。黄マロ?何か世界樹の木が暴走した理由を知りませんか?」


 すると黄マロがめちゃくちゃ動揺し始めた。


「さ、さ、さあ?私には何も分かんないよ~ペコリ。」


 絶対に何かを知っている。こいつめ!


感想、ブックマークしてくださった方ありがとうございます!温かいお言葉を頂きエネルギーになりました!


ふと、もうすぐ平成が終わるなーと思いました。月日が流れるのは早いですね。


本日は2作同時更新になりました。少し頑張っちゃいました。笑


次回は22日に更新します。よろしくお願いします!

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