せいこういたしました。
たぶん大丈夫。仄めかしの範囲。
結局、熱意に押し切られる形で成功してしまった。
なるべく雄輝くんと顔を合わせないように気を使いながら帰る支度をする。雄輝くんも心做しか?いや、いつもよりも完全に口数が少ない。
色々散らかしてしまったけど、プロの人が何とかしてくれるはず。
感想。想像してたより痛くなかった。
妄想終わり。
じゃあ、入社式はエイプリルフールなので、今月いっぱい張り切って遊びましょうか!
まず、 運転の練習。これ大事。教習所の先生も言ってた、人馬一体じゃないけれど、車も長く運転すれば私の思い通りに動いてくれるらしい。
一階へと階段を下り、仏壇に供えられてたキーをポッケに入れる。
「じゃあ、練習に行ってくるね」
父に声をかけると、
「おう。茯夕市は出るなよ!気を付けてな」
と、大声が返ってきた。
アッツくんの正面に立ち、合掌。
「神様、大日如来様、道真様 、家康様、ついでに弥勒様、八百万の神様。ご先祖様、その他この世に干渉できるすべての存在様、私を交通事故からお守りください」
おk。これで事故ったら全て私の不注意。
アッツくんに乗り込みエンジン始動。今からは、隣に先生はいない。
「歩行者、自転車超要注意。二輪車要注意。自動車はまぁ注意」
3節唱えて右のウィンカーを点け、レバーをDに入れた。
サイドミラーとバックミラーで後続車がいないことを確認し、アクセルをゆっくりと踏む。徐々に上がるスピードと共に私の心も興奮してきた。
近くの長い直線道路を3と3/5往復した頃、スマホから聞き慣れたイントロが流れ始めた。
縁石の途切れた部分にアッツくんを運び、
「暴走少女か……」
呟きながら画面をタップする。
「ただいま運転中です。誠に申し訳ございませんが、電話に出ることができません。御用のございます方は、放送禁止用語を打ち消す音の後に用件を録音してください。ふぁーーーーーーーーーーー」
「ぐみねぇ、自分では面白いと思ってやってるんだろうけど、全っ然オモシロクナイ。腹立つだけ」
「知っててやってる。で、何かあったの?」
「今、県立図書館にいるんだけど、電車代もったいないから迎えに来て。1時間くらいで来れるよね」
「電車代よりは高く付くよ。いいの?」
百は3秒ほど沈黙し、
「ギリギリ現役JCの笑顔と物々交換だねっ♪」
と言い残して通話は切れた。切られた。
……。
コレ、行かなかったら何故か私が怒られるやつですよね?
納得いかない。納得できない。納得したくない。
3回呟いたらスッキリしたので、右手の中指と人差指でレバーを落とし、サイドミラーを覗き込んだ。
図書館に着いて入り口を見遣ると、百がこちらに歩いてくるのが見えた。
車から降り、
「ちょっと待って!私も借りる本あるから!」
と叫ぶ。キーを預けて館内へと進んだ。
館内は人気も疎らで、検索用のPCには誰も座っていない。
『レインツリーの国』を検索し、小説コーナーに直行する。色々目移りはするけれど、目当ての本は直ぐに見つかり、手続きのためカウンターに並んだ。
すぐに前の人は帰り、司書さんに話しかけられた。
「もしかして、さっき妹さんかお姉さん来てらっしゃいました?」
「妹が来ていましたが、アイツ、また何かやらかしましたか?」
悪い予感が胸をよぎる。
「あ、いえ、もしかしたらボールペン妹さんのじゃないかな?と思って」
司書さんはリラックマのボールペンを差し出した。
「あ、アイツのです、多分。何で分かったんですか?ありがとうございます」
「いろいろ有名ですよ、茯夕の村越姉妹」
お姉さんは微笑んでいるので、悪い噂ではないのだろう。ないと思いたい。
「ありがとうございます」
ボールペンを受け取り、貸し出しの手続きを済ませた。
車に戻ってみると、百は暇そうにスマホを触っていた。
「どっか寄る所ある?」
乗り込みながら声を掛ける。
「雄輝くんち」
おい!
「おい!」
……。
「ゆ・う・き・く・ん・ち・!」
「誰から聞いた?どこまで知っている?」
「近所中の噂になってるよ。どっかのお宿に入ってくの見られてたんだね♪」
(見た奴殺す。草の根掻き分けてでも殺す。)
見られてしまったものは仕方ない。気を取り直してレバーをRに入れ、後ろを確認しながらハンドルを回し、アクセルをそっと踏み込んだ時、僅かな衝撃が走った。
カンッ。
小さな音に続いて、
ガンッ。ガリガリッ。
少し大きな音が響く。
(あっ!)
「なんか当たったー」
(あちゃー。)
当たってしまったものは仕方ない。気を取り直してドアを開け、後方を確認すると、新聞配達の原付が倒れていた。幸い辺りに人はいない。人身事故の可能性は低そうだ。
「あー。お姉チャンやっちゃったねー」
後ろから暢気そうな声が掛かる。
「ごめんなさい。後ろをちゃんと確認してなくって……」
周りには、派手に土佐日報夕刊が散らばっていた。
(あ、土佐って言っちゃった!ま、いっか。)
「まず警察呼ぶね。救急車、要る?」
「大丈夫です。……っと、妹にも一応確認してみますね」
「はいはい。この傷つき方だと、中は大した衝撃無かったでしょ」
何事も無かったかのように助手席でスマホに熱中する百に軽く苛つきながら、窓を軽くノックする。
「救急車、要るー?」
叫ぶと、中から
「見たらわかるでしょー!」
叫び声が返ってきた。
「すみません、失礼な妹で。警察だけ連絡お願いします。あと、事故初めてなので、この後の流れを教えて頂けませんか?」
「はいはーい。今回はケガ人居ないので救護措置と救急車要請をすっ飛ばしまーす」
「はい」
「警察呼びます。お互いの身元確認しまーす。警察が実況見分します。お姉チャンが俺に謝りまーす。終わり。多分二時間くらいかな?」
「は?」
「え?」
「なんでそれだけで二時間もかかるんですか?」
「今回ケガ人居ないからすごく早い方だよ?」
「ホントですか……」
雄輝くんにキャンセルの電話しなきゃ。
私は二度と交通事故を起こさない事を自分に誓った。
読んでいただいてありがとうございます。
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