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引きこもり令嬢と呼ばれていますが、自由を謳歌しています  作者: 燈華


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116/116

モーガン家の庭のスケッチ中の休憩

ヴィヴィアンのいるテーブルのほうに歩いていく。

すぐに気づいたヴィヴィアンが顔を上げる。


「クラウディア、休憩ね?」

「ええ」

「ならわたくしも休憩するわ」


ヴィヴィアンの手元を見ればどうやら刺繍をしていたようだ。


「クラウディア、座って」

「ええ」


本来ならヴィヴィアンの向かいの席が正しい位置だ。

だけどヴィヴィアンの斜め向かいの椅子が引かれた。

よりヴィヴィアンに近い席だ。


クラウディアは大人しくその椅子に座った。

すぐにお茶とお菓子が饗される。


「ありがとう」


侍女は少しだけ口許を綻ばせてヴィヴィアンの後ろに控えた。


「どうぞ」


ヴィヴィアンに促されてクラウディアはお茶で喉を潤す。


「そのクッキーはうちの料理人の力作よ。食べてあげて」

「まあ」


声を上げたクラウディアは早速クッキーを摘まみかけて、素早くキティに濡れた布を渡された。


「ありがとう、キティ。忘れていたわ」

「いえ」


キティはヴィヴィアンに頭を下げる。


「気が利く侍女ね」

「ありがとう」


ヴィヴィアンが褒めてくれてクラウディアも嬉しい。

そっとキティがクラウディアの手から濡れた布を回収していく。


改めてクラウディアはクッキーを摘まんで齧った。

さくっとした歯触りと口の中に広がる小麦とイチゴジャムの味。

素朴になりそうなところを上品にまとめている。


「美味しいわ」

「ふふ、口に合ったようでよかったわ」

「本当に美味しいわ。美味しかったと伝えてくれる?」

「ええ、もちろんいいわ。きっと喜ぶでしょう」


客人から褒めの言葉をもらうのは使用人としては栄誉なことなのだそうだ。

もちろん主人一家から褒められることも。


だからクラウディアは自家他家問わずそういうことは言葉を惜しまないようにしている。

その家の者にもできるだけ伝えることにしている。


「ありがとう」


もう一枚クッキーを摘まんで食べて紅茶を飲む。

この紅茶もクッキーによく合う。


「紅茶もクッキーも本当に美味しいわ」

「わたくしもそう思うわ」


その言葉が厨房に伝わればさぞかし喜ぶだろう。

現にお茶を淹れた侍女がほんの少しだけ口角を上げていた。

ヴィヴィアンの後ろにいるのでヴィヴィアンは気づいていなそうだが。

クラウディアも指摘するつもりはない。


「よかったらお土産に持って帰る?」

「いいの?」

「もちろんよ」

「じゃあ、お願い」

「帰るまでに用意させるわね」

「ありがとう」


ヴィヴィアンが侍女の一人に視線を向けると、意を汲んだ侍女が離れていく。

それからしばらくはたわいもないことを話しながらお茶を楽しんだ。






一息ついたところでヴィヴィアンが口を開いた。


「クラウディア、よかったら絵を見せてくれる?」

「色はついていないわよ?」

「それでも構わないわ」

「ならいいわ。キティ」

「はい」


キティに預けていたスケッチブックを受け取り、ヴィヴィアンに渡す。


「ありがとう。侍女たちも一緒に見てもいいかしら?」


クラウディアはきょとんとする。

何故わざわざ許可を取るのだろう?

内心で首を傾げながら告げる。


「別に構わないわ」

「ありがとう」

「「「ありがとうございます」」」


ヴィヴィアンに次いで礼を言った侍女たちがヴィヴィアンの背後に回る。

ヴィヴィアンがスケッチブックを開いた。


クラウディアはキティを振り向く。


「キティは疲れていないかしら?」

「大丈夫です」

「そう? 疲れたら遠慮なく言ってちょうだい」

「ありがとうございます」


ここは他家だから強くは言えない。

帰ったらキティにはしっかりと休んでもらおう。

頭の片隅にメモをしてクラウディアは紅茶をゆっくりと飲んだ。


読んでいただき、ありがとうございました。


誤字報告をありがとうございます。訂正してあります。

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