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最強召喚師の舞い戻り英雄譚  作者: 林 小
第3章:異能学園への潜入調査(仮)
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第125話:シュラード・デモネス・スミス

 ◆◆◆



 もう一方、エスパダ第七異能学園の北の森林地帯にある『卒業試合の間』にて――。

 そこを中心に周囲で、数多の金属音や低音銃声、また異能攻撃音など――集団の戦闘音が鳴り止まない。

 集団対集団――異能騎士隊と鴉兵カラス・ソルジャー隊による集団戦闘が繰り広げられていた。

 しかし隊員達と共に無言状態兵ともいう鴉兵カラス・ソルジャー共を一人一人倒していく中、異能騎士隊を率いてる隊長は、もうあれから何度も脳裏を過ぎってる先刻に起きた事を、再び脳裏に過ぎる。


(ッチ!女悪魔が突然消えただと!? それだけじゃなく、女悪魔を現世に繋ぎ止めている悪魔術式が組み込まれた十字架も一緒に消えたときた……!)


 隊長が内心で焦ったようにあげた言葉の通りだ。

 先刻まで、地下礼拝堂にて黒仮面の青年(加藤 翔真)――協力する異能者が女悪魔との戦い、その一方で彼が女悪魔を引きつけている間に、異能原爆処理班は、課せられた異能原爆を処理していた。 しかし突如として女悪魔が、自身を現世に繋ぎ止めている悪魔術式が組み込まれた十字架と一緒に霧散するように消えたのだ。


(だが幸い、それはそれで異能原爆の処理にしやすくなり、専念できる。邪魔する存在がいなくなったからな。 ……だが)


 そこに、隊長は何か違和感を感じてならない。 腑に落ちないのだ。 もちろん異能原爆を処理する際に何度も女悪魔から邪魔が入った。 その存在感が消えたのなら、こっちとしては大助かりだが。 ……それでも。 何か大きな失態を、知らないうちに起こしてしまったような気がしてならなかった。 その一方で、


(女悪魔が消えた後、あの異能者は突然この場から離れ、どこかに消えてしまった……! 去り際に『女悪魔を追います』と言っていたが……)


 そう。女悪魔が消えたのち、あの黒仮面の青年異能者は何事かブツブツと小さな声で言い終えた途端、地下礼拝堂から地上へ戻り、そしてこの『卒業試合の間』から去ったのだ。

 彼の後を追うこともできたが、地上は地上で異能騎士隊が地下礼拝堂に突入した直後に『卒業試合の間』の周辺の暗闇から、まるでタイピングを合わせたかのように鴉兵カラス・ソルジャー隊が出現したのだ。それも、異能騎士隊の倍ほどの人数だ。

 いったいこれほどの鴉兵カラス・ソルジャーはどこに潜んでいたと言うのだろうか。鴉兵カラス・ソルジャーという存在は、謎が多い兵だ。彼らは人間なのかと疑わしさすらある。


「黒魔術・『炎付与フレイム・エンチャント』っ!」


 直後、隊長の剣に炎が螺旋のごとく渦巻き、纏わり、炎熱の剣となる。


「っは!」


 四方八方から飛びかかってくる鴉兵カラス・ソルジャー十数人を、隊長は円を描くように、回転して薙ぎ払った。


「ともかく、私たちは私たちで役目を果たすことに専念だ。 ――みな、鴉兵カラス・ソルジャーどもを一人残らず滅するのだ!」

『承知!』


 隊長の怒鳴り声のようにあげた掛け声に、異能騎士隊は一斉に力強く応じた。

 地下礼拝堂で副隊長がいる処理班が、異能原爆の処理をする最中の一方――その班を抜く、隊長率いる異能騎士隊は、交戦してる鴉兵カラス・ソルジャー隊の全滅へ取り掛かる。

 そうして、異能騎士隊と鴉兵カラス・ソルジャー隊の交戦は続いてゆく――。



 ◆◆◆



 ――エスパダ第七異能学園中等部の誰もいない校舎の校庭にて。

 そこで、聖なる剣閃と魔なる閃光が金属音や轟音と共に幾ばくも火花を散らし、ぶつかり、鬩ぎ合い、いくつもの聖光と闇光の軌跡が同時に走りながら、拮抗していた。

 光の軌跡が浮かび走りながら、エミリーの《ペガサス・レイピア》の鋭い突きが、空気を押し切るかのごとく標的へ。 しかしその突きを間髪入れず前へ屈み身を低くし、それを上へと。 闇光の軌跡を宙に走ったシュラードの悪魔腕剣ソード・デビルアームで弾く。


「っぐ!」

「どうした、動きが鈍くなってきてるぞ? ――っ!」


 突きを大きく上へ弾かれたことにより、僅かな隙を突きに行くシュラード。 だがそれを邪魔するように、横方面から激烈の一閃が狐を描くように迫ってきた。 間一髪で、それを後方へ跳び下がることでシュラードは避ける。


「助かりました優奈さん!」


 横からの剣閃をいれてきた優奈のおかげで助かったことに安堵したエミリーは礼を言う。 一方で礼の応えをせず、優奈は「くるよ!」と叫ぶ。 その言葉にエミリーはすぐさま身を引き締め直し前へ向く。 と、同時にて。


「《地に潜む悪よ・人形となりて現れよ》」


 ――悪魔術・『闇の土人』――


 直後、二人の女魔導士を中心に、周囲の地から泥のようにヌルヌルと数多の土が浮かび上がり、それが人の形となって、更に闇色へと染まる。 さながら土からできた数多の闇の人形ゴーレムだ。 それが校庭中にわんさかと現れた。 禍々しいその雰囲気は、まさしく悪魔が作り出した人形のようで――、


「行け」


 その一言に、数多の闇土人(ダーク・ドール)が二人の少女へと押し寄せていく。


「無駄よ!」


 ――黒魔術・『闇之消手ダーク・イレーズハンド》――


 直後、優奈とエミリーの間近の周囲に多数の黒き靄手が出現。 優奈のお気に入りの黒魔術である。 瞬く間に多数の黒き靄手は迫り来る数多の闇土人へと衝突してゆく。 すると闇土人が黒き靄手により、爆発するかの如く消え去った。


「向かってくる異能の攻撃を、消滅させ無効化させる。この気持ち悪い闇の人形そのものが攻撃でしょ? なら消せるわ」

「やるねぇ。しかしこれはどうかな?」


 シュラードが悪魔腕剣ソード・デビルアームを掲げた。 すると、その切っ先に黒点が生まれた。 空間にぽっかりに空いたように。 それが徐々に螺旋のごとく渦巻き、どんどん大きくなってゆく。


「悪魔術・『黒点磁力』」


 大きくなっていく黒点は、さながら強い磁力によって周囲へと影響を撒き散らし。 それにより紫電が起こり、放射状に迸る。 そして黒点へと優奈とエミリーの身体が引き寄せられてゆく。 二人は必死に地面に手をつき、抵抗するが、それでも徐々に引き寄せられる。 あの黒点に引き寄せられたが最後、身体が呑まれて文字通り消滅するだろう。


「エミリー!」

「はい!」


 優奈の声に、エミリーは強い返事をした。 すると、エミリーは西洋剣術の構えをとり、《ペガサス・レイピア》を黒点へと切っ先を向けた直後、


「聖獣剣技・『聖馬の翼突よくつき』ッ!」


 聖なる光がレイピアから、更にエミリーの身体から発光。 それと同時に細剣の先端付近から幾十にも光の幻影が現れ、それが瞬く間に混ざり合ってペガサスの鋭利な翼の刃の化身へと。

 そのまま《ペガサス・レイピア》の刀身に憑依。 さながらそのレイピアそのものがペガサスの翼のよう。 そしてエミリーは黒点へと引き寄せられる勢いにのって、


「はぁぁ!!」


 まさかに必殺のひと刺しのごとく、激烈な刺突。 聖馬の翼刃の刺突により、翼刃に貫かれたあとを残したまま、大玉程の大きさの黒点は消滅。 場は嵐が過ぎ去った後のように、静けさが漂い始めるが――、


「っは、ははははははは! いや、さすがだ。 オレのとっておきの悪魔術の一つの『黒点磁力』を刺突するとは……普通の刺突、いや、たとえ異能も加えての刺突でも、貫かれることはない。 そのまま黒点の中へ吸い込まれていただろう」


 それも一瞬のこと。 すぐさま拍手しながら言うシュラード。 そして彼はエミリーへと、憎っくき相手、天敵を睨みつけるように、その憎悪の目を向けて。


「しかし刺突を可能としたのは――やはり聖属性。悪魔術とは正反対で、弱点で、厄介だ。 全くなんと憎たらしい! エミリー・フォリーヌ。 アメリカの雌犬(魔導士)が!」


 吐き捨てるように、エミリーへ罵った。一方で、


「……参ったわね」

「そうですね……」


 優奈とエミリーは眉根を寄せ、呟く。 二人の予想以上に、シュラード・デモネス・スミスという男は手強かった。 こちらは二人であちらは一人、更にエミリーは聖属性使いゆえに悪魔使いとしては厄介な相手でもあるから、有利に戦いが進むと思っていた。 だからエミリーをシュラードとと正面切って相手し、優奈がサポートに回る戦法を取り続けていた。 しかし、現状はどうだ。


「五分五分の拮抗する戦いが続くだけ、だったわね」

「はい。 やはり『鴉子カラス・ヴァイカウント』シュラード――その実力は、予想以上です。 それに……」


 エミリーはシュラードが持つ悪魔腕剣ソード・デビルアームと、そして彼の剣の腕を浮かべた。


「あの男の剣術は厄介です。一つ一つの剣撃が、靄のようにぼやけて対応するのに目に必死以上に疲れしまい、困難です」

「確かに。私から見ても、あの男は悪魔術の他に、剣の腕前も恐れ入るわね。さて、どうしたものかしら……」

「…………」


 二人の女魔導士は困難に立ち止まるかのように、厳しい表情で考える。 しかしその数秒後にシュラードの口からから放たれた言葉に、嫌でも耳を傾けることになる。


「――お前たち一ついい知らせを教えてやろう。オレの姪が、どうやら投降したそうだ」

「「――っ!」」


 それを聞き、流介の方はやってくれたんだと、そう二人は安堵の表情へとなるが――、


「しかし、そうなることをわかっていた。故に、彼女が投降した途端、オレの契約悪魔が彼女の身体を憑依し、乗っ取る。そして憑依時間が続くにつれ、彼女の意識はそのまま闇の中へと消え去ることなるだろう。 実際、オレの姪に憑依したと契約悪魔との念話を通じてその知らせが入ってきた」

「「っな!」」

「つまり、だ。 彼女はこの叔父たるオレを、裏切ったということ。そう解釈してもいいだろう。 そうとあらば、言った通り、オレの姪の身体ははれて、オレの契約悪魔の憑代としての道具(人形)になる」

「自分の実の姪を……! なんて奴なの……!!」

「それでも彼女の叔父なのですか……!!」


 信じられないとばかり、二人は怒りに奮激。 立ち上がり、その憤激に反応して、二人の身体から魔力が激しく円状から上へ爆発的に放たれた上がっていく。 空気が、地面が、ゆれる。


「いくわよ」

「はい」


 そして――二人はそれぞれ、最大の攻撃を放った。


「『抜刀魔剣・居合斬り』っ!」

「聖獣剣技・『聖馬の体突たいつき』っ!」


 超速なる魔力剣閃が。

 細剣からペガサスそのものの化身という刃となった激烈の刺突が。

鴉子カラス・ヴァイカウント』シュラード・デモネス・スミスへ。

 そして激烈の魔力と激風の奔流を起こし、一筋の軌跡を閃かせ迫りくるその二つの攻撃を――刃を――


「――固有異能、発動――」

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