プロローグ
俺は世界を滅ぼした七体の怪物の一体《憤怒》を殺した。
右腕を失い、武器も砕け、立つのもやっとだ。
一体だけでこのザマだ。残り六体無理なのは分かっている。しかも、敵は怪物だけじゃない。
「どうした? 《教皇》殺しの佐月くんよぉ」
黒装束で顔を隠した五人が俺を嘲笑う。新魔教団。怪物を崇める狂信者どもだ。
「まさか人類の希望が独りぼっちな訳ないですよねぇ。そんな怖い顔せず笑ってくださいよー」
「人体損傷率88パーセント。貴方の勝機はゼロです」
笑顔の不気味な仮面をつけた男が煽ってくる。
手足が刃物の機械女が上から目線で俺を分析してくる。
怪物に殺されるのならまだしも、こんなカスどもに殺されてはあの世で仲間に顔向けできない。
「できるできないじゃない。やるんだよ!」
俺は最後の力を振り絞り使い戦った。
――――――
「はあ。はあ」
何とか勝ったが崩れ落ちてしまった。
まだまだ戦わないといけないのに。
怪物もそれを信奉する奴らもまだまだ生きている。
世界なんてどうでもいい。
――仲間のため。
それだけが俺を突き動かす。
立ち上がろうと身を捩り、一本だけの腕を地面につけた。
その瞬間。
目の前に何者かが出現した。
何者か分からないが、とにかく嫌な予感がする。
顔をゆっくり上げ、出現した人物を見た。
「お兄ちゃん。生き残っちゃったんだ」
死んだはずの妹が、巨大なハンマーを握っていた。
「なんで、お前が――」
声が震える。仲間を失ったあの日、確かに俺は妹の死体を抱きかかえたはず……
「こんな絶望で長生きしても無駄だよ」
妹が大きく振りかぶった。
なんで、妹に殺されないといけないんだ!?
俺はただ。仲間の仇を取る為に頑張っただけなのに。
「次は頑張ってね」
笑顔で振り下ろされるハンマー。俺は叫んだ。
「まて、俺はまだ――」
衝撃と共に、視界が暗転する。
意識が暗闇に沈んだ時に女の声が聞こえた。
『約束通り、彼を回帰させてあげよう』
俺の人生は終わった……はずだった。




