追放された推しの、スポンサーはお役目終了のようです
モブに転生したので、追放される推しのスポンサーになります
の続きです
名前借りました
フィクションです
私は、猫を見ると、模写したくなる。
今まで1人で猫と遭遇していた。どんなに模写に時間が掛かっても、自分だけだから何も問題無かった。
だから毎回、ラグドールさんの存在を忘れて没頭してしまう。
申し訳ない。
その間、暇だろうから、ラグドールさんにも模写を勧めた。
ある日、私がまた、いつものように模写し終わった時に、ラグドールさんの存在を思い出し、振り返ると、ラグドールさんが模写していた。
※ラグドール視点
真剣な顔のバーミーズ嬢を模写した。
彼女は、猫に遭遇すると、私そっちのけで猫を見つめ、模写を始める。
申し訳ないから、と、模写用の紙と羽ペンを渡された。
待っている間に模写してみないか、と。
気にする事なんて無いのに。私は、猫に夢中で、真剣に模写するバーミーズ嬢を観察するのに忙しいのだから。
でも、せっかくだから、バーミーズ嬢を模写した。
初めて絵を描いた。
でも、恥ずかしいから猫も模写して、猫だけバーミーズ嬢に見せた。
「天才がいた!」
バーミーズ嬢が叫んだ。
私は、バーミーズ嬢に連れられて、伯爵邸に向かった。
バーミーズ嬢は、無意識なのだろうが、私の手を握って…じゃなかった、掴んで引っ張っていく。
彼女に触れられて、ちょっと嬉しい。
伯爵の執務室に突撃したバーミーズ嬢。そんなところも好ましい。
「お父様!大変です!」
ガット伯爵が驚いている。私も驚いた。何が大変なんだ?
「天才がいました!」
バーミーズ嬢は、私の猫の模写を伯爵に見せた。
「何と!?ここにも天才がいたのか!」
伯爵のテンションが上がった。
「あ…とりあえず座って…」
冷静になった伯爵は、私とバーミーズ嬢を応接セットのソファに並んで座らせ、執事にお茶の用意を頼んだ。
「ラグドール様、模写を売りませんか?」
伯爵が真顔で言った。
…模写を売る?
私が描いた模写を?
「え…?あの…売るんですか?」
「「絶対に売れます!」」
私が戸惑って言うと、親子揃って言った。
「自信が無いですが…」
「「私が買います!」」
親子がまた言った。
「…え?」
ちょっと2人の迫力にビックリしてしまう。
「バーマンも欲しがるし、メインクーン様も欲しがるでしょう。猫好きのご婦人も沢山いるので、最低でも20枚は売れますね」
バーミーズ嬢が言った。
最低でも20枚?そんなに?
「柄やポーズを変えれば、もっと売れますよ!」
伯爵も言う。さすが商売のプロ?
「…領地経営の勉強と鍛錬の合間に描くので良いのなら…」
バーミーズ嬢が褒めてくれるなら描けそうな気がする。
「勿論です!そちらが優先なので、模写はいつでも構いません」
そう言われて、休憩中や、気分転換の時に描くようにした。
最初に描いた模写は、バーミーズ嬢が買ってくれた。
贈ると言ったら
「客第一号の栄誉をください」
と真顔で言われたので、栄誉…?と戸惑いながら了承した。
私も、バーミーズ嬢の模写を買わせてもらった。
2枚目に描いた模写は、伯爵が買ってくれた。
「客第二号の栄誉をください」
と言われたので、親子だな…とほのぼのしていたら、伯爵夫人が
「客第三号の栄誉をください」
と言い出した。
バーマン嬢も聞きつけたらしく突然やって来て、私の顔を見るなり
「私は何番目ですか!?」
と言った。愛人じゃないんだから。
マチカ侯爵と侯爵夫人も
「次は私が」
と言い合っていて、驚くと共に、有り難くも感じた。
伯爵邸の執事やメイド、別荘の執事やメイドも、皆が褒めてくれた。
公爵家の人間だから、媚びているのかと思ったが、本当に、猫可愛い!と思っているらしい。バーミーズ嬢の影響で、皆、猫好きだ。
両親や兄も、私が子どもの頃は褒めてくれたが、さすがに学園に入る頃には褒められなくなっていたので、少し恥ずかしいが、嬉しかった。
私の模写は、本当に20枚目が売れたらしい。
私が、ここにいる事を知られない為に、偽名で模写を売っていた。
それでも売れたらしい。思った以上の額を報酬としてもらったのだった。
その報告の後で
「絵の具で描いてみませんか?」
バーミーズ嬢が言った。
「絵の具で?」
「たぶん、ラグドール様は、模写より絵の具の方が良いと思います」
バーミーズ嬢が言う事なら信じられる。
私は絵の具で描いてみることにした。
道具はバーミーズ嬢が用意してくれた。
模写よりも、気楽に描けないし、時間が掛かる。
でも、時間は限られている。
時間を有効に、集中して勉強をし、絵を描く時間を作るようにした。
模写を参考に、絵を描いた。
1枚目が描き上がると、バーミーズ嬢に見せた。
「わぁ!」
バーミーズ嬢が目を輝かせて私の絵を見ていた。
描いた甲斐がある。
「伯爵家で買って、家に飾ります」
バーミーズ嬢が真顔で言った。
そうか…模写と違って、金額が物凄く高くなるんだな…
キャンパスは、小さい物だが、それなりの金額になった。
別荘用にも買って飾ってくれた。
ちょっと恥ずかしいが嬉しい。
次は侯爵家、次はデプース家とマオ家。
それから、猫好きのご婦人からも買いたいと言われているらしい。
その頃、元婚約者であるシャルトリュー元王女とマンクスが、結婚して男爵家を継いだ…と聞いた。
2人は、王都やデプース公爵領やデプース侯爵領やマオ公爵領を部下に探らせているらしい。私を探しているのか?
私と結婚すれば、侯爵家だからな。
男爵家とは大違いだ。
贅沢好きな元王女と、王女と付き合って贅沢を覚えた男爵子息には、辛い生活だろう。
私が領地経営をして、2人は遊んで暮らすつもりかもしれない。
2人は、領地経営の勉強が嫌で、何度か逃げ出しては、連れ戻されているらしい。
そして、とうとう、私を探すのも逃亡するのも諦めたらしい。
それまでに半年は掛かっていた。
2人が落ち着いたので、父上から今後どうするか聞かれて、まだ伯爵家にいたいと思った。
兄上は、私が貰うはずだったデプース侯爵領を、公爵家を継ぐまで治めてくれると言ってくれた。
兄上から聞いた話だが、私が婚約破棄される事や、追放されるかもしれないという事を、最初に言ったのはバーミーズ嬢らしい。
つまり、今の穏やかな生活は、バーミーズ嬢のお陰だという事になる。
バーミーズ嬢に、何かお礼をしたい、と言ったところ
「ラグドール様が幸せに生きる事がお礼です」
と真顔で言われた。
ここに移住してきた頃は、結婚を迫られるかも知れない、と思っていたが、全然そんな事は無かった。
全く。
欠片も。
ほんの少しも。
ほんのりともなく。
良い雰囲気もなく。
…私は男としての魅力が無いのだろうか?
と、思ったところで、もしかして、私はバーミーズ嬢の事が好きなんだろうか、と思った。
いや、助けてくれたから、恩を感じているだけだ。
…
…
…
バーミーズ嬢は、私より猫に夢中だから、恋は始まらないかも知れない。
猫の絵を描くバーミーズ嬢の隣で、私も猫の絵を描く。
彼女は羽ペンで。
私は絵の具で。
最近は、2人で絵を描く事が増えた。
なぜなら、そこに猫がいるから。
猫は、野良猫で、この辺りを縄張りにしているらしい。いつもの白猫だ。
伯爵邸でオヤツをもらっているから、オヤツをくれるバーミーズ嬢について、別荘にもやってくるようになった。
私は、絵のモデルのお礼にオヤツをあげる事にした。
バーミーズ嬢も賛成してくれた。
たまに、白黒縞模様の猫もやってくる。
その時は、私もバーミーズ嬢もテンションが上がりながら、一心不乱に絵を描いた。
たまにしか来てくれないからだ。
10日に1回くらい。
他に、赤毛の縞模様の猫も来た。
今、私は、猫の他に風景画も描いている。
何となく描けなくなった時に、違う物も描いてみたらと、バーミーズ嬢に言われたからだ。
もしかしたら、彼女も描けなくなった事があるのかもしれない。
それから、風景画の中に、小さく猫を描いた。
バーミーズ嬢のアイデアである。さすが、猫が好きなだけある。
皆、面白がってくれて、私が風景画を描くたびに、猫がどこにいるか探すようになった。
分からないように猫を描くのが楽しくなった。
兄上から、バーミーズ嬢とはどうだと聞かれた。
私は、バーミーズ嬢の事を信頼している。
絵を描くのが、こんなに楽しいと思わなかったし、領地経営の勉強の合間に描いていると、気分転換や、気付かなかった事が見えたりする。
だが、全く、恋の欠片すら見当たらない。
年頃の男女がそばにいるのだ。
…何かあるはずではないか?
でも、よく考えたら私も、そんな態度は微塵も出していない。
そこまで考えて、私はバーミーズ嬢と、どうなりたいのか真剣に考えた。
バーミーズ嬢と、並んで絵を描く時間好きだ。
バーミーズ嬢は、将来伯爵領を継ぐかもしれないと、領地経営の勉強をしている。
私が将来、侯爵領を治める時に、伯爵として協力しあえるのではないか?今も協力しているが。
私の補佐をしてもらう?
いや…そうなると、伯爵領を継ぐ人間がいなくなる。
彼女なら、伯爵領も、店も、上手くやっていけるのではないか?
私のそばにいてもらうより、才能を生かせるのではないか?
でも…彼女に会えなくなるのは淋しい。
さり気なく寄り添ってくれるバーミーズ嬢。
私がやりたい事を、何でもやらせてくれるバーミーズ嬢。
猫を見ると、一心不乱に模写し始めるバーミーズ嬢。
学園にいた頃は、話した事もなかったのに。
…そうか…一緒にいたいから、ここに残りたかったんだ…
はっ!
もし…彼女が伯爵領を継いだとして…婿を取るのか…?
バーミーズ嬢が、他の男と結婚する!?
そんなの嫌だ!
猫と戯れるあの可愛い顔を、他の男に見せたくない!
私は、彼女が猫の模写をしている時、彼女を模写している。
まだ誰にも見せたことはないが。
…私は彼女に惹かれている。
彼女は私のことをどう思っているのだろうか?
彼女を確実に手に入れる為には、どうしたら良いのだろう?
猫を見る時の優しい目で、私を見てほしい…
※※※
どうしてラグドール様が推しになったんだっけ?
小説の、王女から婚約破棄される地味眼鏡の公爵子息。
眼鏡を外した挿絵があったのだ。
兄のラガマフィン様もイケメンだったが、眼鏡を外した挿絵のラグドール様もイケメンだった。
顔かな?顔だな?
最近は、ラグドール様の絵が売れているから、スポンサーもいらないかもしれない。
スポンサーのお役目は、そろそろ終了かもしれない。
それでも、今後もラグドール様が幸せに暮らせるように手を尽くそう。
とか考えていたら。
「バーミーズ嬢」
ラグドール様が声を掛けてきた。
我が邸の庭で1人でお茶をしていたのだが。
ラグドール様は、肩で息をしている。走ってきたのか?
何故か、庭の花をバックにキラキラしているラグドール様。何故に?
「私の事は嫌いか?」
いきなり何を…?変なモノ食べた?
「…嫌いではないです」
怪訝な顔で見てしまう。
「そうか…」
ラグドール様は、私を見つめてきた。
突然どうしたんだろう?
まさかご乱心?
殿がご乱心じゃ〜!
まだ私を見ている。
今日はラグドール様は眼鏡を掛けていない。最近は外している事が多くなってきた。
見えるのか聞いたら…
元王女から、目立つな!と言われて、地味で目立たないように地味な髪型にして眼鏡を掛けていたらしい。
眼鏡掛けてるのも知性的で格好良かったけど…
それにしても…
「…顔が良い」
現実逃避していたら、つい言ってしまった。
「顔?」
ラグドール様が首を傾げた。
「ご自分の顔が良いのを考えてください」
「…何故?」
怪訝な顔をするラグドール様。
全く。無自覚イケメンめ。
「顔が良いから、緊張します」
「緊張?」
「良い顔を見せつけないでください」
たぶんこれは八つ当たりだ。
ラグドール様の顔が良すぎるのが悪い。
「…この顔が好きなのか?」
何でバレた?
「この顔が好きなんだな?」
確認しないでください。
「この顔が好きなんだろ?」
ニヤリと笑うラグドール様。
…まさか…Sだったのか?確かに、いつも冷静でSっぽいけども。そうかな?
「そうか…この顔が好きなんだな」
確信しないでください。
「何度も言わないでください」
「ふふっ…良かった…」
何て???
「嫌われていたらどうしようかと思った…」
安心したように微笑むラグドール様。
何故に?
「これからも、一緒にいたい」
某アイドルが「エンダー」と歌い出した。
何だ?突然ラブが始まったのか???
すごく良い顔で見つめてくるラグドール様。
「ご自分の顔が良いのを利用しないでください」
「好きなんだろこの顔」
「破壊力」
※※※
バーミーズ嬢は、照れているのか?顔が赤くなっている。可愛い…
この顔で、アプローチすれば、落ちてくれるかもしれない。
良かった。男として意識されていた。
普段はどちらかといえば、崇拝されている感じだ。
ちゃんと、男として見られていた。嬉しい。
元王女との婚約が決まるまで、他の令嬢達に血走った目で追いかけられていた。その時の恐怖が残っていて、あまり令嬢達とは近付きたくなかった。
元王女には何だかんだと罵られて。
全く追い掛けて来ないバーミーズ嬢が、珍しいからなのか…?
私の窮地を救ってくれたからなのか?
それとも、バーミーズ嬢に褒められたいからなのか…?
彼女に惹かれている。
…他の男には渡したくない。
彼女の気を引く為には。
「猫モチーフのカフスやブローチを提案したい」
「天才ですか!?」
やはり、バーミーズ嬢を落とすなら、この手しかない。
目を輝かせる彼女を見ながら、作戦の成功に満足した。
猫モチーフのカフスとブローチが売れているらしい。
カフスは男性向けだったが、猫好きの令嬢や夫人達が、婚約者や夫にプレゼントしているらしい。
次は、猫刺繍入りのリボンとクラバットを提案した。
伯爵に、バーミーズ嬢との結婚について、こっそり相談したら、彼女が嫁に行くなら養子を取るから問題ない、と言われた。
準備があるから早く決めてね!と笑顔で言われた。
え…?私の気持ち…バレてる…?
爽やかな風が吹き抜ける伯爵家の別荘の庭で、バーミーズ嬢の目の前に跪いて言った。
「結婚してください」
「え!?…そんな…恐れ多い…」
バーミーズ嬢が慌てている。ダメかな?
「仕事は続けて良いから」
「!!…うぅ…」
あ、悩んでる悩んでる。
もう一押しかな…
「結婚してくれたら猫を飼おう」
「!!」
効果はバツグンだ。
「飼うならどんな猫が良いかな?」
「…悩みますね…」
お?良い感じ?
「結婚してくれるの?」
「!?」
混乱している可愛いバーミーズ嬢。
私は笑顔で返事を待った。
「か…考えさせて…ください…」
顔を真っ赤にして、それだけ言ったバーミーズ嬢。
可愛い。結婚したい。
私は、バーミーズ嬢を落とす為の、次の作戦を練った。
読んでいただきありがとうございます




