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13.escape

 こんにちは、葵枝燕です。

 連載『救いたがりの死神』、第十四話「13.escape」をお送りします。

 前回の投稿が、二〇一八年四月半ばのことなので、約二年ぶりになりますかね。本当に、長い間お待たせいたしました。やっぱり、投稿する勇気が湧かないもので……。今回投稿に踏み切ったのは、昨夜、個人的に嬉しいことがあって、その勢いに任せてみた感じです。

 前回までのあらすじとしては……初めての実践任務を言い渡された新米死神のリオが、ようやく人間界へとやってきて、対象者をさがすためにとある病院内をウロウロしていたら、一匹の大型犬に出逢った——って感じですかね。もう、長いこと書いてなかったから、作者自身が色々忘れてるくらいですよ。

 ちなみに、今話のタイトル“escape”は、“逃げる”とか“逃亡する”とかいう意味です。なぜそのタイトルかというと……それは、本編を読めばわかるはずです。

 それでは、どうぞご覧ください!

「ぎゃあああああっ!!」

 僕は叫びながら走っていた。ここは病院だ、本来ならこんなことができる、いや、(ゆる)される場所じゃない。この世界が初めての僕にだって、そんなことはわかる。もっとも今の僕は、人の目に見える姿になっているわけではないから、そんな僕を注意する人はおろか見える人もいない。それは、都合がいいといえばいいのだが、誰も頼れる人がいないということも意味していた。

「つーいーてーくーるーなーっ!!」

 僕の背後には、金色に輝く毛並みを持った英国生まれの大型犬――ゴールデンレトリバーの姿があった。僕のことを、キラキラとした眼差しで見つめながら追いかけてくる。尻尾を振っているところを見ると、そいつの中では遊び感覚なのかもしれない。

 とはいえ、僕にはその足を止める気は全くなかった。

「頼むから、来ないでくれーっ!!」

 半ば泣きそうになりながら、僕は廊下を駆ける。周りには聞こえていない僕の足音と、その僕を追ってくるゴールデンレトリバーの足音だけが、僕の鼓膜を揺さぶっていた。

 僕は基本的に、動物は好きだと思う。が、それはあくまでその場に実在していなければ、ということに限定される。絵や写真や動画やぬいぐるみ――それらなら、かわいいとか、かっこいいとか、そう思えるのだ。ところが、目の前にいるとなると話は変わってくる。かわいいとか、かっこいいとかの前に、こわいと思ってしまうのだ。そしてそれは、特にイヌという生き物に関して過剰に起こる感情だった。

「そもそも何で見えるんだよーっ!!」

 確かに今の僕は、人の目に見える姿ではない。だとするなら、人ではないイヌが僕を見ることができるのは、有り得ることかもしれない。ただ、人もイヌも同じ哺乳類だとするなら、僕の姿が見えるのはおかしいように思う。それとも、人間よりもそれ以外の生き物の方が、研ぎ澄まされた感覚を持っているのか……? どちらにしろ、なぜ僕が見えるのかという問いの答えになりそうなものはなかった。

「頼むから、ほんとに頼むから、追っかけてくるなよーっ!!」

 そんな僕の叫びが、イヌに届くはずがない。それでも僕は、叫びながら逃げ続けることしかできなかった。

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