ーバッドエンドー
俺は世界を滅ぼした怪物の一体《憤怒》を殺した。
右腕を失い、頼みの綱の武器も砕け、立つのもやっとだ。
一体目でこのザマ。
残りは六体。無理なのは分かっている。
しかも、殺す相手は怪物だけじゃない。
「どうした? 《教皇》殺しの佐月くんよぉ」
全身の悪趣味なタトゥーが目立つ男が瓦礫の山から見下ろしてきた。
それと共に黒装束で顔を隠した五人が表れ、俺を嘲笑う。
新魔教団。怪物を崇める狂信者どもだ。
「まさか人類の希望が独りぼっちな訳ないですよねぇ。そんな怖い顔せず笑ってくださいよー」
不気味な笑顔の仮面をつけた男がうざったい動作と共に煽ってくる。
「人体損傷率88パーセント。貴方の勝機はゼロです」
手足が刃物の機械女が抑揚のない声で俺を分析してくる。
怪物に殺されるのならまだしも、こんなカスどもに殺されてはあの世で仲間に顔向けできない。
「できるできないじゃない。やるんだよ!」
俺は最後の力を振り絞り使い戦った。
――――――
「はあ。はあ」
何とか勝ったが崩れ落ちてしまった。
まだまだ戦わないといけないのに。
怪物もそれを信奉する奴らもまだまだ生きている。
大事な人は全員死んだ。家族も友達も、そして何よりも大事な仲間たちも。
すべてすべて、あいつらに殺された。
もう、世界なんてどうでもいい。
――死んだ仲間のため。
それだけが俺を突き動かす。
立ち上がろうと身を捩り、残っている腕を地面につけた。
その瞬間。
目の前に何者かが出現した。
何者か分からないが、とにかく嫌な予感がする。
顔をゆっくり上げ、出現した人物と目を合わせた。
「まだ生きているんだねーお兄ちゃん」
長く暗い茶髪に警戒心を薄れさせるどこか抜けた顔。
間違うはずがない。
死んだはずの妹が、目の前にいる。
ただ、なぜか背丈を超えるような巨大なハンマーを握っている。
「なんで、お前が――」
声が震える。死人が生き返るような異能は存在しないはずだ。
なら、目の前の妹はなんだ?
「こんな世界で長生きしても無駄だよー」
妹が大きく振りかぶった。
俺の目はそれが俺の頭を打ち砕く前兆を見せてきた。
嘘だよな――
なんで、妹に殺されないといけないんだ!?
俺はただ。仲間の仇を取る為に頑張っただけなのに。
「次は頑張ってね」
予想していた軌道を通ってハンマーが振り下ろされた。
体は動かない。
「俺はまだ――!」
命乞いすら言えず、頭を砕かれた。
衝撃と共に、視界が暗転する。
意識が暗闇に沈む中、女の声が聞こえた。
『約束通り、彼を回帰させてあげよう』
俺の人生は終わった……はずだった。




