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「この前は悪かった」
「え、自由に言わせてもらったのはこっちなんだから謝らなければならないのはこっちじゃない?」
ということでチャンスを貰えたので謝っておいた。
お互いになにも言わないまま数分が経過した頃に「そろそろやめたら?」と歩ちゃんから冷静な意見が出て終了した。
「それより泉!」
「うん」
これは覚悟していたことだ、逃げることはせずに受け止めよう。
「なんで儀間先輩と付き合い始めたことを私には直接教えてくれなかったの!」
「あ、そっち? 私は矢後君と会っていることに文句を言われることになると思っていたけど」
「そんなの友達なんだから普通じゃん、だけど友達なのに泉はちゃんとしてくれなかった!」
「ごめんね」
本当のことでも彼女からすれば言い訳にしか聞こえないだろうから本当は誘っていた云々のことは言わないでおいた。
「私が言いたいのはそれだけだからそんなに不安そうな顔をしなくていいよ」
「そんな顔をしていたの?」
「うん、あと後ろにいる儀間先輩の手を強く握っていたよね」
ぜ、全部分かられていて恥ずかしい。
「そもそもこの件は達男君が悪いからね」
「確かにな、だから詫びとしてなにか奢る、つまりなにか食べにいこうぜ?」
「はは、たまにはいいのかもね」
「おう――あ、先輩は自分で出してくださいね」
「元々奢ってもらうつもりはないよ」
あ、やっと喋った。
手を握っていなければ離れられても気づかなかったと思う。
二人が歩き出したので私達も歩き始めたら「矢後君は大人だね」と言われて頷いた。
「でも、泉にとって本当に怖いのは妹尾さんだということが意外かな」
「おまけでもまだまだ一緒にいたいからだよ」
「じゃあ矢後君は違うの?」
うーん、どう答えたらいいのか。
少なくともどうでもいい存在ではないのは確かだ、だけどここでまた馬鹿正直に答えてしまったら同じ失敗を重ねることになりそうなので不安だった。
「おい、そこはちゃんと俺のときも同じように答えてくれよ」
「はははっ、達男君泉に嫌われているんじゃないのっ?」
「まじかよ諏訪……」
「嫌いじゃないよ? それにもう歩ちゃんも知っているだろうけど私は言ったよね?」
うん、結局こうなっているなら先程止めたのは意味がなくなってしまうね。
「そのときにちゃんと頑張っていたら私は泉に負けてたなー」
「ま、あの頃から歩のことを好きだったわけじゃないからな、動いてくれていたらなにかが変わっていたかもしれないな」
矢後君は嘘つきだ、だけどやっぱりここでも優しさを見せてくれた。
彼女がいる身として彼女目線で考えたら失敗ではあるものの、「だからないって」と答えることもできたのにしなかったからだ。
「もういいよその話は、矢後君は妹尾さんの彼氏なんだからね」
「あー妬いているんですか?」
「そうだよ?」
「うっ、儀間先輩ってすごいなー……」
「そうかな? あと、僕は泉と少し話したいことがあるから先にいっててよ」
なんかこうして別行動をしてしまえばこのままでもいいかなと思えてしまう。
私にとってもこれは好都合だった、注意とかをされるのだとしてもありがたい。
「泉、矢後君は本当に意識したことがないって言っていたの? さっきの感じだとなんかありそうだったけど……」
「あれ、いまのはもう終わりなんじゃなかったの?」
というか、なんでこんなに不安そうな顔をしているのか、先程までの余裕な感じはどこにいったの? と聞きたくなる。
「だって矢後君の顔がさ……」
「もういいよ、あとこのまま別行動をしない?」
「いや、怒られてしまうんじゃないかな――あ、泉っ?」
もちろん、連絡もなしにそんなことをしたら今度こそ切られるからそこはちゃんとしておいた。
歩ちゃんにしたけど特に引き止めもしてこなかったから違う方向に歩いていく。
「今日は満明が作ったご飯が食べたいの」
「えぇ」
「はは、私は言ったでしょ? ちゃっかりしているって」
「ま、まあ、最近は外で食べることも増えてお金を結構使ってしまっていたからこの方がいいか」
とはいえ、ごろごろするわけにもいかないので結局二人で作って食べた。
出しゃばらないようにしたから私は初めて満明味のご飯を食べられたことになる。
「美味しかったよ」
「それならよかった」
「あとはこれだね」
「……なんで毎回後ろからなのかは分からないけど泉がしたいならいいよ」
なんでかは顔を見られたくないからでしかない、あとこのときの顔を見たら不味いことになりそうだったからだ。
「付いてきてくれてありがとう」
「うん」
「あと、付き合ってくれてありがとう」
「はは、うん」
同じような意味なのに彼氏彼女の場合は全く変わってくるところが面白い。
「それだけ」
「分かった」
あれからは弱体化してしまって目を見ながらありがとうも言いづらくなってしまったからなのもある。
「さて、まだまだ時間があるからゆっくりしようか」
「うん、ずっと離さないから」
「それなら僕は好きな泉とずっと一緒にいられるからいいね」
「なにそれ」
「でも、事実だからね」
正面からでなくても結局こうなるらしい。
恋というのは色々と学べるものだとこの件で知ったのだった。




