日記に書いてみるのはどう?
~深瀬side~
落ち着いた後、話す覚悟ができた俺は吉本さんに向き合った。
「俺が疲れている原因は……………榊原なんだ。」
すると吉本さんはまさかといった顔をした。無理もない。仲が良かった親友が原因なんて思ってもなかっただろう。しかし、吉本さんの返事は俺の予想をはるかに上回った。
「…やっぱりね。」
「…!?や、やっぱりって!?」
「薄々感づいてはいたんだけど。」
そっか、そんなに顔に出ていたのか。
「いや、顔にはあまり出てないけど、なんか、そんな感じがして。でも、詳しくまでは知らないからさ、良かったら教えて?」
「………、実は…」
俺が話そうとしたその時、
ピピピピピ…………
俺の携帯が鳴った。ちくしょう、タイミング悪すぎるだろ。でも、コレを見せたら言葉にしなくても分かってくれるかもしれない。
その前に一度携帯を開き相手を確認する。ああ、やっぱり。
「どうしたの?」
「コレだよ。」
そういって画面を見せたら、吉本さんは今度こそ凍りついていた。だってそこには、
「受信メール60件…………!?」
「ああ、それも、吉本さんが家に来てから今までの数時間だけでな。」
「なんでこんなに…………。」
「分からない。ただ、アイツがおかしくなり始めているのは確かなんだ。」
「本人には言ったの?」
「言ったさ!でも、アイツは『“親友”ならこれくらい当然だよ。』って言うんだ。俺は親友がいたことがないから知らないんだけど、これは普通なのか!?」
「全然普通じゃないよ!榊原くん、深瀬くんに執着し始めてる………。」
「それもみんな分かってる!でもアイツは、榊原は、初めて出来た大切な親友なんだ!だから、傷つけたくない。でも、このままじゃ………。俺は一体どうしたら良いんだよ…………!?」
2人の空間に薄暗い空気が流れる。
無言のまま時間が過ぎ、気まずさに口を開こうとした時、
「……じゃあさ、」
吉本さんが提案をした。
「日記に書いてみるのはどう?」
「……日記?」
「そう。その日起こったこと、主に榊原くんに関係あったことを書いておけば、前にあったことも思い出せるし、万が一のことがあったら……………警察にも………。」
最後はとても言いづらそうなのが分かった。俺だって、警察沙汰にはしたくないし、アイツを犯罪者にしたくもない。
でも、吉本さんの言うことは正しいと思う。書くのは苦手だけど、何もせずに大惨事になるよりはマシだ。
「分かった、これから書いてみる。ただ、そういうノートが今ないからな……買いに行くの付き合ってもらっても良いか?」
「えっ!?う、うん。もちろん!」
?吉本さん顔が赤くなったけど、熱でもあんのか?大丈夫かな。やっぱり止めといた方が………。
「いや、大丈夫だよ!そ、それでいつ行くの?」
「いや、出来たら今からでも。」
「今から!?」
………スゴい食ってかかるな。吉本さんってこんな人だっけ?ま、いっか。
「じゃあ、準備するからちょっと待ってて。」
「うん。分かった!」
それだけ言って、吉本さんはそそくさと家を出た。
「…………さて、」
吉本さんが出て行ったのを確認すると、俺はもう一度携帯を開いた。さっき彼女に見せたのは60件、しかし実際はトータルすると500は軽く超えるだろう。
いつからアイツはああなって行ったんだ?
一体何がアイツを狂わせた?
いくら考えたところで答えは見つからない。
とりあえず今は日記を書いて解決方法を探すのみだ。
一つ深呼吸をして、俺は家を出た。
~吉本side~
やっぱり榊原くんが原因だったんだ。
彼、誰とでもよく話すような明るい人に見えるのに…、
あそこまでウラがあったんだ。
深瀬くんも親友を大切にしたい気持ちは分かるよ。
でも、あのままじゃ、深瀬くんだって……!
それだけはイヤだ。
深瀬くんは守りたい。
…………………あれ、私、いつからここまで意識するようになったんだろう。
ああ、もしかして私、深瀬くんのことが…………