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追放された推しの、スポンサーはお役目終了のようです  作者: 井上さん


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2/2

本当は商会長なのに、ただの商会員の振りして営業に行っていたんだよ

名前借りました


バーミーズの両親の惚気話です


フィクションです

 私は、バリニーズ・ガット

伯爵家の嫡男。

まだ独身で、父である伯爵の手伝いをしている。


 幼馴染の、隣の領のマチカ侯爵の子息と、それぞれ商会を立ち上げて、協力して売り込んでいる。


 何故、それぞれ商会を立ち上げたかって?

売り上げを、そのまま自分の領地の収入にするからだ。


 そして、お互いに商会長ではあるが、ただの商会員の振りして営業に行っていた。


 何故か。


「帰って商会長から怒られます〜」


 と、無茶苦茶な注文をする客を躱す為だ。


 父の社交について行った時に、一筋縄ではいかない貴族達を相手にするには、何か対策が必要だと思ったからだ。


 普段は、ただの商会員が商談をして、ここぞという時に、商会長が出る…


商会長がわざわざ相手するから、相手を重要視している、と示す事ができる…


まぁ、同一人物なのだが。


 それから、ただの商会員だと、見下して横柄な態度をしてくる貴族もいる。

そういう相手とは、関わらない。良い判別方法になっていた。






 ガット伯爵家の商会では、陶磁器のティーセット類。


マチカ侯爵家の商会では、紅茶葉を扱っている。


 茶葉を紹介し、この茶器はどうですか、と勧める。

素敵な茶器をお持ちですね。それにあうこんな茶葉もありますよ、と勧める。


 試したところ、相乗効果があったのだ。






 ある貴族家に、売り込みに行った。


夫人は乗り気だが、令嬢は乗り気じゃないようだ。

胡散臭い目でこちらを見ている。


 仕方ない。新興の商会なので、信用が無いのだから。


「何か問題でも?」


 私は令嬢に聞いてみた。


「うちは、裕福ではないので、紅茶はお客様が来た時にしか飲みません。こんなに大きな入れ物だったら、中々減らなくて、茶葉が劣化しちゃいます。高いティーセットなんて、落として割りそうで触るの怖いし…」


 令嬢の言葉に


「確かに…そうですね。では、小さい入れ物なら、考えていただけますか?」


 私は言った。

ただの商会員だから、と、見下したり、横柄な態度にならない。ありがたい。


「ま、まぁ…」


 気不味そうに言う令嬢。


買う気が無いんだな。

裕福じゃないと言うから、仕方ないけど。


「他に、何か不都合があれば、何でも言ってください。改善します」


「あ…考えときます」


 社交辞令だろうけど、本気にした振りしてまた来よう。

何故なら、令嬢が可愛いからだ。また会いたい。


「ありがとうございます!」


 私は、笑顔で令嬢に言った。


社交辞令だよ!って顔をしている令嬢。可愛らしい。






※※※


「お嬢様!ありがとうございました!」


 商会の男は、私コラット・バーミラの顔を見るなり言った。


 新興の商会なので、詐欺を疑っていた。

母はおっとりしているから、よく詐欺に引っかかりそうになり、私や父が食い止めている。


「な…何ですか!?」


 私は驚いた。突然何なの?


「お嬢様の言葉通り、小さい入れ物に茶葉を入れるようにしました。そうしたら、売り上げが上がりました!お嬢様のお陰です!ありがとうございます!」


 男…バーミーズ・ガットと名乗った…はお辞儀した。

え?そうなの!?買いたくなくて言っただけなのに…!?


「そ…そうですか…」


 私は戸惑っていた。


「それから、高そうに見えるけど本当は安いティーセットも作っているところです」


「え…?」


 買いたくなくて言っただけなのに!?

わざわざ作っちゃったの?


「他に何かご意見があれば、と、お聞きしたくて参りました!」


「あ…」


 そういえば、前にそんな事を言っていた気がする。忘れてたけど。

本当に聞きに来るとは思わなかった。


「考えときます」


 その場しのぎで、そう言っておいた。


…まさか…また来るとか無いよね…?


え?これフラグ?


「ありがとうございます!これはお礼です!」


 男が言いながら、差し出したのは、小さい入れ物の茶葉。


「え?でも…」


 お礼が欲しくて言ったわけじゃないのに…

買いたくなくて言っただけなのに…


「中身は、そんなに高くない茶葉なので、気にしないでください!それでは、今日はこれで!」


「え!?」


 何か売り付けられるのかと思ったのに…


 さっさと帰っていく後ろ姿を見ながら、次にいつ来ても良いように、何か考えておこうと決意した。




 その後、その男が商会長だと知ったし、更にその後、結婚するとは思いもしなかった。






※※※


「ってな事があってね」


 娘の将来の夫ラグドール様に、妻との出会いを話したのだった。


「本当に、可愛らしくて、聡明で、何度も会いたかったから、あれこれ理由をつけて会いに行ったんだ」


「無理矢理買わされると思っていたのに、改善して見せにくるから…どうしようかと思ったわ」


 妻が、社交辞令だよ!と表情で言った時と同じ顔をした。

妻は、今でも可愛らしい。


「買う気が無いから気不味そうにしていて、とても可愛らしかったんだ」


「なるほど…惚気ですね」


 私が言うと、ラグドール様が、真顔で言った。


「惚気に決まってるだろう」


 私は、ニヤリと笑ったのだった。




ラグドール様は、どうやら娘を好いているようだ。


 こちらに来たばかりの時は、娘とは距離を取ろうとしていたのに…


 私と妻が、親戚のおじさんとおばさんだよ、と言ってから、私達には少しずつ心を開いてくれていた。


 娘と一緒に、猫の模写をするようになってから、娘を見る目が優しくなった。

 それから、段々と、愛おしい者を見る目になっていった。




 娘が、公爵子息を匿ってほしいと言い出した時は、どうなる事かと思ったが、ラグドール様は、真面目で、勉強熱心で、領地経営を学んだり、剣術の稽古をしたり、絵を描いたり、商売のアイデアを出したり、と一生懸命だった。


 王女様から婚約破棄されて、王都を追放されたラグドール様。


 こんな、王都から離れた田舎でひっそりと暮らすなんて、嫌ではないかと思っていたが、性に合ったようだ。


 猫の模写を見た時は、才能を感じた。

娘は、人を見る目がある。


 マチカ侯爵の娘バーマンの、刺繍の才能を見抜いたのも娘だ。




 匿われている、という後ろめたさを感じない為にも、役に立っているのだと自信を持ってほしい。




 そんなラグドール様は、やっと、娘と結婚する気になったらしい。


 愛おしそうに娘を見るラグドール様に対して、娘はどう思っているのやら…


 今まで、全く男に興味が無かった娘。

猫や、商売の事しか話さなかったのに…


 結婚するような年頃になったのだな。


「バーミーズがいなくなるなんて淋しいんだが!?」


 ラグドール様が帰った後、私が叫んだら、妻が


「そのうち慣れるわよ」


 と冷静に言った。




解せぬ。




読んでいただきありがとうございます

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