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10.エピローグ

 鳴りやまぬ拍手の中、仲間たちが一礼している。そして段々とブラックアウトし、動画が終わった。新菜は一人、ふうっと息をついてイヤホンを外すと、カタンカタンという音とともに心地よい揺れを感じた。

 仲間たちが打ち上げをするなか、「帰りの電車で観たいだろ?」と、今日の午前中に撮った演劇の映像を、響也が超特急で編集してくれたのだ。この短時間で観客の拍手の効果音まで付けてしまうなんてさすがだ。すごい仲間たちを持ったなぁと、つくづく思う。卒公の作品をもう一度やりたいと言ったとき、特に誠はどんな反応をするか心配だったけど、皆快く了承し、そして楽しんでやってくれた。本当に、最高の時間だった。

 車窓の景色を覗くと、夕暮れが怖いくらい赤くきれいだった。先ほどまでいた街が遠ざかっていく。この足で新菜は、実家に向かうことになっている。母親には連絡しているが、正直不安でいっぱいだった。仕事も探さないといけないし、もし父親から門前払いを食らってしまったら、住む所も探さないといけない。結局、まだ何者にもなれていない私は、これからどうなっていくのだろう…。

 車内のアナウンスで、次の到着駅が伝えられる。新菜はこのローカル線の終点で降りることになっている。あとどれくらいで着くのか時間を確認するためにスマホを手に取りボタンを押す。

「——っ」

 画面にはリビングではしゃぐ仲間たち。今日打ち上げで撮った集合写真を、待ち受け画面に設定していたのだ。後列で顔を真っ赤にして満面の笑みを見せる好宗。その好宗に肩を抱かれ笑う誠と、迷惑そうな顔をしている響也。前列には顔を寄せ合い無邪気な笑顔でポーズを決める千帆、灯里、そして新菜——。

 温かさが不意にこみ上げてくる。自分は決して一人じゃない。例えどんなに離れていても、二度と会えなくても、この仲間たちがいる。その存在があるだけで、私はどこへだって行ける。生きていける。

 スマホを胸に当て、また車窓を覗くと、夕暮れは先ほどとは違って見えた気がした。

「ありがとう」

 そう呟いて、新菜は目を閉じる。

 夕暮れに染まる街を、カタンカタンと音を鳴らして、電車が駆け抜けていった。


 END

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