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親友の恋路を応援したいギャルのアシストが下手過ぎる  作者: 焼肉一番


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愛称

「ラ~コ! パン、買いに行こ♪」


 昼休みになるや、桜子の元へ瞬間移動して一緒に教室を出て行こうとする山之内リンネ。コイツ桜子の事ラコって呼ぶんだよな。可愛いな。俺もラコって呼びたい。良し決めた、そう呼ぼう。

 そう決心しながらその背中を見送っていたら、出て行く瞬間山之内がこちらを振り返り、一睨みされた。どうやら視線に気付かれていた様だ。こんな事もよくあるのでいちいち俺は不快に感じたりもしなかった。


「購買行くだろ?」


 俺の元へもお昼の誘いが来る。じゃんけんに負けて学級委員会と言う雑用係を押し付けられた絆で繋がっている畑大輔だ。中学の頃からサッカーをやっていて、今も続けている。そうスポーツに熱心な学校ではないので、それなりにではあるが本人は頑張っている様だ。大輔と言う名前が良く似合う、日に焼けた純朴そうなサッカー少年。


「行くか。どっち行く?」


 この高校の購買部は二ヶ所あり、一つはパンのみを扱っていて、もう一つは焼きそばや唐揚げなどの総菜が並ぶ。


「パン!」


 山之内がパンを買いに行くと言っていたなと思う。

 別に避けるでも追うでもないが、また目が合ったら睨まれるのだろうなと覚悟だけはする様になった。


「オッケ、行こう」


 パンの購買部へ向かう途中、俺は今日が水曜日である事を思い出して大輔にこう提案した。


「なぁ、今日ナポリタンパンある日じゃね? たぶんめっちゃ混んでるぞ。やっぱあっちにしないか?」


 ナポリタンパン。我が山吹高校の名物総菜パンだが何故か毎週水曜日にしか売ってくれない。その希少性がたいして美味しくもないのに人気を呼んでいるだけだと俺は睨んでいる。


「そうだった! 俺走るわ! お前の分も適当に買って来るからちょっとジュースだけ買っといてくんね! んじゃっ!!」


「えっ……あ、ジュース何が良いんだよ?!」


「フォンタのオレンジ!!」


 俺は違う購買部へ行こうと提案したのだが、嚙み合わないまま大輔が走り出してしまったのでとりあえずゆっくり自販機のある一階昇降口へ向かった。何故みんなそんなにあのパンを有難がるのやら……。それにフォンタはグレープだろ。


「!」


 自販機の前に、桐生桜子……ラコが居る。一人だ。

 動線的にだいたいみんな購買部で何か買ってから自販機へ来る奴が多いのでまだ空いている。購買部で紙パックの飲み物も安く買えるので案外いつも空いてはいるのだが、隣りに山之内が居ない事が奇跡だ。


「何買うの」


「えっ……? わっ! わぁぁぁっ!!」


 後ろから急に話し掛けられてラコは飛び上がって驚いた。こんな感じになるんじゃないかとは思っていた。落ち着いた見た目から一気に表情豊かになるのが堪らないと思う。これがギャップ萌えってやつだと、俺はラコのお陰で体感したのだ。


「あ、あ、ええと、フォンタのグレープ頼まれたんだけど、どどどっ! どうぞ! お先に!」


 ラコは可愛らしく両手で財布を握ったまま俺に自販機を譲った。どうやらさっきの俺たちと同じ様なやりとりが山之内との間にあったのだろう。


「良いよ、先に来てたんだから買っちゃいなよ」


「いや……」


 財布で半分顔を隠して上目遣いしてくる。可愛い。


「細かいお金なくって、買えなかっただけ……だから……」


 なるほど。ここは是非奢ってあげたいな。奢られるのに抵抗があるのだとしたらせめてお金を貸してあげたい。しかし、フォンタグレープは頼まれたって言ってた。山之内のジュースを奢るのは嫌だなぁ。


「ラコは何が飲みたいの?」


 言っちゃった! 急に愛称で呼んじゃった!

 俺キモいかな。でも良いよな、イケメンなら許されるよな? それに俺たち絶対両想いなんだから。だってほら……。


「え……え……え……!」


 うーん、ちょっと良く分からないな。喜んでるよね? だって分かりやすく目がハートだもんね? 顔真っ赤だしこれ喜びだよね?


「えーーーーーっ!!!」


 ラコの中の、何らかのキャパシティが溢れた様だ。まるで今が現実かどうかを確かめるかの様にその頭を自販機に叩き付けた。


 ゴツッッ……!


「なんでっ?!」


「いっ……痛い……!」


「当たり前だよ! やめなよ!」


 痛いと悶絶しつつ、もう一度その挙動に入ったのを見て俺はラコの両肩を押さえ付けて無理やりそれを止めさせた。


「さっ……さっさっ触っ……!!」


「ごめん! それもうやんないで?!」


 ラコは高速で首を上下に動かして肯定の意を表した。

 それを信用してそっと手を放すとラコは脱兎のごとくここから離脱してしまう。


「原因不明の頭痛がするから保健室へ行って来ます! お気遣いありがとうではまた!」


「あっ……」


 とても引き止められるスピードではなかった。

 せめて頭痛の原因は単純に外傷だと教えてあげたかったけどそれも無理だった。

 可愛いなぁと思う。絶対俺の事好きじゃんと思う。好き過ぎるじゃん。


「はぁ……」


 甘い溜息が出るぜ。

 まだもうちょっとこの甘さを感じていたいし、もし今俺が告白なんてしたらラコは死んでしまうんじゃないかな。だってジュース何が飲みたいかって聞いただけでこうだぞ。あ、いやどさくさに紛れて愛称で呼んじゃったんだった。

 どっちにしてももうちょっと時間を掛けて仲良くする必要がある。

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