表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
花と華  作者: 露(つゆ)
2/5

第2話 ~水切りと楽しさ~

「華枝!」

「花ちゃん」

 花の学校終わり、十五時頃に二人は昨日の駄菓子屋で待ち合わせをした。花は先に着いており、華枝に気が付くとぶんぶんと手を振った。

 華枝は駆け足で花の下へと行く。

「待たせちゃった……?」

「五分前。俺が早よ着きすぎただけや」

 花はこんな時でも優しい。華枝はそれが嬉しくて。

「今日の服も可愛いね」

 昨日の服とはまた違い、白い薄手のアウターで袖にハートマークの透かしが入っている。

「ふふん! 可愛ぇやろ!」

 花は自信満々で腰に手を当て言った。

「うん」

 華枝は本気でそう言った。

「華枝も三つ編み可愛ぇで」

 『可愛い』なんて言われて照れる。けど。

「いつもこれだから」

 華枝は眉を下げ、セミロングのお下げを両手で摘まんだ。惰性でやっているのだからあまり誇れやしない。

「それでも可愛ぇ。もっと自信持ってもえぇのに」

「そ、そうかな……」

「そう!」

 華枝は花の言葉に恥じらったが喜びがこみ上げた。花といるとなんだか前向きになれる。

「じゃあ、今日の遊ぶ場所に行こか!」

 花は華枝の手を取って歩き出す。華枝は少しドキドキした。

「(花ちゃんは女の子なのに……変だな……)」

 そう思いながら花の後について行く。


「ここは……」

「川!」

 着いた所は少し幅の広い川だった。

「あの……私、水着とか持ってきてない……。それに、子供だけで水遊びしちゃいけないよ?」

 華枝の言葉に花は笑う。

「華枝は真面目やなぁ! 水の中には入らん。河原見てみぃ。何がある?」

 華枝は河原を見渡す。

「うーん……石くらいしか……」

「そう! 石。今日は石で遊ぶ」

 花は嬉しそうに告げた。

「石?」

「水切りする」

「水切り?」

 それは初めて聞く言葉だった。

「よぉ見ててな」

 花はそう言うと河原を歩き回り、何かを探す。

「これがええかな」

 お目当ての物を見つけたようだ。

「華枝、水切りはこういう石を使うんや」

「平べったい?」

「そうや。いくで」

 花は川に向かって平行に石を投げた。すると石が水の上を跳ねて何回も飛んだ。

「わ! すごい!」

 華枝は目の前に光景に釘付けになった。

「どうやったの?」

「それはな……」

 華枝は水切りの説明を受ける。

「平べったいやつだね」

 華枝も河原を探す。

「これとか平べったい……?」

 華枝は花に石を見せる。

「ええと思う」

 花は親指を立てた。

 華枝は見よう見まねで石を川に投げた。

「えいっ!」

 ぽちゃ。

 石は一度も跳ねず、川の中に吸い込まれていった。

「……あれ?」

「華枝、こういうのは練習や。なんべんでもつきおうたる」

 花は華枝の肩に手を置いた。

「う、うん……」

 華枝はしょんぼりした。

 しかし、花は笑顔で言う。

「いきなりは誰かてできん。落ち込む事無いで」

「う、うん!」

 花の一言に華枝は気を持ち直した。花の言葉は……なんだか元気が出る。不思議だ。

 華枝の水切りの特訓が始まった。


「なるべく平べったい石探しから!」

「うん!」


「川の面と水平に投げる!」

「わかった!」


 華枝は何度も何度も石を探しては投げた。花も根気よく教えて、見本も見せてくれた。

 そして……。

 ちゃっ、ぽちゃ。

「でき……た……」

 たった一回。それだけ跳ねた。けれど、華枝にはとても嬉しい事だった。

「花ちゃん! やったよ!」

 華枝は花の方を見る。

「華枝が頑張ったからや」

 花はにっと笑う。

 誰かと遊ぶのがこんなに楽しいだなんて。華枝は感動していた。

「ちょっと休憩しよか。ずっとやりっぱなしやったから疲れたやろ」

 花の言う通り疲れた。でもそれは心地よい疲れで。

「うん、ありがとう」

 華枝達は満足げに大きな石に腰掛けた。

「楽しかったか?」

 花は聞く。

「とっても!」

「それは良かった」

 花は微笑んだ。その微笑みに華枝は少しドキリとした。

「華枝?」

 ぼーっとしている華枝の顔を花は覗き込む。

「あ、ううん! なんでもない!」

「そうか?」

 花は納得しているのかしていないのか、でもとりあえずその事は置いとかれた。代わりに違う事を聞いてきた。

「嫌やったら答えんでええけど……華枝って学校どうしてるん?」

「……」

 学校……学校なんて……。華枝はうつむく。

「……聞いていらん事やった?」

 花は心配そうに言う。

 そんな花に……花になら話しても良いかもしれないと思って、華枝は口を開く。

「私ね、いじめられてるの。こんな性格だから……うざいんだって……」

 言っているうちに泣きそうになってきた。すると、花は言う。

「アホやなぁ。華枝はこんなにええ子ぉやのに」

「優等生ぶって、って……」

「ああ、ちゃうちゃう」

「?」

 花は首を振る。

「真面目で、素直で、頑張り屋さん。こんなええ子ぉ、おらんで」

「花ちゃん……」

 自分の事をそんな風に言ってくれる人がいるなんて思わなかった。また……泣きそうになる。

「俺らの学校に来たらええのに。そしたらいじめる奴からも守ったれる」

「え?」

 花は笑いながら言う。

「友達いじめる奴は許さんからな」

「友達……」

 ややモヤモヤするのはなんでだろう。けど、嬉しい。

「……ありがとう。ちょっと……考えてみる」

「ああ!」

 花は満面の笑みだ。

「でも、学校行くの怖いなぁ……」

「じゃあ練習してみるか?」

「練習?」

 とはどういう事か。

「明日、放課後校庭でみんなと遊ぼや」

「……校庭で……みんなと……」

 正直、怖い。

「俺がフォローする」

 花は真剣な顔で華枝を見る。その表情を見て……。

「行ってみようかな……」

 少し勇気が出た。

「決まりやな!」

 花は嬉しそうな顔で言う。

「あ……でも他校生が入って良いのかな……?」

「その辺緩いし。大丈夫やろ。田舎やし」

 そんなものなのかと華枝は思う。

「なぁなぁ! せっかくみんなの前に行くならお洒落して行かん?」

「お洒落……?」

「俺の服貸したるから、双子コーデで行こ! 俺も三つ編みする!」

「え、え」

 華枝は花の突然の申し出に戸惑った。

「いらん……?」

 花の瞳に見つめられると……。

「い、良いよ……」

 花の顔は輝く。

「OKやな!」

「う、うん……」

「帰り、俺の家寄ってき。服貸したるから明日着てくるんやで!」

「う、うん……」

 華枝は花の勢いに押される。

「帰りは危ないから送ってくわ」

「え、それじゃ花ちゃんが……」

「おかんも挨拶したい言うとったからついてくわ」

「それなら……」

 大丈夫かと思った。

「じゃ、行こか!」

 花は華枝の手を引っ張る。ドキドキするのは……気のせいだろうか。


「おかん! 華枝連れてきた!」

「お、お邪魔します……」

 華枝は花の家を見回す。こう言っては失礼だが、格好に似合わず、古風な家だ。

「あら! あんたが華枝ちゃん?」

 花の母親らしき人物が出てきた。

「あ、はじめまして……」

 華枝は丁寧にお辞儀をする。

「えぇ子やねぇ」

 流石親子というところだろうか。花と同じ事を言う。

「あ、えと、ありがとう……ございます……」

 花のおかげで『良い子』と言われるのに抵抗が無くなった。

 花の母親はしゃがんで華枝と目線を合わせる。

「花なぁ、昨日から華枝ちゃんの事ばっかり言いよるんよ」

「え……」

「よっぽど華枝ちゃんとおるの楽しいんやろうなぁ」

 華枝はそう聞いて……嬉しくて顔が熱くなった。

「華枝! 上がり! 服決めよ!」

 花は花で嬉しそうだ。

「う、うん」


「これもえぇなぁ……これも……」

 花はタンスから服を引っ張り出し、目の前の華枝に合わせる。

「いっぱい可愛い服があるね」

 華枝がそう言うと花はにぱっと笑う。

「可愛ぇもん好きやから。華枝も可愛ぇんやから着てもらえんの楽しみにしとるで」

 可愛い……。そう言ってもらって……やっぱりドキドキする華枝だった。


 着る服を決めた後、花と花の母親に送ってもらって家に着く。

 祖母が出てくると、玄関で祖母と花の母親が話し込む。

 手持ち無沙汰の子供二人は隣で喋る。

「明日みんなに見せた時の反応楽しみやなぁ」

「緊張する……」

 そんな華枝に花は背中を軽く叩く。

「絶対似合う! 俺が保証する!」

「花ちゃん……」

 花の言葉は勇気が出る。

「うん!」


 大人組が話し終わると、花達は帰っていった。

「また明日」

 花はそう言って手を振った。だから華枝も小さく手を振る。

 花達が見えなくなると、祖母は華枝に言う。

「えぇお友達できたなぁ。今日も楽しかったか?」

 華枝は自信満々に言う。

「楽しかった!」

 それを聞いて祖母はにこにこと笑うのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ