少女騎士ベルナンディア
あっという間にゴブリンを片付けた少女は、物足りないとでもいうようなため息をついた。
そして、完全に魅入っていた俺たちのほうへ近づいてくる。
「怪我はないかの……って、そっちのヌシは負傷しているようじゃの」
ハッと思い出して見やるとケイウッドの肩は先ほどよりも青黒く腫れていた。
「ケイウッド、無事か?」
ひとまず危機を脱したことに安堵し、俺は盗賊の肩の具合を確かめた。
レザーアーマーの守りがあったおかげだろう。
これなら打撲程度で済みそうだ。
「ふむ……その怪我だと打撲というところかの」
両手斧の少女も俺と同じ診断を下した。
「窮地を救ってくれてありがとう。助かったよ」
「礼には及ばぬ。困っている者がいたら助けるのが世の情けというものじゃろう?」
先ほどから気になっていたが、しゃべり方が年寄りじみているだけでなく、その会話の中身もまったく外見と釣り合わない。
見た目は俺やケイウッドの半分ほどの背丈に体型も少女のそれ。
髪色がケイウッドよりも濃い茶色、というより赤毛と呼んだほうがいいか。
しゃべり方のせいもあるのか、どことなく気品を漂わせているのが特徴的だった。
とりあえず助けてもらった礼として名乗るくらいのことはすべきだな。
「俺はシュウジ。クラスはアイテムマスター……をめざしている」
自分でマスターを名乗るのはなんだか気恥しかった。
この世界では決められたクラスにつくのではなく、そのクラスを名乗るものだとギルドで教わったせいだ。
自称でマスターはちょっと、はずい。
「そして、こっちはケイウッド。盗賊だ」
「どーも、可憐なお嬢さん」
肩の痛みを痩せ我慢しつつもナンパなセリフは欠かさない。
お前のそういうところは感心するよ、まったく。
「わしはベルナンディア。騎士をしておる。見た目では分からぬかもしれんが、これでも由緒正しいドワーフ族の末裔じゃ」
少女、ベルナンディアは礼儀正しくお辞儀をした。
なるほど、ドワーフ族なら少女の見た目で自分の体以上の大きさがある両手斧を扱うのも合点がいく。
「よろしくな、ベルナンディア」
俺は頼もしい少女騎士、ベルナンディアと握手を交わした。