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チートカードで異世界最強 ~成り上がりほのぼの冒険物語~  作者: ちゅん
第一章 始まりの国篇
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救出する

 ポト。


 赤く立派なトサカが公爵の頭から落ちる。


「コ、コ、コ、コケ、コケ、コケコッコ~!!」

「何鳴いてんだ。まだ朝じゃないぞ。」

「・・・私のトサカが・・・トサカ・・ああああああ」

「どうせまた生えてくるんだろ。言う気になったか?」


 その時、黒ずくめの女が冒険者と兵士達を連れて現れた。どうやらあれから増援を呼びに行ってくれたみたいだ。


「あ、バノンさん!」

「ツバサ君!これは一体どういう状況だ?」

「宿屋の双子を誘拐した黒幕はこいつら鳥人間たちですよ。」

「なに!?」

「盗賊を使って誘拐し、証拠隠滅のために盗賊を皆殺しにしようとしてました。」

「本当なのか!?」

「はい、情報を知りすぎたので俺も殺されそうになりました。返り討ちにして尋問していたところです。」


 その場にいた全員から殺気が放たれる。


「チキン公爵今の話は本当なのか?」

「そんな話デタラメだクズども。早く私を助けろ。これは国際問題だぞ。」


 しかし誰も動こうとしない。


「ふふ、どうやらあんたは誰からも信用されてないみたいだな。他国で好き勝手やってた自分の日ごろの行いを恨むんだな。」



「コケケケケ!ここで私を捕まえたら子供たちは餓死するぞ。」


 ザワザワ。


「今犯人だと自白したな。なぜ双子を誘拐させたんだ?」


「答えるつもりはない。邪魔だ。道を開けろ。」


「おい、このまま逃がすと思うか?」


 そう言うとバノンさんは、チキン公爵の部下に剣を向けた。その表情は本気だ。


「ケケケケ、脅しのつもりか?そんな奴の命などどうでもよいわ。」


「ったく。噂には聞いてたがクソヤローだね。」


 ザスっ!


 バノンさんは容赦なく切り伏せる。


「ふん。それがどうした。使い捨てのコマなぞ補充すれば何の問題も無い。」


 その言葉を聞き、部下の鳥人間たちは何とも言えない表情になった。怒っている奴もいる。だが何も言えないようだ。


「あ~、それもそうですね。ゴミですからね。ゴミは処分しないといけませんよね?公爵様?」

「ぐっ放せ!下民!汚い手で触るんじゃない!」


 バノンさんは、先ほどと同じようにチキン公爵の首筋に剣をあてる。そして(うつむ)いている鳥人間に尋ねる。



「そこの君、答えないと公爵様の首が飛ぶけどどうする?別に俺はそれでもかまわないけど。あ、ちなみに公爵様に回答権は無いからよろしく。」


「ぐっ」


「5」

「4」

「3」

「何をしている!?お前早く答えろ!」

「・・・」

「おい、このクズが!誰が雇い主だと思ってる!」

「・・・」」

「2」

「早くしやがれえぇ!!」


 バノンさんの手に力が入り首から軽く出血し始めた。


「1」

「ラント湖のほとりにある小屋だ!」


「ラント湖の小屋ですか。公爵様に回答権は無かったんですけどね。まあいいですよ。それともしウソだったら丸焼きにして豚の餌にしますから。」


 ・・・この人は怒らしてはいけないようだ。



「バノンさん!案内してください!」

「おお、今すぐ行こう!」

「誰かクロースを王都までお願いします!」

「任しとけ!鳥人間どもの連行も俺達でやっとく。」

「ミストさんありがとう!」


 急いで洞窟を出ると、黒ずくめの女もついてきた。双子に対して思い入れでもあるのだろうか?


「バノンさん、ここからどれぐらいかかりますか?」

「全力で走り続けて1時間てところかな。」

「了解です。急ぎましょう!」










 まったくペースを落とすことなく走り続けた。いつの間にか真っ暗だった空が、わずかに明るくなりつつある。すると大きな湖が見えてきた。周りは木がうっそうと生い茂っている。


「あれだよ!あの小屋!この辺に建ってるのはあれだけだと思う。」


 湖は直径が大きいので、まだ距離がある。正直じれったい。


「ありがとうございます!先に行ってきます!」

「え?」


 スキル:電光石火を連続で発動する。一瞬でバノンさんと黒ずくめの女を置き去りにしてしまった。


「ツバサ君は・・・あんなに早く移動できたのか・・・」 



 そんなつぶやきが聞こえたような気がしたが、もはや能力の隠蔽など頭に無かった。


 

 双子は無事だろうか?


 ドクドク。


 もしかしたら無惨な姿に・・・・心臓の鼓動が早くなる。


 深呼吸をしてから覚悟を決めて小屋のドアを開ける。


 すると無事を祈り続けた2人が、目隠しと(くつわ)をされた状態でイモムシのように横になっていた。手足はヒモで縛られ内出血をしている。


 再び怒りがフツフツと沸いてくる。なぜこんなことが出来るんだ。



 バニラちゃん達は誘拐犯が戻ってきたと思ったらしい。弟のロビンが必死にバニラちゃんの前に出てかばおうとする。


 ・・・・傷跡が圧倒的にロビンの方が多い。勇敢な奴だ。


「俺だよ、ツバサだよ。2人とも助けに来たぞ。」


 その瞬間、彼らの頬を安堵の涙がつたう。声にならない声で泣きはじめた。


 急いで目隠しと轡をとってやった。2人と目を合わせる。


「うううぅ、う、ツバサお兄ちゃん怖かったよぉぉ。」

「ツバサァァ~うあぁぁぁ~」

「もう大丈夫だ。」


 予想外にもロビンの奴も号泣し始めた。緊張の糸が切れたのだろう。生意気だとは言ってもまだ10歳の子どもなのだ。


 2人が落ち着くまで抱きしめてやった。


 遅れてやって来たバノンと黒ずくめの女は何も言わずじっと見守っている。


「一緒に帰ろうか?パパさんとママさんも心配しているよ。」

「うん。早く会いたい。」


 そうしてバノンさんがロビンを、俺がバニラちゃんをおんぶして移動した。2人とも安心したのかすぐにスヤスヤと眠りについた。自分の指をガジガジしている。



 その様子を見てホッとしているとバノンさんが話しかけてきた。何の話だろうか?


「ツバサ君はどうやらただ者じゃないようだね。」


「え?・・いや・・そんなことは・・」


「盗賊の洞窟に1人で入りクロースを救出、チキン公爵一行を返り討ちにし双子を救出。しかも先ほどの高速移動。それに初めて僕たちに会った時、体から木の実を取り出しただろう?」


「・・・たまたまですよ。」


「・・・そうか。」


「あの・・・いつか時が来たらお話します。」


 するとバノンさんはニヤッとした。


「ああ、その時まで待ってるよ。」




 空は完全に白み始めた。今からまた1日が始まる。今日のような濃い1日でも、ボーっとしているだけの1日でも同じ1日だ。国が亡びない限り人々はまた日常を過ごす。たとえ人が死んで悲しんでも人間はご飯を食べずにはいられない。生きるために働かないわけにはいかない。欲望を見たさずにはいられない。人間とはそういう生き物だ。


 ただ今思うのは、双子を助けられて良かったということだ。出会いは偶然だった。皮肉にもチキン公爵があの時あの場所で、バニラちゃんを暴行していなければ俺と関わることは無かったかもしれない。運命とは不思議なものだ。



「もうすぐ王都だぞ!」

「はい!」


 正門が見えてきた。


 バニラちゃんとロビンの両親が立っている。そしてあれは門番のホルンさんだろうか?その他にも捜索に加わった冒険者や兵士が集まっている。


「バニラちゃん、起きて。」

「・・・ん・・ここは・・」

「王都だよ。」

「・・・ママ!!パパ!!」


 バニラちゃんの声にロビンも目を覚ます。地面に下ろしてやると、両親に向かって一直線に走り始めた。その光景を後ろから見守る。


 親子が抱き合うとギャラリーから拍手と歓声が沸いた。


 冒険者も兵士も一晩中寝ずに捜索にあたっていたのだ。もちろんそこに賃金は発生しない。しかしそれに文句を言う奴など1人もいない。みな笑顔だ。


 心が温まる。



 遅れて俺達が近づくと、また割れんばかりの歓声が沸く。パパさん、ママさんからは泣いてお礼を言われ、見物人からは握手を求められる。なんだかとても歯がゆい気分だ。


≪あれ?黒ずくめの女どこ行ったんだ??≫

≪さあ。≫


 いつの間にか消えてしまった。一体何者だったのだろうか??


 突然いなくなったことを不思議に思いながらも、感動の再開を終え、一度ギルドに戻る。ドット疲れが押し寄せてきたので早く眠りたいが仕方ない。


 あくびをしながらギルドの扉を開けるとまたしても祝福を受けた。どうやら少しばかり有名人になってしまったようだ。


 ただ唯一、傷の男が面白くなさそうな顔をしている。そしてしかめっ面のまま近づいてきた。やるつもりなのだろうか。


「おい、色男。お前が盗賊どもを消したのか?」 


「どっちでもいいじゃないですかそんなこと。」


「ふん。ムカつく奴だ。」


「そんなことより・・・そういえばなぜあんたはクレアさんや俺の動向を細かく知っていたんだ?」


「お前に話すつもりはない。」


 そう言うと舌打ちをしながら奥に消えていった。本当に感じの悪い奴だ。




 ふと受付嬢が座っているカウンターに目がいく。


「・・・。」


 №1受付嬢のクレアさんの姿が見当たらない。


「あのクレアさんはまだ見つかっていないのでしょうか?」


 ギルド長のジゼルに確認する。


「ああ、探したがまだ分からない。このままいくと、盗賊に加担し蒸発したと見なされるだろう。」

「・・・そうですか。」

「今日はもう疲れただろう。帰って寝ていいぞ。明日また話を聞かせてくれ。」

「はい、分かりました。それでは失礼します。」


≪アリス、帰ろうか。≫

≪うん。≫



昨日ブックマークと評価してくださった方ありがとうございます!モチベーションになりました。


投稿する前に何度も手直しするんですが、同じ文章を読み過ぎてもはや頭が混乱します。笑


作者的には次回の話が好きかもしれません。

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