ケンお兄ちゃん
「どう……いう、こと?」
皆、一通りそれぞれの驚きを表しているが、その声の持ち主であるおかえさんは、ひときわ驚きが強いように見える。
「あんた……私か?」
「そう。あなたは私で私はあなた」
ん?意味分からんぞ。
「じゃ、じゃあ、えと、つまり……」
「何だっけ、私、この時何を考えてたんだっけ……あ、そうだった。今、あなたの考えている通り、この先、私に生まれ変わったら、私がしたことと同じことをすることになるわ」
おかえさんはその言葉を聞いて、驚いた顔のまま、小さくなるほど、とつぶやいた。
「ちょ、ちょっとまってくれ!」
そしてこれは僕の言葉だ。
「いきなりすぎて僕らも読者も置いてかれているぞ‼説明してくれ‼」
「あ、そうね、ええと……何から話せば……」
「待ってくれ、俺の考えを言わせてくれないか」
「えっ、聖夜、なんかわかったの?」
「ああ。つうか、今の話を聞いて少しわかったような気がする。そもそもおかしかったんだよ。へいじにも父にも言ってなかったが、そもそも修学旅行で東京ってどうなの?って愚痴ってたのは原井先生なんだよ。その時、過去にいければ東京でもいいけど、みたいなことも言っていた」
聖夜は自分の推理を一つずつひも解いて行く。
「さっきおかえが先生を見て、『私か』って言ってたな……平成を知っている……これは、実際に平成にいたことがある……質問しながらでいいか?」
「ええ、どうぞ」
「じゃあいいか?……おかえさん、あんたは平成から江戸時代に来たわけじゃない。それでいいんだな?」
「あ、あぁ、そうだ」
「と、なると……そこらへんの詳しいことは分からないが、とにかくどっかの時代で死んだら、別な時代に行くってことだな?そうだろ」
聖夜のその言葉を聞いて、おかえさんは更に目を大きく開かせる。
「あたりだな、じゃあ後は簡単だ。つまりだな、ケン。今おかえさんは、おかえさんとしてこの江戸時代にいるが、数年後先には平成時代にそこの原井先生に生まれ変わるってことだ」
「じゃ、じゃあ、死なないってことになるの?」
「うおい、お前凄いなケン。俺でさえその発想はなかった。そうさな……確かにそうだ。死んでもどっかの誰かに生まれ変わる、そういうことだな?」
「驚いたな……まさかここまで成長しているとは……流石だよ」
聖夜のその読みは外れていなかったらしく、原井先生も少し目を開かせていた。
「補足するとねー、私は不死鳥とゾンビのハーフでねー。だから、人間じゃないのよー。死にやすいのは、どうせ生き返るからかなー。定めってのはそう言うことだよー」
原井先生が話しているうち、おかえさんの驚きは少しずつほぐれているようだった。
「あの書置きを書いたのは未来の私、つまりあなただったのか」
「そうだよー過去の私。だってそうしないとこなかったし、私があなただった時も、その書置きを見たんだもの」
そこら辺を追っていくとクッソめんどくさくなりそうな話だな。未来と過去の話はどうでもいいよ。
……これで、一応解決したのかな?
「……まだありそう」
「そうだね、零。なーんか話の流れ的にまだありそうだね」
「ふっ、流石漫画家と小説家なだけあるな。で、どうなんだ?まだ話してないこと、あるんだろ?」
「聖夜さんの言う通り、私はまだ話していないことがあるよ。そこの私から見れば、この先の事になる話で、ケン達から見れば、過去の話」
全然解決していませんでした。
「そして、一番最初に謝っときます」
原井先生はそういうと、急に頭を下げた。
……。
………………。
あれ?謝るって言うから、一応なんで謝るのかとか聞かなかったんだけど、何か静かになってしまった。
しかし僕は気付いてしまった。いや、僕らはそれを見てしまった。
頭を下げる原井先生の、すぐ下の土。
次から次へとこぼれていき、土を濡らすそれを。
「ごめんなっ、ごめんなさっい……ごめっんなさいっ……ごめんなさい……っ‼」
……。
「ほんとうにっ、ごめんなさいっ、ごめんなさいっ、ほんとうにほんとうにごめんなさいっ!本当に……本当にごめんなさい……」
僕らはそれをただ静かにじっと眺めていた。
「落ち着いたから、すべてを説明しよう」
すこしたってから、原井先生は言った。
「ケンお兄ちゃん、あぁ、ケンお兄ちゃん。ようやく言えたよ、お兄ちゃんって」
僕にとって、その一言は、十分すぎるほどに、十分な説明となった。
また、会いに――-って作品、ぜひ読んでください。




