“親友”になるか?
この話は学園ものもどきのホラー詐欺です。
最初は驚くほど怖くありません。
ただ、後半になるにつれ意味が分かってくるかも……。
気長に続きを期待してくださる方はどうぞお進みください。
「日記に書いてみるのはどう?」
友達にそんなアドバイスを受け、書き留めることは苦手な俺だが、さすがに始めてみようと思った。
~深瀬side~
ことの始まりは3ヶ月前。俺に初めて親友ができた。いや、ぼっちだったとかそういうのじゃなくて、今までに友達はいたが、親友と呼べる存在はいなかった。俺は所詮何処にでもいそうな男子校生としてしか認識されず、自分から動くこともなかったので、特に声をかけられることもなかった。
一人を除いては。
「昼一緒に食べてもいい?」
そういって話しかけて来たのは、人の良さそうな顔をした男だった。
「……別に良いけど。」
俺のそっけない返事にもそいつは嫌な顔一つせず真正面に座った。
「僕は榊原って言うんだ。」
「…深瀬、です。」
「アハハ。かしこまらなくても良いよ。まぁ、これから1年間同じクラスだし、よろしく!」
……こういうタイプは苦手だな。一人の方がよっぽど落ち着く。あまり関わらないようにしよう。と、心に誓った。
それなのに。
「あっ、深瀬くーん。次移動教室だよね。一緒に行こうよ。」
「ねえ見て!このタレントあの女優と結婚するんだって!」
「やっば、宿題すんの忘れた!深瀬くん、見せてもらっても良い?」
だあぁぁぁぁあ!!!!
しつこい、しつこすぎる!!!なんでコイツは俺ばっかりに構うんだよ!!あれぐらい気さくなら俺以外にももっと話し相手がいるだろうが!!
そんな俺の訴えも届かず、あいつはずっと俺についてくる。四六時中。あいつの頭ん中はどうなってんだよ。
あまりにもしつこいため、俺は放課後あいつを呼び出し、心の内を全て話した。
「僕がなんでずっと深瀬くんと一緒にいるかって?」
「ああ。正直ウンザリしてるんだ。俺は一人の方が良い。お前はもっと友達がいるんだろう?」
「……まぁね。友達はいるよ。でもみんなあくまで話し相手っていう程度さ。」
その時、こいつの雰囲気が急に変わった。見たことがないような冷たい瞳をしている。
「みんな気さくな僕を見て、誰とでも仲良くなれる明るい人だと思ってるみたいだけどさ、実際は僕も話しかけるのにすごい勇気を使っているんだよ。なのに勘違いするヤツらのせいでさ、明るい榊原くんを演じなきゃならないんだ。」
あぁ、こいつも苦労しているんだ。いやでも待てよ。その前に、
「自分を作っていることは分かった。でも、それで何で俺に構うんだよ。」
「だって深瀬くんさ、僕が話しかけた時、全く態度を変えずに接してくれたじゃん。」
え、それだけ?
「君にはそれだけかもしれないけど、僕にはスゴく嬉しかった。だってみんな人によってコロコロ態度変えるヤツばっかりじゃん。だから、人を選ばないまっすぐな友達が欲しかったんだ。」
な、なんか真正面から言われると照れるな…。まぁ、俺もコイツとなら……
「じゃあ、“親友”になるか?」
「えっ、良いの?」
「嫌か?」
「ううん、スゴく嬉しい!!」
こうして、俺たちは親友になった。
~榊原side~
僕は人間が嫌いだ。
ハハ、何言っちゃってんだろ。僕も人間なのにな。
でもまぁ、本当に人間は醜いから嫌いだ。
愛よりも金をとる。
自らの利益のために他人を蹴落とす。
どいつもこいつも自分を中心に世界が回っていると勘違いするキチガイさんばっかり。
あーあ、僕がこの世に生きる意味があるんだろうか。
親だって僕を置いて出て行っちゃったし。
もうすぐ入学するけど、希望がなかったら本当にみんな終わらせちゃおう。
そう思ってたけど、
やっと、見つけた。
僕が心から望んでいた「希望の光」が。