豚君
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「アリス、傷の男の家分かるって言ってたよな?」
「うん。」
「案内してくれ!」
「分かった。」
・・・あいつが真犯人だとするとクレアさんは監禁されている可能性が高い。とにかく急がないと危険だ。
人ごみの中を縫うように走り抜ける。
「あそこ!あの建物の3階の部屋だよ。」
アリスが指差したのは小汚いボロボロの建物だった。
急いで階段を駆け上がる。
忍び足でドアまで近づくと耳をそばだてた。中にいるのだろうか?
≪アリス!中に傷の男とクレアさんがいるか見てきてくれないか?≫
≪うん。≫
待つこと数秒アリスからの連絡を待つ。街を歩く人からすれば俺が不審者だと思われるかもしれない。異様に長く感じられた。
≪ツバサ両方ともいないわ。≫
≪いない!?≫
≪うん。ただ部屋一面にクレアさんを描いた絵が飾られているわ。≫
≪!≫
ストーカーということか。それならアイツがクレアさんや俺の動向を知っていても不思議ではない。
早く見つけないとまずいぞ。
≪ツバサ?どうするの?≫
≪クレアさんはどこかで監禁されてる可能性が高い。≫
≪殿!それでしたら私のカードの中にいる豚を使ってはいかがでしょうか?≫
≪ムサシ!豚の体調はもう回復しているのか?≫
≪はい。一晩中カードの中にいたことでようやく元気を取り戻しております。≫
≪それは良かったが・・・ただの豚がどうやって捜索するんだ?≫
≪ニオイを追うんです。≫
≪そんなこと出来るのか?≫
≪街程度なら嗅げない匂いは無いと申しております。≫
≪よし!分かった。任せてみよう。クレアさんのニオイが付いているものがあればいいのか?≫
≪はい。そう申しております。≫
≪了解。じゃあ一回クレアさん家に戻るぞ!≫
二度手間になってしまったが仕方ない。俺はクレアさん家にトンボ帰りをした。
クレアさんのニオイが付いたものって何でもいいのか?
部屋を物色しながら何か良い物が無いか血眼になって探す。
≪ムサシ!服とかでいいのかな?≫
≪おそらくいいと思いますが、一回豚を外に出してみてはいかがでしょうか?≫
≪それもそうか。この部屋ならクレアさんのニオイが染みついてるはずだしな。≫
俺が出てこいと念じると大きな豚が出現した。ついでに眼帯をつけたムサシも出しておいた。両方ともオシャレな雰囲気の部屋に絶妙にマッチしていない。というか豚小屋しか似合わない。・・・本人たちには内緒だ。
「ブヒ、ブヒ、ブヒヒ」
本当にただの豚だ。ブヒブヒ言ってやがる。配下になっているのに喋れないんだろうか?モンスターとただの豚は違うということか・・・・
「豚君、君にはここの部屋の住人を探してもらいたい。この匂いを覚えてくれ!」
俺がクレアさんの上着を豚君の鼻の前に差し出しながらそう言うと、豚君は顔を横に振った。
「ブブヒ」
「何だって??無理なのか??」
≪殿!匂いが弱くて、それでは辿れないと申しております。≫
≪え?そんなこと言われても・・・≫
クンクン。とてもいいニオイがする。あの時嗅いだ甘い甘いメルヘンに誘う芳醇な香りだ。けしからん。クンクン。
≪ツバサ、鼻が豚鼻になってるよ?≫
≪え、はは・・はは。≫
もしかしたら俺がニオイをたどって捜索出来るかもしれない。
「あ、おい豚君どこに行くんだ!勝手に動き回るんじゃない!」
豚君が暴走し始めた。鼻をヒクヒクさせながら勝手に物を物色している。
「おい、そっちは寝室だぞ!」
「ブヒヒイヒ!」
「なんだ?ムサシ通訳してくれ!」
≪はっ・・・・その・・≫
≪どうした?≫
≪いえ、そのベットから殿のニオイがすると申しております。≫
≪な、何をバカなことを言っているんだ!?≫
≪ツバサ・・・≫
≪ま、待てアリス誤解だ。今はそんなことで揉めている場合じゃない。クレアさんの身に危険が及んでいるんだ。≫
≪ふん。≫
恐るべき豚だ。余計なことしやがって、まったく。アリスが不機嫌になっちまったじゃねーか。
≪お、おい、それはダメだ。≫
「ブヒ」
≪これがいいと申しております。≫
「ブヒヒヒ」
≪これならニオイが強くて見失わないと。≫
≪いや、しかしだな、それはクレアさんのパンチーだぞ。ニオイが強いとか言ってんじゃねーよ。それにお前、目がハートになってんじゃねーか!!≫
「ブヒ!」
≪これしか無理だと申しております。≫
ぐむむむ、とんだ変態豚ヤローだ。しかし現状コイツに頼るしかない。
≪分かったよ。それを持っていくから早く探してくれ!ムサシは街中にいるとトラブルになりかねないからカードに戻ってくれ!≫
≪はっ≫
≪行くぞ豚君!≫
「ブヒヒh。」
どうやら驚異的な嗅覚を持っているようだが・・・クレアさんのパンチーを嗅ぐたびに目がハートになっている。
・・・俺も一嗅ぎした・・・・いや、いかん。こんな時にクレアさんを裏切るようなことをしてはダメだ。くそう本能だけで行動できる豚君が羨ましい。
「おい、まだ見つからないのか?」
「ブヒ。」
ただの豚とはいえサイズが大きい。珍しさもあってか人目についてしまう。
フガフガフガ、フゴ
「ブヒ、ブヒ。」
「ここということか?」
豚君が立ち止ったのは女性用下着ショップの店先だった。
「・・・いいだろう。今からお前を豚の丸焼きにしてやろう。」
コイツを信じた俺がバカだった。この一大事にこの野郎。俺は手に魔力を込めた。
「ブヒブヒブヒ」
「あん?」
豚君が必死に何かジェスチャーしている。そして脇にあった階段に行こうとする。
「上ってことか?」
「ブヒ」
危うく豚の丸焼きにするところだった。危ない、危ない。
俺は急いで階段を駆け上がった。どこにでもあるようないたって普通の建物だ。
「どの部屋だ?」
そう言うと豚君は鼻をヒクヒクさせながら一番奥の部屋のドアの前で立ち止まった。
≪アリス、中を確認してくれ!≫
≪ふん。≫
・・・そうだった。機嫌が悪いんだった。仕方ない。こうなったら強行突破だ!
≪みんな下がってろ。ドアをぶっ壊す。≫
ザッ、バシュ、ドゴオォン!
刀で木製のドアを切り刻みタックルをする。
もはや、はやる気持ちを抑えることなど出来なかった。中に敵が潜んでいるかもしれないなどという考えは無かった。
いた!!
手足を縛られベットに寝かされている。体には殴られたような跡がついている。
「クレアさん!しっかりしてください!クレアさん!」
・・・おかしい、返事が無い。
「クレアさん!」
紐をほどき目隠しを取るが反応が無い。ダメだ。意識が無い。
・・・・間に合わなかったのか。おい、目を覚ましてくれ。そんな馬鹿なことがあっていいわけない。
もう一回笑ってくれよ。もう一回ご飯を作ってくれよ。
「ツバサ落ち着いて。呼吸はしているからまだ助かるはずよ。」
胸の動きを確認するとわずかに上下している。生きている。
「クレアさんごめんね。俺がもう少し早く助けられていたら。もう少しクレアさんの事を理解していれば。俺は自分が情けない。こんなにも健気な女性を、犯人の策略通り犯人だと思ってしまった自分が許せない。彼女をこんなにした犯人を許さない。クレアさんここでゆっくり眠っていてくれ。俺が全て終わらしてくるから。」
絶対に許さない。
その時だった。部屋の異変を感じたのか一人の男が血相を変えて入ってきた。傷の男だ。
「お、お前がどうしてここに!?」
「やっぱり盗賊どもの協力者はお前だったんだな。双子を誘拐したどさくさに紛れて監禁か。おまけに罪まで着せるなんて救いようのない奴だな。」
「うるせ~んだよ。お前のせいだろうが!」
「覚悟しろよ。」
「ヒっお、お前こそ調子こいてんじゃねーよ!新人のくせによ。」
手に力を込める。
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そういえば今日ってバレンタインなんですね。いいですね~(棒読み)
一か月前始めた時は、1日で60PVとかだったので感慨深いです。どこまで成長できるか分かりませんがこれからもお付き合いください。




