凱旋
商業都市イムネマにもどった俺たちはまず冒険者ギルドに赴いた。
カウンターのお姉さんに確認すると、たしかに俺たちのパーティはストルフのダンジョンをクリアしたことになっていた。
ケイウッドが受けていた初心者向けクエスト達成の報酬を受け取り、俺たちはよろこびの声をあげた。
これだけあれば各人で等分してもある程度はゆったり生活できる。
さよなら、貧乏生活。
俺たちはさっそくギルド内にある酒場で食事をすることにした。
夜とあって酒場は酔っ払い冒険者たちでにぎわっていた。
ネムリだけ果実ジュースで、あとの3人はエールの杯を打ち鳴らして乾杯した。
「くうー、うめえ!」
「美味じゃ! これぞわしの生きがい!」
「おー、話がわかるねえベルナンディアちゃん」
「当たり前じゃ。わしの夢は世界中の酒を味わい尽くすことじゃからの」
「いい夢だねえ。オレの夢は世界中にオレ様の名前をとどろかすことさ。どこの国の誰だろうと知らぬ者のないくらいにな」
「かっかっかっ、男じゃのう。その野心は見上げたものじゃ」
ケイウッドもベルナンディアも酒が入るといっきに饒舌になった。
死と隣り合わせの冒険から帰ってきたのだから、それもうなずける。
命をかけて稼いだ金で生のよろこびを貪る。
これほど甘美な悦楽はないだろう。
運ばれてくる料理もじつにうまい。
マレトチキンの唐揚げにラム肉のソテー、大盛りのイムネマサラダにラザト豆のスープ。
どれも疲れた体を癒してくれる最高の回復薬だった。
俺はネムリもちゃんと料理に口をつけていることを確認する。
まだ、あまり多く言葉を発しないが、俺の横で黙々と料理を頬張っている。
腹が満たされれば気持ちも満たされるものだ。
空腹と孤独は人の気持ちをすり減らす悪しきものだと友人が言っていたっけ。
たくさん食べてぐっすり寝ればネムリの口も少しは軽くなるだろう。
俺はエールをノドに流し込み、泡の弾けるさわやかなのど越しに舌鼓を打った。