表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強召喚師の舞い戻り英雄譚  作者: 林 小
第1章:舞い戻り召喚師
41/127

第41話:舞い戻り英雄譚の幕開け!

 ◆◆◆



 ――風ノ忍衆との戦いの一件の日(日曜日)から二日経過した三日後(水曜日)の昼頃。


 暑い日の雲一つない青空、そこに浮かぶ太陽の日差しの下――場所はエスパダの第七県第八区にある喫茶店 〈タナベ〉の店外にある大きなテーブル席にて。

 そこには四人の人物がいた。 それ以外の周囲にいる、彼ら五人と同じく〈タナベ〉の客達は賑わっている。


「「「「…………」」」」


 四角テーブルの左下の席に翔真、左上の席に小太郎、右下の席に優奈、右上の席にエミリーが座っている。 因みに夏の季節に入り、四人は夏物の服装を着ている。 そして四人のうち二人……小太郎とエミリーは、翔真と優奈のやりとりを黙って見守っている。 今回この四人が集まったのは訳は二つあった。 その一つは翔真は優奈へ大事な話があるとのこと。


「それで大事な話ってなんなの……?」


 そして沈黙の空間を破ったのは、優奈。 彼女の声により、三人の表情は綻びた。 沈黙し続ける事に居心地が少し悪かったのだろう。 そして尋ねてきた彼女に、翔真は一気に言いたい事を言い放つ。


「それは、四日前の夜に優奈が受け持っていた探索任務で、辰久さんが言っていた言葉に僕が同意した事についてだ。 ……あの時、優奈は勝手に僕が同意した思っていたようだけど、それは誤解だ。 あれは今後どうするか悩みに悩んでいただけで……それで黙っていたんだよ」


 そして翔真は頭を下げ、


「直ぐに誤解だって言わなかった事を含め、誤解させてしまった事と直ぐに弁解しなかった事に謝罪する。 ごめん!」


 四日前の事を思い浮かべながら、当時の誤解とそれを弁解せずそのままにした事を言い、最後に謝罪する翔真。 因みに翔真はこの間(1日前)に辰久達と名前で呼び合う様にと連絡してきたので、それに翔真は承知した。 そしてそんな彼に、優奈と小太郎は呆れてしまった。 ……唯一その当時の場にいなかったエミリーは首を傾げて、何の事を話しているいるのか分からない様子であった。 そして翔真の発言と謝罪を聞いた優奈は、


「……何の話かと思えば、そんなことなの? だったから今更すぎるわ。それにこんな些かなどうでもいい事を引きずってたわけ? だとしたら気にしすぎよ」


 勿論、優奈からしても翔真と仲違いしたという気まずい気持ちを持っていた。 だが風ノ忍衆との戦いを通し……今ではそうな事はどうでもいいとすっかりあの時の事は吹っ切れているのである。


「優奈ちゃんの言う通りだな。 お前はあれか? どうでもいいことを引きずるタイプなのか?」


「っえ?」


 優奈と小太郎の呆れた物言いに翔真は素っ頓狂な声を洩らす。


「それにその任務は既に完了したわよ。だって……探していた対象が、私の前にいるじゃない。ほら、この場合は終わりよければいいってていわない?」


 優奈はビシッと翔真へ指を突きつけそうズバッと言い放った後、最後の言葉は微笑みながら言った。 そんな彼女に小太郎もうんうんと何度も頷き、一方でやっと話が読めてきたエミリーも大きく頷いた。 あの時、辰久は翔真を『白銀の召喚師』探索任務から降ろされる事になったが……その『白銀の召喚師』が翔真であったという衝撃の事実、そしてこの探索任務の対象(翔真)を見つけた事で達成された事になった。


「いや、でも……それでも、ちゃんと誤解だって言わないとだし、直ぐに弁解しなかった謝罪をしないと僕は気が済まないというか……」


「ああ、もう! わかったわ。 あれは誤解だって事はわかったわ。 謝罪も受け取る。 ……けど、私にも落ち度はあるわ。 貴方の口から同意の言葉を聞かず、勝手に勘違いしたのだもの。 こちらこそごめんなさい」


「あ、ああ……」


 と言って今度は優奈が謝り出した事に翔真は戸惑うが、そんな彼を置いてけぼりにするかのように優奈は一拍手して、


「よし! じゃあこの話はここまでね!」


「そうだな!」


「そうですわね!」


 と、早くこの話を終わらせようとし、それに小太郎とエミリーも頷き同意した。 そんな三人をみて、なんかイマイチ納得いかない気持ちになるが……何はともあれ、結果、当人から許しを得たので翔真もきりあげた。 ……こうして、翔真の三日も引きずっていた話はどうでもいいとあっさり終わってしまったのだった。


「それで、二人がエスパダに残った理由を教えてもらえないかしら?」


 優奈が口から出たもう一つの理由は風ノ忍衆の件は終わり、辰久とフェリックは祖国へ帰国したのだが……なぜか小太郎とエミリーは任務は終わってもエスパダに今も滞在してるのだ。そんな二人がエスパダに残った訳を聞く。 それが今回もう一つの話である。


「ああ勿論だとも優奈ちゃん! 愛するゆう――」


「――下らない発言するのやめなさい! そもそも、貴方に聞いてないわよ。私はエミリーに聞いてるのよ。 正直、小太郎はここにいなくてもよかったわね」


「(ガーン!)」


 発言を遮られ、容赦ない辛辣な言葉をなげてくる優奈に小太郎はガクンっ! とテーブルへと上半身を倒した。 そんなにショックだったのかと、小太郎をみた翔真とエミリーは苦笑い。そうしていると、


(あれから三日か……思い返してみると、何とか僕の事を隠蔽できてよかった)


 ふと、翔真はここ三日間の出来事を思い返し、そしてホッとした。


 翔真が帰宅した後、辰久達はエスパダ第七異能騎士団と共に戦いにより廃工場が破損した瓦礫の山を解体機械や異能を使い、その場を更地にした。 まぁ幸い、夜になると人っ子一人寄り付かない所だったお陰で、人民被害はゼロであった。

 一方で瓦礫の山の中から風ノ忍衆の四人(銀次郎・佐門・楠子・比良)と行方不明だったらしいエスパダ管理局所属の局員の死骸を発見。 ……それを知った時、本当なら殺さず戦闘不能にし生かして連行するつもりだった優奈は、さぞ残念な表情をしていたが。


 風ノ忍衆はその場で火葬り……風ノ忍衆との件で犠牲となった局員の遺体は、後日にその者の家族や私人、友達、仲間で葬儀を行うためエスパダ葬儀局へ運ばれた。

 戦いとなった場とその付近は暫く封鎖し、また風ノ忍衆は優奈と駆けつけた辰久達四人が壊滅したと嘘の入った情報をエスパダ異能騎士団と日本魔導機関にアメリカ魔導機関へと報告。

 理由は翔真の存在また彼が戦いに参加し、そしてリーダーである銀次郎を倒した事を隠すためだ。 もし翔真の事を知られれば、彼が『白銀の召喚師』という事が知られる可能性がある。


 そして風ノ忍衆との戦いの事件は、その翌日にニュースとなって世間に知れわたった。 勿論、翔真という人物を秘匿しているため、ニュースには翔真の事に関しては一切出なかったのは言うまでもない。 またカラス・イルミナティという凶悪組織のことも、だ。 因みそれをテレビのニュースでみた翔真は辰久達がそうしたのだろうと理解し彼らへ感謝した。

 一方で昨夜から翌朝の間に風ノ忍衆がエスパダに侵入してきた魔導潜水艦をエスパダ第10区の海岸付近の海底で発見。 その魔導潜水艦はどうやら最高異能技術で出来ていたため、おそらくそれで彼らはエスパダに侵入できたのだろう。

 また現在、その魔導潜水艦からカラス・イルミナティに関する手掛かりがあるか調べているとのことだ。 ……まぁそれを知った翔真は100%手掛かりなんて出ないだろうと確信しているが。


 ――なにはともあれ、事は世間を騒ぎにならずに穏便に済まし、これで風ノ忍衆の件は幕を閉じた。



「わたくしとコレが残った理由は、また新たに任務が下されたのですわ」


 エスパダに残った理由を、エミリーは言う。


「おい、オレをコレって言うな!」


「新たな任務? どんな任務か教えてもらえないかしら?」


「ええ、教えますとも。 そもそも優奈、そして翔真様に伝えろと上から言われていますわ」


 物扱いされた事に文句言う小太郎だが、優奈とエミリーは無視して話を進めた。 そして残った理由がエスパダで新たな任務が下されたと知る翔真と優奈は、だがその任務とはなんだろうか? と少し考える二人。 うち片方の優奈は、


「まさか……エスパダの何処かにカラスが潜んでるの? それこそ三日前に姿を見せたルーナイ・オズボーンが……!?」


「いや、『鴉伯カラス・カウント』クラスに就いてるそんな大物がエスパダに潜んむなんて今はありえない。第一『鴉伯カラス・カウント』クラス以上は簡単に潜んでいるという情報を漏らさない」


 カラス・イルミナティの中でも上位の階級……『鴉伯カラス・カウント』以上にいる者達は名前や外形すら不明なのだ。 だがその中でも『鴉伯カラス・カウント』クラスで三人ほど名前と外形が明かされている者がおり、その一人がルーナイ・オズボーンである。


「オレたちが新たに下された任務は、『白銀の召喚師』である翔真と優奈の助手なんだよ」


「そうなの?」


「ええ、そうですわ」


「エミリーが言うなら小太郎が言った任務内容は本当ってことか……」


「おい! オレの言った事が信じられなかったのかよ!」


「小太郎、うるさいわよ! 静かにしなさい!」


「優奈の言う通りですわ! コレ、静粛しなさいですわ!」


 自分の言葉に信憑性を感じなかった翔真に文句を言う小太郎だが、そこに優奈とエミリーが彼を黙らせる。 片方のアメリカ人女性魔導士はまだ小太郎を物言いで呼ぶに、彼女と小太郎の間で普段は仲が悪いのだろうかと、二人の関係性でそう思った翔真。 そして二人から理不尽な物言いに小太郎は若干、涙目になりながら縮み、そこから一言も喋らなかった。


(ご愁傷さま、小太郎……)


 こんな二人の女子から――しかもその一人が好意を持つ女性(優奈)――から酷い扱された小太郎に翔真は心の中で慰めたのだった。 因みこの三日間で小太郎に翔真が『白銀の召喚師』であると信じさせるに優奈は成功している。 ……が、それでも小太郎は翔真への接し方は変わらずきついものであった。


「話を戻しますわね。 先日、風ノ忍衆との一件が終わり、その事を派遣されたわたくし達は両魔導機関に報告しましたの。 すると日本魔導機関長直々にわたくしとコレ……小太郎へ翔真様と優奈の助手の任務を下されましたの。 小太郎はともかく、わたくしはアメリカ魔導機関所属ですので、その任務は受ける事は出来ませんが……どうやらアメリカ魔導機関長から許可を頂いたようで……こうしてわたくしと小太郎はエスパダに残り、今後お二方の助手をする事になりましたのですわ」


「助手って……もしかしてカラスとの戦いの?」


 二人の助手で思い当たる事を尋ねた優奈に、エミリーは肯定した。


「はい、そうですわ。話によりますと、翔真様は連中との戦いに入るとのこと。 それに翔真様の話ではルーナイ・オズボーンは近いうちに再び優奈を狙いに新たな敵が送り込むと口にしたようで。そうなった時の加勢もしますわ」


「なるほど、それは心強いよ。 でもそうなると大変じゃないか? 二人は世界的有名な魔導士だから……」


「ご心配無用ですわ、翔真様。 今もこうして高度に出来てる認識阻害の効果を持つ指輪型の魔導具をつけておりますの。あちらでへこんでる小太郎も同じくつけておりますわ」


 そう左手の中指にはめている指輪を二人へ見せるエミリーに、二人は頷き納得した。


「これからよろしくね、エミリー」


「はい、よろしくお願いします。優奈」


 優奈は言いながら握手を求め、それにエミリーは応えた。 その次に翔真も優奈と同じく握手をしようとするが……なぜか彼の手をジッと見つめるながら両手でぎゅっと掴み応えた。 同時になぜか彼女の表情は惚けていた。 そんな彼女の表情に引き気味になる翔真。


(なんだその表情は!?)


 どうしてそんな表情になるのかとわからない翔真に、同じくエミリーの惚けた表情をみた優奈が耳打ちして、


「エミリーも貴方と同じ召喚師なのよ。 それも聖なる獣……聖獣の召喚師で、中でも強力な聖獣と言われるペガサスと契約してるの」


「それは凄いな」


 聖なる獣、『聖獣』。 自然に仇なす災いから守護する獣。 魔物や魔獣とは違い、人間などには襲い掛からない。 また知能知性が人間以上にズバ抜けて高く、聖なる力を持つため邪・負なる力を浄化できる。 他にも聖獣を信仰する宗教も存在している。 だが聖獣と契約し自らの契約獣・召喚獣にするにはそれに適った適性と力量、最後に聖なる力の素質がなければならない。 つまり、聖獣との契約に成功させるの難易度が高く、殆どが召喚獣にさせる事ができる魔物や魔獣とは違って、聖獣を召喚獣に成功させた召喚師は滅多にいない。

 普通なら驚く所だが、翔真はさして驚きもしない表情で……そんな彼に優奈はジト目を向け、


「今の言葉って嫌味を込めてのこと?」


「いや、違うけど。 なんで?」


「貴方は聖獣以上にも、桁違いな力をもつ天獣がいるものね」


 確かに聖獣は強力な力を持ち希少な存在で契約できる召喚師は滅多にいないが、それ以上に天獣は聖獣とは比べ物にならない絶大な力と存在だ。 この世で天獣と契約にしている召喚師はたった一人である翔真だけだろう。


「ともかく、同じ召喚師として、また最強の召喚師ともいわれる『白銀の召喚師』に憧れと尊敬を抱いているのよ」


「はははは……」


 優奈の言葉に、翔真は苦笑い。 今では、英雄『白銀の召喚師』は世界中にいる召喚師の憧れで尊敬すべき存在であり、一部の召喚師からはもはや信仰し宗教なるものもあったりなかったなりという噂もある。


(まぁ、ともかく――)


 これで頼もしい仲間も出来た。 再び襲いかかってくるであろうカラス・イルミナティの連中との戦いはまだ始まったばかりだが……それでも、連中が何度来ようと全力で迎え撃ち、連中の目的を潰すまでた。


「…………」


 雲一つないあれきった日、その青空へと翔真は顔をあげ眺める。

 すると徐に二年前の事を思い出す。

 二年前、第三次海域災害の時はそんな良い天気でなかった。

 凄まじい大嵐、荒れる大海、鳴り続ける雷雲……あれはまさかに太平洋が崩壊せしめるものだった。


(……、必ずお前を……)


 当時亡くなった大切な人、大切な家族だった人、この世にたった一人しかいない――大切な妹・・・・が報われる為に、


(『鴉王カラス・キング』、今度こそお前との決着をつける!)


 翔真は己の内に再び現れたある感情をカラス・イルミナティに向けながら、奴らとの戦いへと入る。


 そして、青年(加藤 翔真)が再び召喚師へと舞い戻り、そこから始まる物語――舞い戻り英雄譚の幕開けの瞬間だった。


お読み下さりありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ