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11話 夜も更けて

復活の地の文ちゃん。

あ、地の文は女の子なんです。(強調


章立てを1章から序章に変更。


以上。


 ――太陽は既に沈み、暗くなった夜空が広がっている。

 星々は、さあ、我が夜の始まりだ。そう宣言するかのように小さな煌めきを放ち始めていた。



 アンティーク平野。

 帝国・・の中部西域(※1)に位置するアンティーク平野は――大河とは言えないが――豊かな水量を誇るヌル川を抱いた湿潤な土地だ。その緑豊かな平野を流れるヌル川の川沿い、小さな丘に張り付くようにオネットの街は造られており。

 丘から少し離れた川辺には、ヌル川の水運を使って発達した河港や倉庫などの施設が点在しているが、その他の大部分の土地は畑で、青々と繁った野菜畑が農村然とした様相を呈していた。

 一方丘には、領主の館や教会に礼拝堂、居住区に城壁、商業区などが、石、木、煉瓦、干し煉瓦などなど様々な建材で建てられている。

 斜面を削って階段のように建物を建てたそのシルエットは、丘自体があたかも巨大な建造物のように、人工的な影形かげかたちを与えていた。


 

 ――中天の夜空には三日月が一つ穏やかな月光を放ち、目下の瑞々しくも優美なる大地を優しく包んでいる。

 それは言うまでもなく川と街にも降り注いでいて、川は鏡のように光を跳ね返しながら地平線まで流れ。街は幾百もの屋根や石壁が各々わずかに光を跳ね返すことで、ぼんやりと光って見える。



 どうやらこの世界には月は一つしか無いらしい。

 それは〝もし、一つの惑星に一つの衛星が付いているなら、その惑星から見える月は一つである〟という普遍的な法則に則っているのだろう。


 もっとも、かつて〝それ〟に気付いたであろう異世界人も――自分の世界の月と同じであったので――特に気にすることはなかったのだけれど……。


 仮に気に止めたとしても。むしろ、

「月が二つとか三つなどあって混乱するよりはよっぽど良いに決まっている」などと、そう解釈することに落ち着いて、それ以上追求する者も稀であった。



 ――ところが街を照らすのは月光だけではなかった。



 既に幾らかの民家はあしたのつとめが有るのだろう。明かりを消して寝静まっている。

 その他の家々では、丁度、寝る前の家族の団らんが行われているのかも知れない。蝋燭の節約のためか。数ある窓のうち、唯一部屋分のみ明かりを灯している。きっとこれらも、暫くすれば徐々に窓から光が消えてゆくことになるのだろう。





 あれは……?


 あれは、宿屋だろうか? それとも酒場だろうか?


 多階建ての建物の一階から漏れるあかりの光が、酔客達の気持ち良さそうな声とともに、建物が面した表の通りを明るく染め抜いている。


 まるで暖炉のようにオレンジ色に輝くその戸口を覗くと。


 宿屋の泊まり客、あるいは冒険者、あるいは放浪の旅人。その誰もが歌い、踊っていた。

 泊まり客の吟遊詩人バードのリュートが奏でる調べにのせて。酒に祈り、赤ら顔で、今宵一時ひとときの出逢いを、喜びを、おのが踊りで表現していたのだ。





 食い散らかされ。既にテーブルの上には食器類が乱雑に積まれており、食客よっぱらいたちは邪魔な机をどけて広くなった食堂で酒の入ったジョッキを片手に、好き勝手に楽しんでいた。


 どんちゃん騒ぎの中、食器を片付けろと怒鳴りつけていた店主は、必ずや翌朝、酔いどれどもを食器洗いの刑に処す次第。とカウンターで喉を潤していた吟遊詩人に愚痴をこぼす。


 吟遊詩人もまた自らの顔を、机の上のジョッキで赤く染め。いつまでも続くと知れない彼らの、その歓喜の踊りを横目に見ていた。

 そして何を思ったか。ニヤリと笑い、次にうたう詩を頭の中から引き出してきたのだろう、再びリュートを奏で始め、先程までよりもどこか飄々とした声で吟った



 選ぶのならば 酒場で踊っていたい

 ああ!

 酒と楽の音と恋人と その他には何もいらない!

 さあ 手にはさかづきと肩には酒瓶をって

 酒を飲むがいい

 詰まらないことは 言うものではない

 歌うのだ! 踊るのだ! 旨い酒が飲みたいなら

 そして 夜の星々に 友を見るなら

 『今生の別れ、今ここにあり。』

 酒とオル 神とオルメ 音楽とトル 踊りとトルレ 

 この古傷亭に祈りをささげるんだ!

 楽しもう! 何をくよくよ?

 さあ 君は酒を飲め 琴の調べにのせて!

 酒を飲め それこそ永遠の命!

 楽しめ 一瞬ひとときを! それこそ真の人生だ!



 暖炉の炎が、燭台の火が、そして魔灯のともしびが、酒場から聴こえてくるシュプレヒコールの声とともに異世界の夜の街を照らしている。世は無情、しかれど夜の場は長く、人の情も熱く……。





『オル オルメ トル トルレ この古傷亭の皿を洗うんだ!!』






 ――そんな、夕食時も終わり夜も更けた頃。



(サキちゃん可愛い! 手を取って胸ぎゅ~ってしてそこからニッコリ笑顔で一生添い遂げるよって

 ~~~~キャー!

 マジ可愛い! ていうか天使! あ、そういえば私が世界に降ろしたんだから本当に天使ちゃんじゃない! もう~マイ天使ちゃんだなんて……

ぐふふ、これもう翼生やしちゃって良いよね? 加護弄ってチョイチョイって、良いんじゃない? チョ~ット周り巻き込んじゃうけど、まぁこの教会だけだしやっちゃう? あ。異論は無しね、やるよ?)


「って、うわあぁっ!? それはダメでしょ!」

「……ッ!?」

(え。 なんか言った――?)

「お願いだからそれは駄目っ!」

 ビクゥッ!?


 私が突然声を上げて慌てだしたことに驚いたのか、サーちゃんは肩を引き攣らせる。そして如何どうしたのかと恐る恐る私の顔の表情を窺おうと覗いたところで、私が怒鳴っちゃったもんだから、サーちゃんからすれば追い打ちになるわけで……ビックリして固まっちゃったよ。あーやっちった。


(むー、なんで止めるのよ……)


 よ、良かったー……女神様はなんとか止まってくれたようだ。

 女神様が頬をぷくーって膨らませてブーブー言ってるイメージが頭に送られて来ている気がしなくもないが、今はそんなこと――突っ込みたいけど――言ってられない。


 まったく。だいたい女神様あなた、召喚に介入したときに力使い果たして、疲れたー、もう動けないー、とかボヤいてたじゃないのよ。


(うっ……それはぁ、だって疲れてたんだもん……)


 疲れてたんだもん。もん、て……。


 ええい、そんなことで女神様がボヤくなぁ! 

 なによこれ? 急に子供っぽくなったし、いつもの三割増しで可愛いわよ……。自己紹介の唐突な振りといい情緒不安定といい、今日本当に大丈夫なのかしら、この女神ひと


(うぅ……なんかすいません……)


 あれれ、萎れた? そして突然の謝罪!? 

 い、今のは何に対しての「すいません」なの? いや、唐突すぎてむしろ不安になるんだけど!?






 ――どうやら今宵の教会の夜は少しばかり長くなりそうである。このあと復活した女神と流浪の司祭、二人の無言の口論は今しばらく続く。


 勿論、夜はどんどん更けていくのだが、何、気にすることはない。

 幸いにして女神の力が満ちるこの世界には、笑う禍禍しい月もいないし、夜に限って悪さをする悪魔もいない。

 人も獣も魚も魔物も、そして龍も。誰もが思い思いに過ごせる静かな夜なのであるのだから……。







 はぁ。いったい貴女方はいつまで続けるつもりですか……。

 あぁ、ほらそこ、反論したらますます終らなくなってしまいますよ。それに、()()()()の目がどんどん半目になってるんだけど……、これもう私帰ろうかな? うん、そうしとこ。残業反対だし。寝よ寝よ。しーらないっと。



以下、あとがき


【重要】次話の後半から主人公視点に戻ります。


(※1)

とある理由で、帝国の北は低緯度、南が高緯度です。

つまり。

北に行けば温かく。

南に行けば寒くなります。

オネットは帝国の中部のうち西部に位置します。(中部西域)


そのうち地図とか地理について何処かに載せます。


――――――――――

以下、小話


【女神様のお願い(百合)】


ユーカ「もっと出番を~ぉ~」

ふーね「何変なポーズしてるんですか」

ユーカ「お、良いところに。もっと出番ちょーだい」

ふーね「え?無いですよ」

ユーカ「あ"?」

ふーね「ヒッ、当分無いんですよ、出番」

ユーカ「そうなの……?」

「そうです」「そうなの……」

ふーね「そんな出番欲しそうな顔してもありません」

ユーカ「」


(はぁ(ふぅ……))


ふ「」

ユ「」

「…………」

「…………チラッ」

「……ピクッ」

「…………チラッチラッ」

「……ピピクッ」

「……」

「……チラぁ――」

ふーね「もぉー、しょうがにゃいにゃー……」

ユーカ「ぶッふぉっ!!」

ふーね「な、ななっ……!?」


(あっははははっ(~~~~~‼






「……ありがとねぇ」



「~~うん」

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