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異世界で暗殺された最強賢者、現代日本で病死寸前のおじさんに転生する〜莫大な資産と最強魔法で現代でも異世界でも無双します~  作者: 天音天成
現代日本編・第3章:オカルト・現代異能編

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43/82

第43話:逃げ場なし。大賢者の正体を暴く「決定的な証拠」

呪術界の暗躍を完全に鎮圧し、日本の裏社会を名実ともに平定してから数日後。

俺が裏で手を引いているとは誰も知らない社内では、御門グループの買収事業が軌道に乗り、平和で活気ある日常が戻っていた。


その日の夜。フロアには、残業をこなす俺と結衣の二人だけが残されていた。

窓の外には、東京の冷たい夜景が広がっている。俺はPCの画面から目を離し、結衣が淹れてくれた温かいコーヒーを一口飲んで、ふと息をついた。


「いやぁ、最近の新入社員たちは本当にエネルギッシュですね。休日もジムで体を鍛えたり、資格の勉強で自己研鑽に励んだりと、本当に頭が下がります。……俺が彼らと同じ若手だった頃なんて、休みの日はただ泥のように眠るか、テレビで野球中継を見ながら安い発泡酒を飲んでゴロゴロするのが至福の時でしたよ」


俺が何気なく、若者たちを俯瞰するような「ベテラン目線」の感想をこぼした、その時だった。


「…………宗くん」


カチャリ、と。結衣がマウスを操作する手を止め、真剣な表情でPCの電源を落とした。

そして、ゆっくりと立ち上がり、俺のデスクの正面へと歩み寄ってきた。


「はい? どうしました、結衣先輩。どこかデータの不備でも――」

「私、あの日……宗くんが、夜の公園で私を守ってくれたあの日から、ずっと考えてたんです。……冴島さん(おじさん)のこと」

「叔父のこと、ですか?」


心臓の奥で、嫌な音が鳴った。

結衣はデスク越しに俺の目を真っ直ぐに見据え、静かな、しかし一切の揺らぎもない確信に満ちた声で言った。


「冴島さん、昔、給湯室で私にポツリと言ってたんです。『俺は天涯孤独でね。両親は早くに亡くなり、兄弟もいない。親戚付き合いも全くないんだ。だから、会社くらいしか俺の居場所がないんだよ』って」

「……っ!」


「私、念のために……プライバシーを侵害して失礼だとは思ったんですけど、人事部のデータベースにアクセスして、少しだけ調べちゃったんです。……冴島宗一さんは、間違いなく『一人っ子』でした。ご両親の欄は他界されていて、ご兄弟の欄も空欄でした」


結衣が一歩、俺のデスクの横へと回り込んで近づいてくる。

大賢者の魔法で国家のネットワークにハッキングし、戸籍上は完璧に「甥っ子の冴島宗」が存在するように電子データを書き換え、偽装したつもりだった。

だが、彼女はそんな表層的なデータよりも、かつておじさんが不意にこぼした『身の上話』の記憶を深く信じ、そこから生じる絶対的な矛盾を突いてきたのだ。


「兄弟がいないなら、甥っ子なんて、絶対に存在するはずがないんです。……それに」


結衣は俺の目の前まで来ると、俺のスーツのネクタイをキュッと両手で掴み、逃がさないように見上げてきた。


「休日のショッピングの時に見せた、服の素材や縫製の耐久性にばかりこだわる、若者らしからぬベテランのような目線。健康診断の時に、まるで自分のお父さんのように、私の睡眠時間や食生活にまで真剣に踏み込んできた過保護なお説教。新橋の赤提灯で、誰よりも自然に熱燗を啜っていた、あの背中に漂う大人の哀愁。カラオケで歌い上げた、人生の酸いも甘いも噛み分けたような重厚なジャズ・バラード。……どれも、二十六歳のエリート帰国子女の姿じゃなかった」

「結衣、先輩……」


「そして何より……私がセクハラ上司に絡まれた時、そして夜の公園で危険が迫った時……真っ先に私の前に立って、絶対に私を守ってくれた、あの優しくて、大きくて、不器用な背中」


結衣の大きな瞳から、ポロリと大粒の涙が零れ落ちた。

それは恐怖や混乱からくるものではない。ずっと探していた愛しい人の真実にたどり着いた、純粋で熱い涙だった。


「宗くん……ううん。あなた、本当は……『冴島さん』なんでしょ?」


逃げ場のない、真っ直ぐな問い詰め。

どんな強大な結界を張り巡らせても、どんな高度な情報操作の魔法を使っても、彼女のこの真っ直ぐな瞳を誤魔化すことは、今の俺には絶対にできそうになかった。


「なぜ、そんな姿になったのかはわからない。どんな手品や魔法を使ったのかもわからない。でも、私にはわかる。あなたが……私をいつも助けてくれた、あの不器用で優しい冴島さんだってこと」


(……完敗だな。何百年と生きた大賢者の知略も魔法も、恋する乙女の直感と深い想いの前には、全く勝てないというわけか)


俺は小さく、しかしどこかホッとしたようなため息をつき、そして――結衣の頬を伝う涙を、指先で優しく拭った。


「……気づくのが遅いですよ、結衣くん」


俺が二十六歳の「宗」の敬語ではなく、「おじさんの冴島宗一」としての穏やかな口調と優しい声でそう微笑むと、結衣は張り詰めていた糸が切れたように顔をくしゃくしゃにして、俺の胸に強く飛び込んできた。

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