7-1 TS美少女と初登校
今日から私は女子高生。
ピカピカの制服に身をつつみ、ちょっとやりすぎくらいに攻めたスクールメイクをほどこした。
控えめに言ってもこの美少女、かわいすぎる。
学校の通学には、桜さんが付き添ってくれることになっている。
一人で登校するのは心細いし、本当にありがたい。
和也と登校することも一応提案してみたのだが、それは絶対に大パニックが起きるし、冷やかしがすごいことになるだろうと、本人に全力で拒否されてしまった。
こんなにかわいこちゃんの私を粗末にするなんて、本当にバカなやつ。これだから童貞は困る。
お弁当なんかをバッグに詰め込んで、たくさんの段ボールでちょっと荒れた部屋をそのままに、アパートの部屋を飛び出した。
和也と再開してからは、時間がたつのが恐ろしく早かった。
せっかくメス塾で習得した化粧のテクニックも生かしたいし、たまには和也を驚かせてやりたいからと、すぐにドラッグストアでごっそりと化粧品を買い漁った。
再会したあの日はすっぴんだったし、それでももちろん私は美人だとは思っているけれど、万が一にもあいつをがっかりさせたくないから。
当然、毎晩パックやら保湿クリームやら、お肌へのケアも欠かさない。
制服以外で和也に会うことも当然あるだろうから、ネット通販で色々とかわいい洋服も買い込んでみた。
私のアパートに遊びにきてくれることだってあるかもしれないし、そう思うと部屋着もふわふわでエロかわいいやつを買うしかないし、念のため下着にだって気を使うことになる。
私の部屋は今、大量の通販の段ボールで、ちょっとカオスな状況だ。
さらに言えば、あいつをからかってやりたい一心で、ちょっとテンションが上がりすぎてしまい、あの有名な、童貞を殺すセーターとやらまでネットでポチってしまった。
他にも夏の薄着で脇なんかが見えたとき、汚いものを見せるわけにもいかないし、高かったけど思わず家庭用の脱毛器具まで注文してしまっている。
こんな感じで、ばかみたいに散財してしまったけれど、国からTSの口止めとして頂いたお金のおかげで、生活にはだいぶ余裕もあることだし。
色々とかわいくなりすぎて、ちょっと和也を心配させてしまうかも知れないけれど、それは私のようなハイパー美少女に惚れてしまったあいつが悪いのだ。
「紬ちゃん、おはよー! うわ、なにこれ、めちゃくちゃ制服似合う、っていうかヤバ、顔かわいすぎじゃん! まぶしいよ、紬ちゃんが朝からまぶしい!」
和也と再開してから数日間、夕方からは毎日和也と桜さんの家に入り浸っていたから、桜さん、いや桜ちゃんとも、もうすっかり仲良しだ。
桜ちゃんも和也には微妙に似ずかわいい子だから、私たちが並んで登校する姿は、世の男性には素晴らしい目の保養になるだろう。
「おはよ、桜ちゃん。改めて、今日からよろしくね」
私の言葉に、桜ちゃんもくりくりした瞳をこちらに向けてにっこりと微笑み、うなずいてくれる。
私は高校一年生からの途中編入扱いとなっており、桜ちゃんとは同学年、しかもラッキーなことに同じクラスに転入できることになっている。
最初から知り合いがいるというのは、本当に心強いことだ。
正直、実年齢にズレがあるクラスメイトと簡単に仲良くなれる自信はないし、最低限、桜ちゃん一人だけでも話し相手がいるというのは、大変ありがたい。
いくら私が美少女とはいえ、コミュ障に簡単に友達ができるほど、世の中は甘くないし。
女の世界はなかなか厳しいというのも、メス塾で聞いていたから。
「ねえ桜ちゃん。良かったら今日の放課後、おうちに遊びに行ってもいい? 和也に、晩ごはん作ってあげる約束してて……」
私が遠慮がちに言うと、桜ちゃんはまたあきれたように笑ってうなずいてくれる。
「まあ、わたしの分も作ってくれるなら、許してあげないことはないけど」
桜ちゃんと和也のお父さんは単身赴任中らしい。
お母さんも仕事で帰りが遅いことが多く、二人は晩ごはんをよく出来合いのもので済ませているみたいなのだ。
私は一応、かつての長い独身生活のおかげで一通りの家事はできるので。
かわいいだけでなく優しさも兼ね備えた私としては、哀れな和也に晩ごはんくらいは恵んであげてもいいかな、なんて思ったりしている。
「ちなみに、お兄ちゃんは好き嫌いほとんどないけど、魚よりはお肉が好きかな」
ほう。
それはもう、メモ必須だな。
好き嫌いがないのも、さすがは和也だ。そういうところがいちいち偉い。誉めてやりたい。
こうして桜ちゃんと一緒に登校しているだけで、有益な情報が次々と手に入ってくる。
知ってしまった以上はしょうがないから、お肉でなんか作ってあげないわけにもいかないな。
まだ怪我で右手が使えないみたいだから、スプーンとかで食べやすいものを。
私が入院している間に、季節はとっくに春を越してしまって、梅雨もほとんど終わりかけていた。
今日も朝から日差しが強く、かなりの気温になっているが、日焼け止めやら汗で落ちにくい化粧品やら、メス塾で習ってきた知識がさっそく存分に役立っている。
近づいた夏の暑さで、あまり爽やかな朝ではないけれど、和也のことを考えながら、その妹の桜ちゃんと歩く学校への道は、ちっとも苦痛だとは感じない。